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688話 ブラッディクラッケン

 副団長は剣先を砂浜に突き刺し杖代わりに体を支え、ヤーべと団員達が全員無事であることを確認してほっと息をつく。


「まさかブラッディクラッケンに助けられるとはな」


 ブラッディクラッケンは海洋生物だ。

 上陸することはできないので戦うことはないだろう。

 副団長は改めて辺りを見回す。

 至る所にサーギンの死体が転がっていた。

 正確な数はわからない。

 自分達のやったことであるが改めて驚く。


「よく生き残ったな」


 彼らが生存できたのはサラとアリスの回復魔法があったからだ。

 それがなければ全滅も十分ありえた。


「……リサヴィ、本当に恐ろしいパーティだぜ。なんで俺達はこんなバケモンパーティにケンカなんか売ったんだ」


 そう呟きながらその目が一番の化け物、リオに向けられる。

 リオの力は凄まじく、三割以上を一人で倒していた。

 敵意を一身に受けそれ以上の数を相手にしていたので実際の活躍はそれ以上だ。

 そのリオだが、疲れた様子を全く見せず出現したブラッディクラッケンをじっと見つめていた。

 その姿を見て副団長が呟く。


「あいつの体力は底なしかよ」 


 サラはリオの様子が気になり声をかけた。


「リオ、どうかしたのですか?」

「……」

「リオ?」

「ああ、ちょっと近くで見てくる」

「え?近くで?リオ?あなた一体……」


 リオはサラの問いに答えず、海に向かって歩き出す。


「ヴィヴィ手伝え」

「ぐふ?」


 ヴィヴィはリオが何を求めているのかすぐには理解できなかった。

 まさかと思いながらもリムーバルバインダー二つを飛ばしてリオの後を追わせる。

 リオが並走するリムーバルバインダーの上に飛び乗った。


「近づけるところまで行け」

「ぐふ」

「え!?ちょっと本気ですかリオ!」



 ヴィヴィがリムーバルバインダーを移動限界まで飛ばしたがブラッディクラッケンとの距離はまだ離れていた。

 ブラッディクラッケンは逃げるサーギンを捕食しながらもリオの接近に気づいていた。

 逃げるサーギンの一体を九本ある足の一本で掴み、いや、その先端にある口で咥えるとリオに向かって投げつけた。

 それをヴィヴィがリムーバルバインダーを操り回避する。

 リオがぼそりと呟いた。


「……なるほど、やる気か。なら相手してやる」

『ぐふ!?』


 リオの呟きを聞いたヴィヴィが驚く。

 まさかブラッディクラッケンに戦いを挑むとは思ってもみなかったのだ。

 そんなヴィヴィを気にすることなくリオはもう一つのリムーバルバインダーをそばに寄越すようにヴィヴィに命令する。

 リオはそばにやってきたリムーバルバインダーに手を伸ばすと扉を開けて弓矢を取り出した。

 もとは魔法が付加されていないただの弓矢だったがリムーバルバインダーの魔法強化機能により魔力が付加されていた。

 リオは矢筒を肩にかけ、弓を構えるとリムーバルバインダー上からブラッディクラッケンに向かって矢を放った。

 ブラッディクラッケンの巨体に狙い違わず命中して爆発し、体の一部が四散する。

 この矢には魔族にすらダメージを与える威力があったが、流石に二十メートルを超える巨体が一矢で倒れることはなかった。

 百年以上生きている魔物だけのことはあると言うべきか。

 ブラッディクラッケンが怒りの咆哮を上げてリオに襲いかかって来た。



 ブラッディクラッケンの九本の足が次々とリオを襲う。

 リオは二つのリムーバルバインダーを足場とし、空中を移動してブラッディクラッケンの攻撃を回避しながら矢を放つ。

 不安定な体勢にも拘らず全て命中し足を破壊していく。

 ブラッディクラッケンは三本目の足を矢で破壊されると海に潜った。

 逃げたかに思われたが、突然海中から足が出現してリオが乗るリムーバルバインダーを襲った。

 ブラッディクラッケンが長く生きていたのは伊達ではなかった。

 その知能は高く、戦いの中でリムーバルバインダーが陸から一定以上離れられないことに気づいたのだ。

 リオがその攻撃を回避するためにはリムーバルバインダーが移動できない更に先の沖側へ飛ぶしかなかった。


「ぐふ!?」


 リオがリムーバルバインダーが届かない方へ飛んだのでヴィヴィは焦った。

 リオはそのまま海に落下するかに思えたがその場で、空中に留まった。

 目視ではそう見えた。


「な、なんで浮いてるんだあいつ!?」

「盾の上に乗ってないよね!?」


 戦いを見守っていた傭兵達が驚きの声を上げる。

 サラは一つだけ思い当たることがあった。


「ヴィヴィ!まさかリムーバルダガーですか!?」

「ぐふ、そうだ。リオはリムーバルダガーを足場にしている」

「あのダガーってっ体重を支えることも出来たんですねっ」


 ヴィヴィの言葉を聞いてサラとアリスはリオが取り敢えずは海に落ちることはないとわかり安堵した。


「おいおいなんだよ!そのリムーバルダガーってのは!?」


 リオの戦いに目が離せず、副団長の問いに答える者はいなかった。

 とは言っても遠く離れすぎて目視ではリオが何をやっているのかほとんどわからず、リムーバルバインダーの目で状況を把握しているヴィヴィの解説を待つしかないのだが。


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