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685話 援軍現る!……あれ?

 サーギンの襲撃が止まった。

 だが、戦いが終わったわけではない。

 今も浅瀬に集結しているのだ。

 どうやら一定数揃えてから再襲撃するようであった。

 それはリサヴィや傭兵団にとっても都合が良かった。

 その間、休憩を取ることが出来るし、必ずしもサーギンを全滅させる必要はない。

 住人達が避難するまでの時間を稼ぐだけでも良いのだ。

 サーギン達は仲間の敵討ちを第一に考えているようでリオ達の近くからしか上陸する気がないようだった。

 これも都合がよかった。

 他の場所から上陸されたら戦力を分散しなくてはならず、街への襲撃を許したかもしれないし、犠牲者が出ていたかもしれない。



 副団長が武器の確認と共に皆の状態を確認する。

 副団長が見る限り、リサヴィはまだ余裕があるようだった。

 前線でフルで戦っているのにだ。

 意外だったのはアリスだ。

 彼はアリスは回復専門だと思っていた。

 しかし、実際には攻撃魔法だけでなく手にしたメイスで接近戦も余裕でこなしていた。


(ありゃ、下手な戦士より強いぞ。ヴィヴィも接近戦できるし、一体このパーティはどうなってんだ?)


 もう一つ意外だったのはヤーべだ。

 ヤーべは当初緊張から動きが鈍かったが二人のお姉様?のフォローもあり、徐々に動きがよくなっていき、今では余裕を持ってサーギンと渡り合えている。

 少なくとも一対一なら負ける心配はなさそうだ。

 自称Cランクに匹敵する、というのは嘘ではないようだった。

 そのヤーべの腕を突然、女傭兵の一人が掴んでぐっと引っ張った。


「お姉様何を……!!」


 次の瞬間、ヤーべの足元に転がっていた、死んだと思われたサーギンが手にした槍を突き出した。

 その槍が空を切る。

 もし、女傭兵が引っ張らなければヤーべはその槍の餌食となっていたことであろう。

 すかさずもう一人の女傭兵がそのサーギンの息の根を止める。


「油断し過ぎよ」

「集団戦闘のときにはね、ああやって死に損ないの攻撃を受けることがあるのよ。油断せず確実に死んでるか確認しな」

「はい!お姉様方!」


 可愛い妹?から尊敬の眼差しを受けて満更でもない顔をするお姉様達?


「これはクズ退治でも同じことが言えますねっ!」

「もちろんよ。人間の方が悪知恵が働くからね!」

「ぴんぴんしてんのに死んだ真似して攻撃仕掛けて来る奴だっているわ」


 女傭兵達がこれまで戦場で経験したことをヤーべに話して聞かせる。

 彼らの会話を聞いていた副団長が呆れた顔をヤーべに向けて言った。


「お嬢ちゃん、今の戦いですっきりしただろ?満足しただろ?」


 ヤーべはとんでもない、とでも言うように首を横に振る。

 

「クズは別腹です!」

「……困ったお嬢ちゃんだな」


 副団長がため息をついた。



 サーギンの三回目の襲撃が始まっていた。

 突然、後方から叫び声が聞こえた。


「援軍か!?」


 住人達の避難誘導が終わった兵士達が応援に駆けつけたのかと思ったがそうではなかった。

 現れたのは港街に巣食うクズ達であった。

 リサヴィにちょっかいをかけてきたあのクズ集団であった。

 クズ達はリサヴィの戦いの状況を見て不利だと判断したらすぐ逃げるつもりだったが、戦いを有利に進めているとわかりその場に留まることにしたのだ。

 彼らは安全圏から何やら喚めいているが、距離が離れ過ぎてリオ達のところまで届かない。

 近づけば彼らがリオ達に指示していることがわかるだろう。

 しかし、どれも的外れなものばかりであり、実際に聞こえていたら邪魔にしかならなかっただろう。

 それでも戦いが終われば彼らは自分達の指示のおかげで勝ったと主張しサーギンの素材を奪う気満々であった。



 三回目の襲撃を退けた後、サラが呆れた顔で喚きまくるクズ達を見ていると副団長の指示を無視してヤーべがサラのもとにやって来た。


「ヤーべ、あなた……」

「クズを抹殺しに行きましょう!」


 そう言ったヤーべの顔には言葉の勢いとは裏腹に疲れが見えていた。


「バカなことを言ってないで今うちに少しでも休みなさい」

「サラこそ何を言ってるんですか!クズがあそこにいるんですよっ!私達の敵が!!」

「そんなものは後回しです」


 サラは思わず失言してしまった。

 それをヤーべは見逃さない。


「わかりました!後回しですね!後で抹殺するんですね!」

「あ、いえ、そういう意味では……」

「ぐふ、次が来るぞ」


 サーギンの四回目の襲撃が始まった。



 流石にリサヴィと傭兵団だけでサーギン全てを倒すのは無理があった。

 これまでがうまく行き過ぎたのだ。

 サーギン五体がリサヴィと傭兵団の包囲網を突破した。

 そのサーギン達は全体行動が苦手なのか回り込んでリサヴィや傭兵団を攻撃せず、そのまま真っ直ぐ街へと向かっていく。

 その先には腕を組んで仁王立ちしたクズ達がいた。


「あのクズ達でも役に立つか」


 副団長はそう思った。

 思ってしまった。

 副団長はクズ達のクズっぷりを過小評価していた。



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