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682話 乙女達?の悩み

 副団長と男傭兵が抱き合っていた時、女傭兵の一人がサラに思い悩む様子を見せながら近づいてきた。


「ねえサラ」

「どうしました?」

「私さあ、リオに殴られて顔の形が変わった気がするのよ」

「え?」

「実は私もなのよ」


 もう一人の女傭兵もサラに近付いて来てそう言った。


「そうですか。ちなみにどの辺りがですか?」


 サラの問いに二人がにっこりと笑う。

 サラはその笑みに違和感を覚えた。

 彼女達が自分の顔を指差す。


「私さ、もうちょっと目をパッチリとさせたいのよ」

「は?パッチリ、させたい?」

「私はね、このそばかすを消したいのよね」

「え?消したい?」


 サラは彼女達が何を言ってるのかと首を傾げるが彼女達は気にない。


「確かにそばかすは化粧で消せるけどさ。一々化粧で消すの面倒じゃない?」

「あの、あなた達は何を言ってるんですか?それ、リオがつけた怪我とは違……」


 二人の女傭兵はサラの言葉を遮り言いたいことを言う。


「私は目をもっとハッキリさせたいの」

「私はそばかすを消したいわ」


 サラは頭を押さえる。


「……つまり、元の顔が気に入らないから変えたいと言っているのですか?」

「そういう風に聞こえるならそうかもしれないわね」

「そうね」

「そうとしか聞こえません」

「まあ、そんな細かい事いいじゃない。女同士なんだからわかるでしょ?」

「そう言われてもそんな魔法はありません」


 サラの言葉に女傭兵達はキレた。


「ちょっと自分が美人に生まれたからっていい気になってんじゃないわよ!」

「そうよ!私だってこのそばかすが消えればもっとモテるんだから!」


 彼女達がヤーべ連れ戻しの依頼をOKした真の理由、それはサラに顔を整形してもらうためであった!


「……だめだこりゃ」

「『だめだこりゃ』じゃないわよ!」



 女傭兵の一人がわざとらしく「はあ」とため息をついてサラを挑発する。


「やっぱり治療魔法はアリスの方が上っていう噂は本当のようね」

「あなたが無理っていうならアリスに頼むしかないわね」

「どうぞご勝手に」


 女傭兵達はアリスのところへ向かったが結果は同じであった。



 副団長は当分リサヴィと行動を共にすることになりそうなのでサラにこの後の予定を尋ねる。

 サラは少し困った顔で答えた。

 

「海を見た後はまだ決まっていません。フェランには戻ると思いますが」

「そうか」


 サラがリオに顔を向ける。

 

「リオ、まずは今日泊まる宿を探しましょう。海を見るのは明日にしませんか」

「わかった」


 リオは特に不満はないようであっさりと頷いた。

 


 かつて賑わっていた頃は至る所に宿屋があったが、今はその多くが空き家となっていた。

 数少ないやっている宿屋を見つけて中に入ると「げっ!?」と言う声が聞こえた。

 サラ達は見覚えがないが、先ほど絡んできたクズ達だったらしく、表情を真っ青に変えて宿屋から逃げて行った。

 

「後を追いましょう!クズ達のアジトに向かうはずです!一掃のチャンスです!」


 相変わらず血の気の多いヤーべが後を追おうとするのを副団長が止めた。

 

「落ち着けってお嬢ちゃん」

「何故止めるんです!?」

「そりゃ止めるだろう」


 サラはヤーべを説得する副団長の姿を見て、彼女を傭兵団に押し付けることが出来てよかったとしみじみ思った。

 


 副団長は男と女で分けるために二部屋借りた。

 普段はそこまで気にしないが今回はお嬢様のヤーべがいるので男と一緒の部屋は嫌がると思ったからだ。

 それを見越して副団長は今回の依頼に女傭兵(ノーマル趣味)を護衛を兼ねて選んだのだ。

 副団長が女傭兵達を呼ぶとヤーべに家に帰るよう説得するよう指示する。

 女傭兵達は自信あり気に頷いた。

 

「安心しなって副団長。世間知らずのお嬢様の説得なんて楽勝よ!」

「ええ。婚約者が死んだらしいけどさ、男なんて腐るほどいるんだから馬鹿なこと考えて時間を無駄にするより新しい恋を探しなってね」


 彼女達の言葉は本気であったがそれは依頼だからでもヤーべに同情して慰めたいと思ったわけでもなかった。

 当初の目的(顔の整形)が達成できなかったのでさっさとこんな依頼は終わらせたいだけだった。

 そんな事とは知らない副団長は彼女達を頼もしく思い、この依頼のメンバーに選んだのは間違いではなかったと思った。


「任せたぞ。だがな、あまりおかしな事は吹き込むなよ。後で文句言われるのは俺なんだからな」


 女傭兵二人は「あはは」と笑いながら頷いた。



 で、次の日。

 部屋から出て来た三人はまるで昔からの親友かのように意気投合していた。


「やっぱクズは全員抹殺するしかないわね」

「ええ。百害あって一利なしよ」

「その通りですお姉様方」

「私達があんたを鍛えてあげるからしっかりついて来なよ!」

「リオは確かに強いけど男だからね。女の戦い方ってのはやはり同じ女じゃないとわからないこともあるからね」

「頼もしいですお姉様方!」


 その様子を見て副団長の願いとは逆の結果になったのだと悟る。


「そうじゃねえだろ……」


 副団長は胃が痛くなり腹を押さえた。



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