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68話 見張り番を邪魔する者

 キャンプ中の深夜の見張りは三組交代で行うことになっていた。

 順番は最初がリサヴィの三人、次がベルフィとナック。そして最後がカリスとローズの組み合せだ。

 この組み合わせにカリスが異議を唱えた。

 その理由をベルフィに聞かれると、

 

「サラが一緒に見張りをしたいと……」

「言ってません」


 とサラに話が終わる前に即否定され、それ以上の理由がなかったので却下された。



 リサヴィが見張りの時間帯に何故かカリスもいた。


「カリス、ちゃんと休まないと体が持ちませんよ」


 サラの言葉を直訳すると「邪魔だ、どっか行け」である。

 しかし、カリスには伝わらない。


「はははっ。心配すんなって。二、三日寝なくってもどうって事ないぜっ」


 カリスがサラにキメ顔をするが、サラは無視。


(誰があなたの心配なんかするのよっ。邪魔だって言ってるのに気づいてよ!まったく!)


 カリスはサラが見張り番であるにも拘らずにしきりに話しかけて邪魔をする。

 そのほとんどが彼の自慢話である。

 毎日のように自慢話をすれば流石に話も尽きる。

 だが、カリスはそれに気づかないのか、何度も同じ話をするので自慢話に終わりがやって来る事はなかった。

 聞きたくもない話を何度も聞かされてサラは参っていた。

 それだけでなく、サラに触れるか触れないかの距離に近づいてくるのである。

 サラは我慢の限界にきた。


「カリス」

「おうっ」

 

 仏頂面のサラとは対照的にカリスが満面の笑みをサラに向けた。

 

「うるさいです」

「なっ……」

「見張りに集中できません。起きているのはあなたの勝手ですが、もっと離れて黙っててください」


 カリスは最初驚きの表情をしていたが、やれやれ、という表情に変わった。


「おいおい、そばにいてくれるだけで満足ってか」


 何故かサラを自分の恋人か何かに勘違いしている節のあるカリス。

 サラが怒りを必死に我慢していると、

 

「ぐふっ」


 とヴィヴィのどこかバカにしたような含みをもった呟きが聞こえた。


(我慢よサラ。ここで大声出したらみんな起きてしまう。特にローズになんて言われるか)



 結局、カリスはサラ達がベルフィ達と交代するまで一緒にいた。

 交代のためリオに起こされたベルフィとナックはカリスの姿を見て呆れる。

 それを口に出したのはナックだ。


「おいおいカリス、お前もしかして休んでないのか?」

「このくらい平気だ。なっ」

 

 カリスは自信満々に答え、そのままサラにキメ顔を向ける。

 サラは彼の動きを読んでおり、周囲を警戒する仕草をして気づかない振りをする。

 そしてベルフィとナックに目を向けて声をかける。


「では私達も休ませてもらいます」

「ああ」

「ゆっくり休めよ」

「ありがとうございます」


 サラ達の後を当然のようにカリスがついて来た。

 

「カリス、あなたは向こうですよ」

「気にするな。寒かったらお前の毛布に入れて……」

「ベルフィ」


 サラはカリスのバカな発言を最後まで言わせずベルフィに助けを求めることにした。


「おい、サラっ!困った事があるなら俺に頼れ。な?」


 サラはカリスの言葉を無視し、こちらを向いたベルフィに言った。


「カリスが私“達”が休もうとするの“も”邪魔します」

「ちょ、ちょ待てよ!」


 ベルフィはサラが不機嫌であることをすぐ理解した。

 もちろんナックもだ。

 それに気づかないのはカリスだけだった。


「カリス、サラ達の邪魔をするな。自分の寝所へ戻れ」

「邪魔なんかしてねえだろ。なあサラ?」


 カリスのキメ顔をサラは冷めた目で見返し、


「邪魔です」


 とハッキリ拒絶した。

 

「な……」


 そこへ意地が悪い事には定評のあるヴィヴィもカリスを追撃する。


「ぐふ。見張りの間も一人ベラベラ自慢話をしてうるさかった」

「なっ、てめっ棺桶持ち!」

「カリス、自分の寝所で休め。命令だ」

「明日はいよいよマドマーシュの遺跡だぞ。もうちょっと緊張感持てよ」


 カリスに続きナックも説得する。


「……わかった」


 カリスは嫌々だと誰が見てもわかるような表情で頷いた。

 だが、それで終わらない。

 カリスがリオを睨む。


「リオ、お前はサラから離れて寝ろ」

「ん?」


 リオが首を傾げる。

 カリスに答えたのはヴィヴィだった。

 

「ぐふ。心配するな。リオは私が守る」

「そうなんだ」

「ちょっと待ちなさいヴィヴィ。今のはどういう意味……」


 そこへローズの怒鳴り声が割って入った。

 

「いい加減にしなっ!あんたら!うるさくて寝れないだろっ!」

「おうっ、もっと言ってやれローズ」


 カリスが自分は無関係とばかりにローズを応援するが、


「一番うるさいのはあんただよカリスっ!女の尻追っかけ回して恥ずかしい奴だねっ!」

「な……、そ、そんな事してねえだろっ!」

「自覚ないって最低だねっ!」



 こうしてキャンプ中、皆がカリスに振り回されたのだった。


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