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679話 港街のクズ

 リオ達はフェランの街を出発し、途中で昼食休憩を挟み夕方に港街に到着した。

 街の門番は冒険者の姿をしたリオ達を見てまたクズが来たとでも思ったのか警戒した態度をとったものの、冒険者カードの提示でリサヴィだと知り、安堵の表情を見せた。


「この街も頼む」


 門番に意味不明な言葉をかけられてリオ達は街の中に入った。

 その言葉の意味をヤーべは正しく理解しており満面の笑みで言った。


「やはりこの街にはクズがたくさんいるみたいですね。一掃しがいがありますね!」


 相変わらず好戦的なヤーべにサラはため息をついて言った。


「そんなことはしません」

「そんなことを言っても無駄ですよ。私知っているのです」


 得意げな顔をするヤーべにアリスが尋ねる。


「何をですっ?」

「サラとアリスがクズを呼び寄せるというクズコレクター能力の持ち主であることをです!」

「そんな能力ありません」

「わたしはっ持ってませんよっ。サラさんはともかくっわたしはっ」

「おいこらっ」


 サラはヤーべにそんな能力はないと説明するが信じさせることは出来なかった。

 何故ならそのクズ達がすぐ現れたからだ。



 クズ臭を撒き散らす集団がリサヴィの前に現れた。

 ざっと数えただけでも三十人はいるだろう。

 彼らは立ち止まると腕を組んで仁王立ちする。

 そしてそのクズの集団をまとめるクズリーダーが更に偉そうな態度で前に出た。


「お前ら今来たところだよな。いや、嘘をついても無駄だ。見張りが見てたんだからな」

「それが何か?」


「流石です」と呟くヤーべを無視して不機嫌そうに答えるサラ。


「おいおい態度には気をつけろよ。この街はな、俺らが守ってやってんだ。あの役に立たねえ兵士達の代わりにな」


 クズリーダーの言葉に他のクズ達が「がはは」と笑う。

 が、中にはハッとした表情になり顔を青くする者達が何人かいた。

 その者達は相手にしているのがリサヴィだと気づいたのだろう。

 サラは再び同じ問いかけをする。


「それが何か?」

「……おめえ、頭が足りないようだな」

「……」

「まあいい。この街を守っている俺らに感謝して金を払え」


 そう言った後、女性陣をいやらしい目で舐め回しながら言った。


「あと、女どもには更に追加料金をもらうか。その体でな」


 クズ達から卑下した笑いが起こる。

 ただし、先ほどから顔を青くした者達は除く。

 サラが何か言おうとするがそれより先にリオが口を開いた。


「邪魔ださっさと退けクズ」

「なんだとてめえ!」

「リオ!ここは……」


 サラの話に割り込んでヤーべが叫んだ。


「“私達”リサヴィにケンカを売るとは良い度胸ですねクズ!たった今、ここがあなた達の墓場と決まりました!」

「ちょっとヤーべ、何を……」

「リサヴィだと!?」


 クズリーダーは改めてメンバーを見回す。

 不幸なことにこのクズリーダーはリサヴィに会ったことがなかった。

 確かにリサヴィを構成するクラスの者は揃っているが話に聞いたより人数が多いため、リサヴィの偽物と判断してしまった。


「がははは!何がリサヴィだ!お前らニセモンだろうが!なあ!」


 そう言ってクズリーダーが笑みを浮かべながら振り返るとクズ達は先ほどの位置より後退していた。


「てめえら何やってやがる!?誰が下がっていいと言った!?あん!?」


 先ほどから顔を青くしていたクズの一人が怯えた表情で言った。


「リーダー!そいつらはホンモンだ!俺は見たことがあるんだ!確かに間違いなくホンモンのリサヴィだ!」

「な、なんだと……」


 リオは彼らのやり取りを全く聞いておらず催促する。


「さっさと退けクズ。これが最後の忠告だ。俺の邪魔するなら消す」


 リオが不機嫌そうに言った。


「てめえ!誰がクズだ!?誰……」


 クズリーダーがリオを睨みつけるとその様子を見たクズの一人が慌てて叫ぶ。


「リーダー!そいつが“冷笑する狂気”だ!そいつに逆らった奴はみんな消されてる!」

「!!」


 そう言われてクズリーダーは改めて不機嫌そうな顔をしているリオを見た。

 これまでクズリーダーが見てきた強者が纏うオーラ的なものをリオからは全く感じなかった。

 そのため、リオの噂の数々は鉄拳制裁サラの手助けがあってのことだと結論づけた。


「なら俺がちょっとその腕を試してやるぜ」

「……」


 そう言ってクズリーダーが剣を抜いた。

 クズリーダーは偉そうな態度を保ったままリオ達だけにわかるように目をパチパチして合図する。

 ちなみに今の目配せの意味は次の通りである。


「お前の武勇がサラのお陰だってのはわかってんだ。ここでお前と戦って勝っちまうのは簡単だがよ、それでショタコンのサラが怒り狂っても面倒臭え……ってかお前、ショタって呼ばれる年か?まあ、それはいい。というわけだからよ、ニ、三回打ち合ってよ、『なかなかやるな』って感じでお互いを認め合って剣を収めるってことにしないか。よしっ、決まったな!」


 である。

 これが同じクズ相手なら通じたかもしれない。

 従うかどうかは別問題だが。

 しかし、リオに至っては従う従わない以前にその合図が通じなかった。

 だが、このクズリーダーは自分の意図がリオに伝わったと思った。

 何故か確信していた。

 リオが全く剣を抜く素振りを見せないのにである。

 その態度を見てクズリーダーの頭の中で妄想が広がる。


(こいつ、俺に恐れをなして剣を抜くのを忘れてんのか?なら作戦変更だ!)


 クズリーダーはリオを倒し、自分こそがサラの勇者に相応しいとアピールすることにした。


「おい、ショタコンのサラが怒るんじゃないのか?」


 と突っ込む者は当然いない。

 クズリーダーが雄叫びを上げてリオに迫る。

 そして剣を振った瞬間、意識が飛んだ。

 リオはクズリーダーが剣を振り下ろす前にその顎を蹴り飛ばしたのだ。

 クズリーダーの体が宙を舞う。

 あほ面晒して気絶した体がくるくるくる、とゆっくり回転しながらクズ達の頭上を通り過ぎた。

 地面に落下するとごろごろ転がり大の字で止まった。



 リオが「次は誰だ」とでも言うかのようにクズ達を見回す。


「ひ、ひいいいい!!!殺られるっー!!」


 クズの一人がそう叫ぶと共に逃げ出すとそれに残りのクズ達も倣い一目散に逃げ出した。

 その場には大の字で伸びたクズリーダーだけが残された。


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