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670話 テスト再開

 責任者が改めてサラに相談する。


「話を戻しますね。マナサプライヤーについてはもう一度クレッジ博士に確認しますがテストはこのまま続けさせてください」

「ですが……」

「もちろん、危険があるかもしれない以上、ヴィヴィさんにお願いするつもりはありません。ここからは私達でテストを行います」


 責任者がそう言うとこれまでウィング・フォーのテストをしていた試験魔装士達が我先にと手を挙げて立候補して来た。

 結局、サラは彼らの熱意に負けて少しでもおかしなことを感じたら中止するという条件でテスト継続に同意したのだった。



 自分の魔装具を着るため倉庫へ向かおうとしたヴィヴィに駆け寄り話しかける者がいた。

 あの元責任者だった。


「ヴィヴィ、お前顔色が悪いぞ」


 言葉だけ聞けばヴィヴィの体の心配をしているように見えるが、その顔を見ればそうではないと誰もが気づくことが出来るだろう。

 彼は魔装着を脱いで軽装となったヴィヴィの全身を鼻の下を伸ばしてイヤらしい目で舐めまわしていたからだ。

 ヴィヴィが不快感を隠しもせずに元責任者に言った。


「それがどうした?」

「そんな言い方すんなよ。お前を心配してやってんだぞ」

「……それで?」

「お前の依頼は終わったんだし、後はサラ達に任せてよ、俺の部屋で休まないか?もちろん深い意味は無いぞ。ただ気持ちよくしてやるだけだ!わはははは!」

「……」


 ヴィヴィが不機嫌な顔で元責任者にしっしっ、としている姿を見て責任者の我慢の限界が超えた。


「警備員!その人をどっかへ連れて行って下さい!二度とここには入れないように!」

「誰がその人だ!?誰が!?俺は元責任者でお前の先輩……ちょ、ちょ待てよー!」


 セクハラ元責任者は警備員達にがっちり掴まれて退場し、二度と戻って来ることはなかった。



 ウィング・フォーが暴走する危険性からテストは必要最低限の人数で行うことになった。

 見学したい者や自分の番が当分先の試験魔装士達が二階にある見学ルームへ向かう。

 そこでサラ達はロックが見学ルームにいるのに気づいた。

 ロックはサラ達の視線に気づき頭を下げて挨拶してきたのでサラ達も頭を下げて挨拶した。

 試験場にいる者達についてだが、もしものためにサラまたはアリスがエリアシールドで守ることになった。

 サラとアリスを襲ったリムーバルバインダーは反撃を受けてあちこち凹みが出来ていたが予備は用意されていないためそのまま使用されることになった。

 ちなみにクレッジ博士の当初の計画ではこのウィング・フォーは全てミスリルで作られることになっていた。


「フェランで作るならやはりミスリルだろ」


 という軽いノリである。

 バックパックとそのアームはともかく、リムーバルバインダー四枚もミスリル製ともなるととんでもない額になる。

 それを魔工所の者が発注前に気づき、「そんな金あるか!!」と急遽鉄製に変更されたのだった。

 もし、リムーバルバインダーが計画通り軽量で高い強度を誇るミスリル製であったなら先程の攻撃を無傷で防げたかわからない。



 試験魔装士達によるウィング・フォーのテストが開始された。


「くれっじ!すごい!本当に全然自分の魔力を消費しない!」


 これまでウィング・フォーの最大稼働時間は試験魔装士の魔力量で決まっていたがマナサプライヤーが起動したことにより無限大となった。

 だからと言って実際に無限に動けるわけではない。

 操作する者が耐えられないからだ。

 稼働時間を決めるのが使用者の魔力量から魔装士の能力に変わったということである。

 

「くれっじ!こいつ、二枚同時に操作しても干渉しないぞ!」


 フェラン魔工所の技術者達は干渉問題に長年頭を悩ませていた。

 それをクレッジ博士は解決していたということである。

 ヴィヴィが彼の言葉を補足する。

 

「ぐふ、そう言えば四枚同時でも干渉しなかったな」

「本当ですかヴィヴィさん!?」

「ぐふ」


 ヴィヴィは責任者の問いに頷いた。

 責任者は笑顔を見せるが自分達が解決出来なかった問題をクレッジ博士にあっさり解決されてしまった技術者達の表情は複雑だった。

 一巡目はサラの言葉もあり、試験魔装士達は慎重に操作していたがそれでもの多くの者がカルハン製を凌駕する結果を叩き出した。

 それほどウィング・フォーの性能はとんでもなかったのである。



 休憩を挟んで二巡目に入った。

 試験魔装士達が本気を出してテストを始める。

 サラ達が試験場に残った者達をエリアシールドで囲ったのは正解であった。

 それはウィング・フォーが暴走した、という意味ではない。


「く、くれっじ!くれっじ!全然ダメだ!コントロールできない!」


 リムーバルバインダーは彼らの予想を遥かに超える速さで反応するため操作を誤る者達が続出したのだ。


「くれっじ!?」


 今テストしている彼もまた操作を誤りリムーバルバインダーがエリアシールドに激突する。

 エリアシールドは飛んできたリムーバルバインダーを弾き返した。

 試験魔装士達の中には神経を研ぎ澄ませば二つのリムーバルバインダーを正確に操作出来る者も何人かいた。

 しかし、そんな集中力が長続きするはずもなく一分持てばいい方で、結局は操作を誤りリムーバルバインダーを周囲の壁や床、果てにはエリアシールドに激突させるのだった。

 最初こそ自分の魔力を消費せずに動作するウィング・フォーに興奮していた試験魔装士達であったがリムーバルバインダーを思い通りにコントロール出来ないことがわかり興奮はすっかり冷め代わりに焦りが生じていた。



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