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67話 議論の邪魔をする者

 サラはベルフィとナックの三人で先程の戦いについて話をしていた。

 サラはナナルとの特訓では単独で戦っていたため、多対一の戦いは慣れていたが、パーティを組んでの経験は圧倒的に少なかった。

 それを補うために戦いの後、ベルフィとナックに教えを請うていたのだ。

 ちなみにリオとヴィヴィは全く興味がないようで今まで参加した事はなく、サラも無理に誘わなかった。

 カリスもそのような議論は面倒臭いと今まで一度も参加したことがなかったが、サラが他の者と仲良くしている(ように見える)のが我慢できずその場へ向かう。

 カリスはサラの隣に座りたかったが、大柄のカリスが座れるほどの隙間はなかった。


「なあ、ベルフィ、ナック。どっちかちょっと退いてくれねえか」

「は?」

「どうしたんだ?」


 カリスのおかしな質問にベルフィとナックが首を傾げる。


「話に加わりたいならその辺に座ればいいだろう」

「いや、サラが俺と座りたがってるからよ。なっ?」

「言ってません」


 サラはカリスのキメ顔を無視し、冷たく言い放つがカリスに効果はない。


「おいおい、照れなくてもいいだぜ。俺とお前の仲じゃないか」

「どういう仲かは知りませんが、あなたの勘違いです」


 サラが素気なく言っても、

 

「な、コイツ素直じゃないんだ」


 などとカリスは自分に都合のいい解釈をする。

 しかし、ベルフィとナックのどちらも動こうとしないので剛を煮やしたカリスが強引にナックとサラの間に割り込んできた。


「お、おいっ」

「ちょっとっ」

「サラ悪い。ナック、そっちにズレろよ」

「カリス、お前は戦術には興味がなかったんじゃないのか?」

「おうっ、だがよ、副リーダーとしてそれじゃダメだと思ってよ」

「……まあ、それは確かにな」


 カリスがウィンドの副リーダーなのは彼のプライドを満たすための名ばかりの肩書きで、彼が副リーダーとしての働きをした事はない。

 カリスが自主的に勉強したいと言う言葉を信じ、ナックは場所を空ける。


「じゃあ、この場合、お前はどうする?」


 ベルフィは状況を説明してカリスに意見を求めたのだが、カリスは自分で考える素振りを全く見せず、


「どうするサラ?」


 と丸投げするのであった。

 サラは不機嫌さを露わにする。


「はあ?質問されたのはあなたですよ」

「いや、俺達は一緒に行動するだろ。だからサラが……」

「しませんが」


 カリスの言葉を途中で遮り否定するサラ。


「はははっ、何言ってんだ」


 カリスが笑うが、他の者は笑わない。


「いやいや、カリス、お前の方が『何言ってんだ』だぞ」

「その通りだ。やる気がないなら出て行け」


 ナックに続きベルフィも不機嫌になって言った。


「いや、サラが参加するなら俺も参加しなきゃならないだろう」


 カリスが意味不明な事を当然のように言った後、サラにキメ顔をした。

 しかし、サラに効果はない。いや、逆に悪印象を与えるのに成功した。


「カリス、邪魔するなら出て行って下さい」

「な……」


 サラは一度では効果はないようなのでもう一度言った。


「邪魔なので出て行って下さい」

「さらぁ……」

「あーっ!気持ち悪い声出すんじゃないよっ!」


 カリスの同情を誘おうとする情けない声に今までのやりとりを聞いてイライラしていたローズがたまらず叫ぶ。


「何だと!?」

 

 カリスがムッとした表情をローズに向けるだけで、その場から離れる様子はない。

 サラがスッと立ち上がる。


「サラ?」

「これ以上議論できそうもないので私はこれで」

「そっか、じゃあ俺も行くぜっ」


 カリスがついて来ようとするのでサラはベルフィを見た。


「ベルフィ」

「おいっサラ!俺がいるんだ!相談なら俺に……」


 サラはカリスの言葉を最後まで聞かず言った。


「カリスが鬱陶しいので何とかして下さい!」

「なっ……」


 サラの怒りを孕んだ声に流石のカリスも足を止めた。

 しかし、それも一瞬のこと、すぐにサラの後をついていこうとするのを見て今度はベルフィが怒鳴る。


「カリス!お前はこっちだ!」

「戦術に興味があるんだろ。じっくり話そうぜ。ローズも来いよ。パーティ全員でやろうぜ!」


 ベルフィに続き、ナックもカリスを引き留める。

 思わぬ巻き添いを食ったローズが不満顔でやって来た。


「なんであたいまで……って!どこ行こうとしてんだいっ!あんたのためだろうがっ!」


 サラの後を追おうとしたカリスをローズが腕を乱暴に掴んで止める。


「いや、しかし、サラが……」

「ショタ神官はあんたに用はないって言ってんだろっ!」

「早く来いカリス!!」


 ウィンドのメンバーみんなから冷たい視線を受け、カリスは渋々輪に加わるが、全く話を聞いておらず、リオと話をするサラをじっと見ていた。


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