表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
668/863

668話 メキドの襲撃

 再実験する前にヴィヴィはマナポーションを飲んで魔力を回復させた。

 もちろん、そのマナポーションは魔工所が提供したものである。

 ヴィヴィはウィング・フォーのバックパックに向けて魔力を一気に放出した。

 すると今までにない変化が起きた。

 ウィング・フォーからもヴィヴィの中に何かが入り込んでくる感覚があったのだ。

 この感じには覚えがあった。

 魔王メキドと交信しているときの感覚だ。

 そう思ったとき、その聞きたくない相手の声が頭に響いた。


(ははははっ!面白いものを使っているではないか!)

(メキド!?ここにはサラやアリスがいるのだぞ!?)


 ヴィヴィはジュアス教団の神官であるサラとアリスに自分が魔族、それも魔王と関わりがあることを知られるのを避けるためメキドとのやりとりは二人がそばにいない時にしていた。

 金色のガルザヘッサとの戦いのときにもヴィヴィはメキドと会話をしていたが、金色のガルザヘッサも実は魔族だったのでサラに気づかれずに済んだ。

 そのことを思い出し、ある考えに至る。


(……まさか、魔族か!?ナンバーズは魔族が関係しているのか!?)


 ヴィヴィの問いにメキドは答えなかった。


(ちょうどいい。やさしい我がお前の代わりに処分してやるとしよう)

(なに!?何をする気だ!?)


 またもメキドはヴィヴィの問いに答えなかった。

 ヴィヴィの意思とは関係なくウィング・フォーが四枚の翼を広げて上昇する。

 その姿はまるで四枚の翼を広げて飛び立つ天使のようであった。


「おお!!」とフェラン魔工所の者達から歓声が上がる中、四つすべてのリムーバルバインダーが射出された。

 それらがこれまでにない速さで宙を舞う。

 そのうちの二つはあらぬ方向へと飛んでいったが、残りの二つがそれぞれサラとアリスに向かっていった。



 サラはウィング・フォーが宙に浮かぶ少し前から嫌な気配を感じていた。

 それが魔族に近いものになった。

 警戒していたお陰でリムーバルバインダーが迫ってきても慌てる事なく蹴り飛ばして攻撃を防ぐことができた。

 一方、アリスは突然のことに対応できず迫るリムーバルバインダーをただ見つめているだけだった。

 アリスに激突すると思われた瞬間、リムーバルバインダーが方向を変えて壁に激突した。

 リオが蹴りを放ちリムーバルバインダーの方向を無理やり変えたのだ。



(ちっ)


 魔王メキドは舌打ちとともにヴィヴィの中から気配を消した。

 ヴィヴィは自分の制御下に入ったウィング・フォーを着地させるとその仮面を剥ぎ取り投げ捨てた。

 カラン、と仮面が乾いた音を立てて床を転がる。

 更に魔装着を脱ぎ捨てる。

 魔装着の中から軽装の美しい女性が現れる。

 皆が見惚れる中、ヴィヴィはサラとアリスに前に来ると頭を下げた。


「サラ、アリス、すまなかった!」


 サラはヴィヴィが自分に真剣に謝る姿を初めて見たと思った。


「いえ、今のは事故なのでしょう。何が起きたのか説明してください」

「ああ」


 ヴィヴィは起きたことを伝える。

 もちろん、魔王メキドのことを除いてだ。


「魔力をバックパックに注いでいたら突然、ウィング・フォーから何か嫌な感じがした。気づいたら空を飛びリムーバルバインダーを放っていた」


 その時、ウィング・フォーを操作していたのはメキドなので嘘は言っていない。

 サラもウィング・フォーから嫌な気配を感じていたのでヴィヴィの言葉を信じた。


「私もその嫌な気配を感じました。今回は許します」

「わたしもっ。リオさんが守ってくれて無事だったので許しますよっ」

「二人とも本当にすまない」


 ヴィヴィがアリスを守ってくれたリオにも礼を言おうとリオの姿を探す。

 リオはヴィヴィが脱ぎ捨てた魔装着のそばにいてじっと見ていた。

 その魔装着はヴィヴィが脱ぎ捨てた後も地面に落ちる事なく、まるで透明人間が着て立っているかのように見えた。

 それが不意にリオに向かって前に倒れかけて止まった。

 偶然か、あるいは何か別の意思が働いたのか、魔装着のとった姿勢はリオに向かって跪いているようであった。

 サラにはその姿が王に誓いを立てる騎士のように思えた。

 ヴィヴィは一瞬その姿に驚いたもののすぐに我に返るとリオのそばにやって来て感謝の言葉を述べた。


「リオ、アリスを守ってくれて助かった」


 リオが魔装着からヴィヴィに目を向けた。

 その顔はいつもと変わらぬ無表情だった。

 そのはずだったが、ヴィヴィはその顔を見て体が震えた。


「そうなんだ」


 ヴィヴィはリオの感情の籠っていない淡々とした声を聞き喉がカラカラに渇いていることに気づく。

 リオがそのような態度をとるのは別段珍しいことではない。

 だが、どこか違和感を覚えた。

 

(まさか気づかれたのか!?メキドの存在に!?い、いや、そんなはずはない!)


 ヴィヴィはその考えを追い出して無理やり口を開いた。


「あ、ああ、本当に助かったリオ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ