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664話 魔装士達のアピール

 案内人は彼らに絡まれたら面倒なので裏口に回ることにした。

 歩きながらリオ達に注意を促す。


「この分ですとパーティ探しで冒険者ギルドに詰めかけている者達もいるでしょう。皆さんは今日冒険者ギルドへ寄るのは控えたほうがいいと思いますよ」

「最初からその予定は無い」

「そ、そうですか。それならよかったです」



 案内人の忠告は無駄になった。

 なぜなら裏口にも魔装士が数人集まっていたからだ。

 彼らの魔装具も言うまでもなく廉価版魔装具だった。

 彼らはやって来たパーティに魔装士がいるのを見てニヤリと笑った。

 と言っても仮面が邪魔で口元しか見えないが。

 彼らはリオ達の前に駆け寄るとすぐさま自己アピールを始めた。


「おい!ここにすっげー魔装士がいっぞお!!」

「そんな荷物持ち捨てて俺を仲間に入れろ!」

「お前はもう用無しだ!どこかへ消えろ荷物持ち!」


 彼らは魔装具の違いがわからないようでブーメラン発言をする。


「ぐふ、それはお前達だぞ」


 ヴィヴィが冷静に突っ込みを入れるが彼らの耳には届かなかったようだ。

 彼らはそのパーティがリサヴィだと気づかず、リーダーだと思ったサラにパーティ入りを訴えかける。


「なあ頼むよ!俺は前のパーティを理不尽に追い出されて金がないんだ!絶対俺の方がそいつより役に立つからよ!俺が保証する!」


 そう言った廉価版魔装具を装備した魔装士は腕を組んで仁王立ちしてキメ顔をする。

 といっても顔は仮面が邪魔して口元しか見えないが。

 そのポーズを見たリサヴィの面々は、


「あ、こいつクズパーティにいたんだな」


 と思った。

 その訴えに答えたのはヴィヴィだった。


「ぐふ、そんなただの荷物入れ担いた奴が魔装士を名乗るな」

「ざ、ざけんな!これはリ、リーバルバインバインダーだ!!」

「あれっ?」


 アリスは彼がリムーバルバインダーの名前を間違えて呼んだことに首を傾げる。

 ヴィヴィは彼の間違いを指摘する代わりに廉価版魔装具には不可能な要求をする。


「ぐふ、荷物入れでないなら飛ばしてみろ」

「なっ!?」


 廉価版魔装具の両肩にマウントされた荷物入れは重量軽減の魔道具が埋め込まれているだけで空中移動する機能はない。

 手動で脱着するのだ。


「ぐふ、すぐバレる嘘をつくからだ。わかったらさっさと消えろ」

「ざけんな!み、見てろよ!」


 その廉価版の魔装士は右肩の荷物入れ、いや、リーバルバインバインダーとやらを外すと「おりゃー!」と声を上げてぶん投げた。


 リーバルバインバインダーは数メートル先にぼてっと落ちた。

 彼はなんか誇らしげな顔をサラ達に向ける。

 と言っても仮面で口元しか見えないが。


「どうだっ!?」

「「「「……」」」」


 リオ達の沈黙を何と勘違いしたのか、そのやりとりを見ていた他の者達も負けるものかとリーバルバインバインダー?をぶん投げ始めた。

 そして腕を組んで仁王立ちしてキメ顔。

 その姿を見てリオが呟いた。


「ギャグか」


 リオの言葉に廉価版の魔装士達が怒り出した。


「ざけんな!何がギャグだ何が!?」

「ぐふ、私は飛ばせと言ったのだ。投げろとは言っていない」

「ざけんな!言葉遊びしてんじゃねえ!」

「おう!俺は期待に完璧に応えた!」

「俺もな!」

「お前はもう用済みだからさっさと消えろ!」

「ぐふ」


 ヴィヴィが言い返そうとした時、リオが「そうか」と呟く。

 それに気づいたサラがリオに声をかける。


「リオ?どうかしましたか?」


 リオがサラに頷いてから言った。


「これはギャグじゃなくて茶番劇か」

「「「ざけんな!」」」


 廉価版の魔装士達の絶叫が響き渡った。



 案内人が魔装士達の説得にかかる。


「いい加減にしてください。この方達はリサヴィですよ。あなた方が入れるようなパーティではないんです」

「なに!?リサヴィだと!?」

「こいつらが!?」

「言われてみれば……」


 案内人は魔装士達が口をぽかん、と開けてリサヴィを見つめる姿を見て納得したと思った。

 だが、もちろんそんなわけはなかった。


「わかっていただけまし……」

「よっしゃー!!ついに俺にも運が回ってきたぜ!」

「俺が今日からあのリサヴィのメンバーか!!」

「これで俺を追い出しやがったあいつらを見返してやれるぜ!!」


 何故か全員リサヴィに入れると本気で思ったようだった。

 しかし、すぐに気づく。

 自分達の圧倒的な実力不足に、

 ではなく、邪魔者がいることに。


「俺に決まってんだ!」

「俺俺!」

「ざけんな!」


 廉価版の魔装士達はリサヴィメンバーの座を巡って言い争いを始めた。

 それはやがて取っ組み合いの喧嘩に発展した。


「今のうちに行きましょう」


 彼らの無駄な争いに呆気に取られていた案内人はサラの声で我に返った。


「そ、そうですね」


 彼は感心した。


(流石クズ退治専門家と言われるだけあって場慣れしているんだな)


 と。


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