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661話 勘違い魔装士達 その1

 オッフルの街のある宿屋。

 その一階でヴェイグとイーダは食事をしていた。

 ヴェイグが隣で食事をしている者に尋ねた。


「なあ、なんでお前俺達と一緒に飯食ってんだ?」


 ヴェイグの隣にいた者は自称劇作家の双璧の男であった。


「決まってるじゃないですか。リサヴィの皆さんが私を置いてけぼりにしてしまったからですよ。ほんと人が悪いですよね。一声かけてくれれば私もお供したのに」


 すかさずイーダが突っ込む。


「いや、あんたは足手纏いでしょうが」

「そんな事はありません!」


 自称劇作家の双璧の男は自信満々に答えた。


「え?あんた、まさか実は冒険者だとか言わないわよね?」

「もちろん違いますよ」

「じゃあなによ。その自信は?」

「リサヴィの皆さんの力を持ってすれば私一人ぐらい余裕で守れますよ」


 イーダは彼の他人任せの答えに呆れた。

 ヴェイグが話を戻す。


「俺の質問に答えてないぞ。なんで俺達についてくる?」

「あなた方に興味があるのです。特にイーダさんにです」

「あたいに?」

「はい。あなたにはサラさんやアリスさんと同じ匂いがします」


 イーダはちょっと引いて尋ねる。


「……何よ、その同じ匂いって?」

「クズコレクター能力者の匂いです」

「バカ言ってんじゃないわよ!あたいにそんなものないわよ!」

「またまたご謙遜を」

「……あんた、あたいにケンカ売ってる?」


 彼は真剣な表情でイーダを見て言った。


「あの、本気で言ってますか?」

「それはあたいのセリフよ!」

「……わかりました。では私がそう思った根拠をお話しましょう」

「おもしれえ。ぜひ聞かせてくれ」

「ヴェイグ!」

「では」


 彼がここに来るまでにイーダが何度もクズに絡まれてたことを話した。

 中には輸送隊の護衛を始める前のことも含まれていた。

 話し終えた彼の顔はとっても自信ありげであった。

 対するイーダは非常に焦っていた。


「な、なんでそんな事まで知ってるのよ!?」

「私が劇作家だからです」

「説明になってないわよ!」

「私が劇作家の双璧と呼ばれるほどの実力の持ち主だからです」

「だから説明になってないって言ってんでしょうが!」


 そのやり取りを笑って聞いていたヴェイグであるが、店に入ってきた者達に気づき首を傾げる。


「……なんだあいつら」


 ヴェイグの呟きを聞き、自称劇作家の双璧の男もイーダとの言い合いを中断して店の入口に目をやる。

 そこには魔装士がいた。

 それも複数。

 彼らの魔装具はフェラン製のあらゆる機能をオミットした廉価版で皆倣ったかのように腕を組んで仁王立ちして立っていた。

 ただし、皆真っ直ぐ立っているわけではなく、上半身を右や左に傾けていた。

 仮面で口元しか見えないがなんか誇らしげな顔をしているようだった。


「パーティ、なわけはねえか。あんな雑魚集団でパーティ組んだら即全滅だ」


 その様子を見てイーダが言った。


「自分のパーティ探してるんじゃないの?」

「……いえ、違いますね。探しているのは合っていますが自分の、ではなく、自分が入れそうなパーティを探しているのです」

「そりゃどういう意味だ?」

「彼らは基本、ダンジョンのそばにある街を活動拠点にしています」

「活動拠点?」

「そう言えば皆さんはユダス出身でしたね。あまり彼らとは関わったことがないのではないですか?」

「ええ」

「では私の方が詳しいかもしれませんね」

「話してみろよ」

「はい。彼らの多くはパーティに所属していません。いえ、できないと言ったほうが正しいでしょう。」


 自称劇作家の双璧の男が廉価版の魔装士について解説を始める。


「彼らは魔装士と言っても自身の戦闘力はなく、両肩に装備したアレはただの物入れで武器に魔力を供給することも出来ません。荷物を運ぶことしか出来ない彼らが活躍出来る場面はダンジョンくらいですからダンジョン攻略するパーティ以外は彼らと行動を共にする理由がありません。下手にパーティに入れてしまうと何もできないのに報酬を分ける必要が出てパーティの負担にしかなりませんから。仮にパーティに入れたとしても相当酷い条件を受け入れたと容易に想像がつきます」

「そうなのね」

「そういうわけで彼らの多くはソロ活動を余儀なくされ、ダンジョンが近くにある街で待機してダンジョン攻略しに来たパーティに交渉して混ぜてもらうのです」


 イーダが首を傾げる。


「でもオッフルの近くにダンジョンなんてないわよね?」

「はい。この先のフェランには“死のダンジョン”がありますがあれは最早“休ダンジョン”と言っても過言ではないですからね」

「じゃあなんでいるの?」

「恐らくですが、彼らは数少ないパーティ加入組みだったのですが、このオッフルか、近くの街でそのパーティを追放されたのでしょう」

「にしては奴らなんか偉そうだぞ」

「そうね。そんなふうには見えないわ。誰も相手にしてないけど」

「それは恐らく自分の価値を勘違いしてしまったのでしょう」

「勘違い?」

「東側、カルハン以外でも魔装士の力が見直されて来ています。カルハンがジュアス教団に勝ったこともありますが、リサヴィのヴィヴィさんの活躍も大きいでしょう。そのヴィヴィさんがオッフルにやって来て皆に尊敬の眼差しを向けられているのを見て、自分達の価値も上がったと勘違いしたのです」

「いやいや。それはないでしょ」


 イーダが思わず手でゼスチャーまでして彼の意見を否定する。

 

「そもそも東側で魔装士の評価を激下げした張本人達でしょ」

「そのことをすっかり忘れているのでしょう」

「いやいや、なんで忘れるのよ?忘れることが出来るのよ?」

「クズだからです」

「「……」」

「クズは現実を妄想で上書きする能力があるそうです」

「そりゃ能力じゃなくて病気だろ」

「そして自分を客観的に見ることもできません」

「でもまだクズだとは決まってないんじゃないの?」


 イーダの言葉を聞いて彼はため息をついた。


「何よその態度は?」

「イーダさん、あのポーズをしている時点で確定ではないですか」


 そう言って腕を組んで仁王立ちしている魔装士達に目を向ける。


「確かにクズはみんなあのポーズするな」

「私は侮蔑を込めてクッズポーズと名付けました」


 そう言った自称劇作家の双璧の男の顔はなんか誇らしげだった。

 即イーダが突っ込む。


「そのまんまじゃん」

「いやあ、それほどでも」

「別に褒めてないから」



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