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66話 サラの苦悩

 ウィンドとリサヴィはギルドへ向かった。

 依頼を見にベルフィとナックが向かい、彼らが依頼を選んでいる間、残りのメンバーは一つのテーブルを囲んで待っていた。

 サラがカリスの自慢話を聞き流しているとベルフィ達が戻ってきた。


「マドマーシュの遺跡調査の依頼を受ける」


 ベルフィの口から出た遺跡の名にサラは聞き覚えがあり首を傾げた。


「その遺跡が発見されたのはかなり前だったと思いますが?」

「サラちゃんよく知ってたな」

「魔物は一掃されてたはずなんだが、最近また出現するようになったらしい」

「依頼ランクはDですか?」

「その通りだ」


 そう言ってナックが依頼書を見せる。

 

「なるほど。Eランクの私達も受けられますね」

「そう。俺達もギリギリ受けられるランクだ。この依頼は五組のパーティの参加が認められてるんだけどよ、人気がないのかまだ二組空きがあるんだ。俺達とサラちゃん達で受けられるぜ」


 珍しくヴィヴィが自分から依頼書を眺める。


「なんだヴィヴィ、興味がわいたか?」

「ぐふ」

「面白そうだって」

「お前は“ぐふ”、でわかるのか?」

「なんとなく」

「リオ、自分の身は自分で守れよ。Dランクの依頼だ。魔物もそれ相当のランクのものが出現するはずだ」

「わかった」



 マドマーシュへ向かう途中、魔物の襲撃を受けたが、苦戦する事なく退けた。

 約一名を除いて。


「サラ、頼むぜっ」


 カリスがキメ顔でサラに魔物との戦いで負った怪我を見せる。

 サラはため息をつく。


「カリス、何故あなたは戦いの最中にあんな事をするんですか?」

「あんな事?それより早く頼むぜっ、痛えんだ」

「その前に答えて下さい。何故、敵を倒す度に無駄なポーズを決めて隙を作るんですか?」

「なんだよサラ、“好き”だなんて突然、俺も好きだぜ!ってみんなの前で言わせるなよっ!」


 カリスが照れながら訳のわからない事を言った。


「……は?」


 サラはしばらく考え、カリスは“隙”を“好き”と変換したとの結論に至るが、何故今の話の流れからそのように変換したのか、その思考が理解できない。

 冗談を言ったのかとも考えたが、そんな状況ではない筈だ。


「……カリス、私は真面目な話をしているのですが」

「おうっ、俺もなっ。お前の気持ちはわかってるから早く治してくれ」


 サラは頭痛で頭を押さえる。


「……ナック、お願いします」

「ちょ、ちょと待てよっ!」


 カリスが慌ててその場を去るサラの腕を掴もうとするが、サラはその手をすっとかわす。


「私はリオの治療がありますので」

「そっちをナックに任せろよっ!なっ?」


 カリスが再びサラにキメ顔をするが、サラは見向きもしない。


「私はリサヴィのメンバーですから同じパーティのリオを優先するのは当たり前です」

「あいつは転んで怪我したんだぞ!そんな間抜けは放っておけよ!な?」


 カリスがキメ顔をするがサラは冷めて目で見つめる。


「リオが怪我したのはあなたがぶつかってきて転んだからですが」

「なっ……」


 そう、リオが魔物に向かって構えているところにカリスが後ろからぶつかって来てきたのだ。

 何の障害物もないところなので酔っ払っていないならワザとしか考えられない。

 ともかく全面的に非はカリスの方にあるとサラは確信している。


「おーい。カリス、こっち来い」


 ナックの呼びかけにカリスは怒鳴り返す。

 

「俺はサラに治してもらうからいい!!」

「おいおい……」


 ナックは呆れ顔をする。

 カリスがサラの後をついて来る。


「よしっサラ!リオを治すのはいいっ。だが、その前に俺だ。お前の勇者である俺を治してくれ。なっ?それならいいだろ?」


 カリスがサラに再びキメ顔をするが、やっぱり効果はない。


「あなたの許可などいりません」

「おいおい……」

「何度も言いますが、私はあなたを勇者だと言った事も思ったこともありません」


 サラはカリスに目を向ける事もなく、冷ややかな声で否定する。


「さらぁ」


 そのみっともない声に反応したのはサラではなく、ローズだった。


「ああっー!カリス!そんなでかい図体して気持ち悪い声出してんじゃないよっ!」

「う、うるせっー!」


 サラはリオの傷を治した後、執拗に言い寄ってくるカリスを無視し続けた結果、根負けしたのはベルフィだった。


「サラ、カリスの怪我を治してやってくれ」


 ベルフィに続き、ナック、ローズも続く。


「頼むよサラちゃん」

「ショタ神官っ!その気持ち悪い声を何とかしなっ!」


 結局、みんなに説得される形でカリスの傷を治療するのだった。

 ただし、念を押すことを忘れない。


「次、また不注意で怪我してたら治しません」

「おうっ!」


 サラはカリスの笑みを見て「これはわかってないわね」と思った。

 そして、それは的中する。



 カリスがキメ顔でサラに怪我した腕を見せる。

 

「頼むぜサラ!」


 サラは治療をせず今の戦いの疑問を口にする。


「今の戦いはなんですか?私にはただ無策に突撃したようにしか見えませんでしたが」

「何を言うんだ!お前のために戦ったんだぜっ!そうっお前のためになっ!」


 カリスがどこか誇らしげに言うとキメ顔をする。


「なるほど。すべて私のせいだと言い張るのですね?自分のミスを私のせいだと」


 サラの不機嫌な顔を見てカリスのキメ顔が崩れ、情けない顔をする。


「ちょ、ちょ待てよっ!そうは言ってねえだろう!?」

「いえ、それで構いませんのでもう私に近づかないでください。ナック、カリスの治療をお願いします」

「なんでそうなるっ!?」

「カリス、こっち来い」

「俺はサラに治してもらうんだ!」


 カリスがサラの後を追いかけるのを皆が呆れた表情で見ていた。


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