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654話 クズは護衛依頼を受けたい その2

 受付嬢ははっと我に返りクズリーダーに確認する。


「えっと、リサヴィですか?あの鉄拳……ナナル様の弟子のサラさんのいるリサヴィですか?」

「おう!」

「その鉄拳制裁がいるリサヴィだ!他にそんな名前で有名な奴らいねえだろうが!」

「はあ。それで何故そこでリサヴィの名が出たのですか?」

「奴らにも冒険者達から苦情が来てんだろうがよ!」

「苦情、ですか?」

「何とぼけてんだ!?贔屓しようたって無駄だぞ!こっちはわかってんだからな!」

「奴らだって苦情が来てんのに結果を出してるから処罰なしになってんだろうがよ!」


 受付嬢はリサヴィの情報を調べて彼らが何を言っているのか理解した。


「確かにリサヴィの皆さんへ苦情が寄せられていますが、」

「だろう!隠そうたってバレバレなんだよ」


 そら見たことかと勝ち誇った顔をするクズ冒険者達をよそに受付嬢は平然とした顔で続ける。


「ですが、その苦情を言った者達は依頼主でもリサヴィの皆さんと一緒に依頼を受けた冒険者の方達でもありません」

「そんなの関係ねえだろうが!」

「そんなことはありません。依頼主や一緒に依頼を受けた冒険者達からは大変好評なのです。その事から苦情を言って来た者達はサラさんやアリスさんを勧誘して断られたり、共同依頼を持ちかけて断られた腹いせに嘘を言ったのだと判断しています」


 受付嬢の言う通りであった。

 クズ冒険者達は自分達の思い通りに事が運ばない腹いせにギルドにあることないこと……ではなく、ないことないこと喚き散らしていたのだ。

 受付嬢の話を聞き、クズ冒険者達の勝ち誇った顔があほ面に変化したがすぐに怒りの形相に変化させて受付嬢を怒鳴りつける。


「ざ、ざけんな!何で嘘だと思うんだ!?証拠はあんのか証拠はよ!?」

「今の説明で十分だと思いましたが」

「不十分だと言ってんだ!」

「「だな!」」

「そうですか。では補足しますと彼らに名前を聞くと決まって拒否するのです。嘘を言った証拠が残るのを恐れてのことでしょう」

「ざけんな!匿名性は大事だろうが!密告したことがリサヴィに知られてみろ!逆恨みで殺されたらどうすんだ!?あん!?」

「それは心配ありません。これまでリサヴィの皆さんは自分達からクズの相手をしたことはありま……失礼、そのような方達を相手にしたことはありません」


 受付嬢は言い直したが発した言葉をなかったことにすることは出来ない。

 クズという言葉を聞いてクズ冒険者達の怒りがマックスになった。

 顔が茹蛸のように真っ赤に染まり受付嬢を怒鳴りつける。


「「「ざけんな!誰がクズだ!誰が!!」」」


 実は彼らも以前、サラを勧誘して断られた腹いせにギルドにないことないこと喚き散らしていたのだ。

 ここで疑問に思うかもしれない。

 彼らもリサヴィ親友作戦に参加していたはずでは?と。

 だが、悩む必要はまったくない。

 クズ達の敵味方はコロコロ変わるのだ。

 今朝、大親友だと言って肩を並べて笑って歩いていても夕方には「死ね!」と襲いかかることも珍しくない。

 リサヴィについても利用できると判断した時点でこれまでの怨みは消えて大親友に変化したのである!

 もちろん、リサヴィが彼らの都合に合わせることはない。

 受付嬢が彼らの反応を見て首を傾げる。


「何故あなた方が怒るのですか?……あ、もしやあなた方も……」

「ち、違う!」

「お、俺らはその勇気ある告白した冒険者達の代わりに怒ってやってんだ!」

「「だな!」」

「……そうでしたか」

「「「おう!」」」


 元気いっぱいに腕を振り上げるクズ冒険者達に受付嬢に言った。


「それはつまり、あなた方もその勇気ある告白した冒険者達と同意見というわけですね」

「「「おう!」」」


 クズ冒険者達は再び元気いっぱいに腕を振り上げた後で受付嬢の言った意味を理解する。


「ち、違う!」

「ちょ、ちょ待てよ!」

「なんでそうなる!?」


 彼らが慌てて訂正していると冒険者ギルドを笑いが包み込んだ。

 冒険者ギルドにいた他の冒険者達も彼らの会話を聞いていたのだ。

 その冒険者達の一人が腹を抱えながら笑いすぎて苦しそうな表情をカウンターにいるクズ冒険者達に向ける。


「お、お前ら、くく……もう勘弁してくれよ……あはははっ!!」

「な、なんだてめえらは!?何がおかしい!?」

「な、何がって……お前らさ、よ、よくリサヴィを比較に出せたなあ。マジで、どういう神経してんのか呆れを通り越して感心しちまうぜ……くく、あははは!は、腹痛え!」

「俺もだ。お前ら俺らを笑い殺す気か!あはははっ!!」

「「「ざけんなーっ!」」」



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