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651話 魔術士ギルドの男Aからの依頼

 詰所の正面は商業ギルドであった。

 リサヴィが兵士に連れられて来たとき、その駐車スペースは馬車でいっぱいであったが今はあちこちに空きが見られ、今まさに出発していく商隊の姿もあった。

 それを見てアリスが疑問を口にする。


「アズズ街道の開放が確認されたんですかねっ?にしては早すぎる気もしますがっ」

「だとしても流石に夜にアズズ街道を走るとは思えませんが」


 結界が復活したとはいえ、通常の状態に戻っただけだ。

 結界が正常に動作していても完全に魔物の侵入を防ぐことは出来ないため魔物の活動が活発になる夜の移動は避けるはずであった。


「ぐふ、リスクを承知で出発した者達もいるかもしれんがほとんどの者達は街道前のキャンプスペースに移動したのだろう。街道の安全確認が終えたらすぐ出発できるようにな」

「確かにっ。これだけ待ってる人達がいるんですからっ街でのんびり待ってたらっ出発がいつになるかわかりませんもんねっ」

「そうですね。では私達は宿屋に向かいましょう」


 ヴィヴィは商隊に雇われた冒険者が宿を引き払っている可能性を考えて言った。

 

「ぐふ、これなら勧められた宿屋が満室でもどこかには泊まれるだろう」

「そうですね」

「ですねっ……はっ!?」

「どうしました?」

「リオさんはっこれを見込んでっ騒ぎを起こして時間を潰したのではっ?」

「ぐふ……」

「そんなわけないでしょう」

「そうなんだ」

「『そうなんだ』ではありません。あなたは最近気が短すぎます」

「ぐふ、お前にだけは言われたくないと思うぞ」

「なんですって!?」


 サラとヴィヴィがにらみ合いながら、リオが短気になった責任を押し付け合っているとよせばいいのにアリスが笑顔で仲裁に入る。


「二人とも落ち着いてくださいっ。短気なのはどっこいどっこいですよっ」


 アリスの言葉に感動して二人はその頭をど突いた。

 

「痛いですっ」 

 

 アリスが頭を抱えているところへ控えめに声をかけてくる者がいた。


「あの、リサヴィの皆さん、目立ってますよ」


 声をかけてきたのはオッフルの魔術士ギルドの男Aであった。

 辺りを見回すと確かに通行人が足を止めてサラ達を見ていた。

 しかし、争いが終わるとそそくさとその場を離れていった。


「またっ二人の悪い噂が流れてしまいますねっ」


 サラはアリスの言葉をスルーして魔術士ギルドの男Aに顔を向ける。


「こんなところで会うなんて奇遇ですね。買い物か何かですか?」

「いえ。実は皆さんにちょっとご相談したいことがあって来たんです。あの宿屋に向かったのですが騒ぎのことを聞いてここへやって来たのです。行き違いにならなくてよかったです」

「私達に相談ですか」

「はい。正確にはヴィヴィさんにですが」

「ぐふ?」

「あ、その前にすみませんでした。俺が紹介した宿屋でトラブルに巻き込まれてしまったようで……」

「いえいえ。あなたの責任ではありませんから気に病むことはありませんよ」

「ですねっ」

「ぐふ、何せこちらにはクズコレクター能力者が二人もいるからな。遅かれ早かれ奴らも引き寄せられたことだろう」

「おいこら!」

「ヴィヴィさんっ!わたしは違うって言ってるでしょっ!わたしはっ!」

「アリス」

「えへへっ」

「と、ともかく、宿屋の主人はとても感謝してました。皆さんが撃退したクズ達の営業妨害ですごく困っていたそうなんで」

「そうですか」

「それで宿のほうのですが、是非泊まってほしいと部屋を用意して待っているそうです」

「わかりました。ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ本当にすいませんでした」

「ですからあなたが謝る必要は無いですよ」

「ぐふ、悪いのはクズだからな」

「ですねっ」



 ヴィヴィが本題に戻す。


「ぐふ、それで私になんの用だ?」

「はい。実はフェランの魔術士ギルドの者達に今回の件を報告していたのですが、俺が魔装士として有名なヴィヴィさんと知り合いと知ってですね、是非魔装具の動作試験に協力してくれないか頼んでほしいとお願いされまして。最初は冒険者ギルドに正式に依頼しようかとも思ったんですが皆さんギルドに行く気がなさそうでしたし、依頼申請もそれなりに時間がかかりますので、それなら直接お話したほうが早いかと思いましてこうしてやって来たというわけです」

「ぐふ、なるほどな。また動作テストか」

「また、ということは以前にもあったのですね。でもまあヴィヴィさんなら確かにどこも協力して欲しいと思いますよ。ちなみに前回はどちらに?あ、もちろん、差し使えなければですけど」

「ぐふ、クレイジーのところだ」

「え!?クレイジー博士のところですか!?」

「ぐふ」

「クレッジ博士ですよ」


 二人が訂正しないのでサラが指摘する。


「ぐふ、誤差だ」

「そういう問題ではありません」

「実は今回の依頼もそのクレイ、クレッジ博士案件なんです」

「ぐふ?」

「そう言えばクレッジ博士はフェランの魔術士ギルドの協力をしていたのでしたね」

「はい。それでどうでしょうか?」

「ぐふ、私は構わないが」


 と言ってヴィヴィがリオに顔を向ける。

 その仕草で魔術士ギルドの男Aはこのパーティのリーダーがリオであることを思い出す。

 そのリオだが、ぼーと夜空を眺めていた。


「あの、リオさん、どうでしょうか?」

「ん?」


 その反応で話を聞いていなかったとわかり、先ほどの話をリオにした。


「いいんじゃない」


 リオはどうでもいいように言った。


「ありがとうございます!」

「ぐふ。だがすぐというわけにはいかないぞ。私達がフェランに来た目的はリオの剣探しだからな。依頼はその後になる」

「はい。それで構いません。では、とりあえず仮の日時を決めていいですか?変更があればまたその都度連絡するということで」

「ぐふ」

「あと報酬なんですが、クレッジ博士からの依頼のときはいくらでしたか?それを参考に……」


 皆の表情が曇ったのを見て魔術士ギルドの男Aは察した。


「……いえ、いいです。報酬については当日依頼内容を聞いた上で担当の者と交渉してください」

「ぐふ」

「ではよろしくお願いします」


 リサヴィは宿屋へ魔術士ギルドの男Aと一緒に向かう。

 その宿屋に着くと主人が店の外で待っており、クズ達を追い払ったことを改めて感謝された。


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