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649話 リサヴィに絡むクズ達 その1

 リオ達は魔術士ギルドの男Aに勧められた宿屋を見つけた。

 その店の前にはチンピラらしき者達が屯っていた。

 正確には元冒険者のクズである。

 彼らはその宿屋に入ろうとする者だけなく、前を通る者達にもガンつけし客を寄せ付けないようにしていた。

 誰が見てもはっきりわかる営業妨害である。

 リオ達は彼らを気にする事なく宿屋に入ろうとしたが、そのクズ達が立ち塞がった。

 彼らは相手がリサヴィだと気づいておらず、高圧的な態度で話しかけて来た。


「お前ら冒険者か」


 サラは「また面倒な者達と遭遇したわ」とその事を顔にも声にも隠さず答えた。


「それが何か?」

「ランクは!?」

「早く言ってみろ!」

「全員Cです。もういいでしょう。そこを退いて下さい」


 しかし、クズ達は退こうとしない。

 それどころか更に絡んで来た。


「はっ、Cランクだと?その歳でか?」

「ぐふ?歳を答えた覚えはないぞ」

「黙れ!人の揚げ足取りやがって!」

「大体棺桶持ちがCランクに上がれるわけねえだろうが!!」


 彼らは廉価版を装備した魔装士しか知らないようだった。

 フェランにいてその認識しかないところをみるとフェラン周辺で活動していた冒険者ではないようだ。

 クズ達がサラ、アリスの全身を舐め回すように見ながら言った。


「いいよなお前らは。容姿にも恵まれ運良くトントン拍子にCランクになったってか。順風満帆って言ったところだな」

「本当にCランクかは怪しいがな」

「ちげえねえ」

「おい、証拠にカード見せてみろ!」


 クズが差し出した手を無視し、ヴィヴィが吐き捨てるように言った。


「ぐふ、お前らは冒険者を羨むクズか」

「ざけんな!」

「棺桶持ちは黙ってろと言ってんだろうが!ぶっ殺すぞ!」

「ぐふ」


 彼らはリオ達のランクはどうでもいいようだった。

 カードのことはすっかり忘れて愚痴を吐き始める。


「俺らもなあ、前まで冒険者だったんだ!あれだけギルドに貢献してやったっていうのによお、突然俺らをクビにしやがった!」

「許せねぇぜ!」

「お前らもかわいそうだと思うだろう?」

「それが人情ってもんだ」


 今までの言動で彼らがクビになった理由は明白だ。

 クズから人情という言葉が出てヴィヴィが思わず「ぐふっ」と笑う。

 それに気づかずクズは続ける。


「なあ、お前らよ、ちょっと一杯奢ってくんねーか?俺ら先輩によ」

「そんで慰めてくれよ。その体でよ」


 クズ達はサラとアリスをいやらしい目で見ながら「ぐへへ」と下品に笑う。

 サラ達は彼らを避けて宿屋に入ろうとするが、クズ達がそうはさせじと前を塞ぐ。


「おいおい、ちょ待てよ!俺らの話聞いてただろ?俺らがかわいそうだと思っただろ!?ギルドの野郎!自分勝手な理由で俺らをクビにしたんだぞ!!」

「そんなかわいそうな俺達にここの宿屋もよお、泊らせねえって言うんだぜ!?」

「ぐふ、金を払えば泊まれるだろう」

「そんな金ねーんだよクズ!」

「ぐふ?クズはお前らだぞ」

「お金がなければ冒険者とか関係なく誰も泊まれません。常識です」

「ですねっ」


 しかし、クズに一般常識はなく、クズの常識で反論する。


「ざけんな!」

「常識っていうならな!同情してタダで泊まらせるのが常識だろうが!」

「好きなだけな!」


 クズ達はこの宿屋にタダでの宿泊を断られて逆ギレしてやって来る客に嫌がらせをして追い払っているようだった。

 店の奥から困惑した表情をした店員の姿がちらりと見えた。

 ヴィヴィが呆れた顔で(と言っても顔は仮面で見えないが)言った。


「ぐふ、そんな常識はない」

「お金を稼ぎなさい」

「お前らバカだろ!ギルドを追放されて依頼を受けられねえって言ってんだろうが!」

「「だな!!」」


 ヴィヴィが再び呆れた顔で(と言ってもやっぱり顔は仮面で見えないが)言った。


「ぐふ、バカはお前らだ。冒険者でなくなったのに何故ギルドで依頼が受けられると思うのだ」

「真面目に他の職を探しなさい」


 ヴィヴィ、サラの正論にクズ達は逆ギレた。


「ざけんな!」

「元冒険者も冒険者には違いねえだろうが!!」

「ぐふ、違うわクズ」

「違いますねクズ」

「ですねっ、クズっ」

「「「ざけんなっー!!」」」


 クズは叫んだ後、デカい態度でバカなことを言って来た。


「じゃあ、お前ら教えてくれよ!ギルドの依頼より楽でおいしい仕事があるんならな!!」

「「だなーっ!!!」」


 サラ達は彼らの言う楽でおいしい仕事とやらが思い浮かばなかった。

 しかし、クズがそう思う依頼、と限定するならば内容に関係なく他のパーティから報酬を奪うことができる依頼のことだろうと想像はつく。

 何故か勝ち誇った顔をしているクズ達を見てサラはため息をついた。


「だめだこりゃ」

「ですねっ」


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