647話 親友達の出迎え その3
やっと解放されたと思ったのも束の間、新たなクズ冒険者達がリサヴィのもとに駆け寄ってきた。
彼らは行手を塞がずにリサヴィの横を並んで歩く。
腕を組んでキメ顔をしながらである。(流石に歩きながら仁王立ちは無理だった)
更にリサヴィに正面を向けているので横歩きだった。
その姿はとても滑稽であった。
本人達はそのことに気づいていないようだが。
サラ達がウンザリした顔をするが彼らクズが人の迷惑など考えるわけがない。
クズ冒険者達はリサヴィから話しかけてくるのを待っていた。
マトモな冒険者達がやって来た時の言い訳として「リサヴィから話しかけてきたからそれに応えてやったんだ。俺達から声をかけたんじゃないぞ」というスタンスをとるつもりでいたのだ。
これほど目を引く奇行をしておいてそんな言い訳が通じると本気で信じているクズ冒険者達であった!
しかし、いつまで経ってもリサヴィから話しかけて来ないので我慢できなくなり、結局は自分達から話しかけた。
「おいおい、久しぶりだからってつれねえなあ」
「でもよ、流石に親友にその態度はねえんじゃねえか」
「「「「……」」」」
サラ達は彼らに見覚えはない。
もしかしたらこれまでに出会ったクズ達の中に彼らがいたのかもしれない。
だが、その数はあまりに多くとても覚えきれるものではない。
それも皆倣ったかのように同じ行動をとるとなれば尚更である。
ただ、はっきり言えるは彼らが親友と呼べる存在では決してないということだ。
しかし、彼らはリサヴィに親友になりきって図々しいことを言ってきた。
「聞いたぜ。ザブワックを倒したんだろう?プリミティブ見せてくれよ」
そう言ってクズリーダーがサラに手を差し出してくるが当然サラは無視した。
「安心しろって。ちゃんと返すからよ」
クズリーダーはそう言ったものの、クズ盗賊がなんかウォーミングアップをし始めた。
またも返事がないとクズリーダーはわざとらしくため息をついて手を引っ込め、クズ盗賊もウォーミングアップをやめた。
もちろん、それで終わらない。
「でもよ、俺らの取り分はちゃんと後でもらうぞ」
何を言ってるかよくわからないが誰も聞き返すことはなかった。
クズがよくわからないことを言うのはいつものことだからだ。
魔術士ギルドの男Aはサラ達に前もってクズとは喋らないようにと注意されていたが、クズ達の愚行に何度も口が開きそうになり必死に唇を噛んで我慢しなければならなかった。
クズ冒険者達は無視され続けて怒り出した。
「てめえらいい加減にしろよ!こっちが下手に出てりゃ……」
サラが顔を覗き込んで来たクズリーダーをひと睨みすると自分の立場を思い出したらしく慌てて顔を引っ込めて「へへっ」と卑屈な笑みを浮かべた。
それに他のクズメンバーも倣って「へへっ」と卑屈な笑みを浮かべた。
そこへマトモな冒険者達がやってきた。
サラがクズ冒険者達に顔を向けもせず、しっしっと手を振り追い払う仕草をするのを見て急いでクズ冒険者達を引き離しにかかる。
必死に抵抗するクズ冒険者達。
「ざけんな!俺らはC!ラーンク!冒険者だぞ!」
「それがどうした!俺らもCランクだ!」
「ざけんな!俺らはリサヴィの大親友だぞ!!」
「おう!」とクズメンバーが一斉に腕を振り上げる。
その顔はなんか誇らしげだった。
そんな彼らに冷めた声が飛ぶ。
「アホか」
「誰だ!?俺らのことをアホ呼ばわりしたのは!?」
「うるさい。いいからリサヴィから離れろクズ」
「「「ざけんな!」」」
しかし、所詮は他勢に無勢。
クズ冒険者達はリサヴィから引き離された。
だが、簡単に諦めたりはしない。
「おいリサヴィ!こっち見てくれ!」
もし、彼らクズ冒険者達のほうを誰か一人でも向いたならその行動だけで彼らはリサヴィを大親友だと言い張るつもりだった。
しかし、相手はクズ専門家のリサヴィである!
クズの意図を読んで誰も見向きもしなかった。
それでもクズ達は諦めが悪かった。
「リサヴィ!あとで俺らの取り分取りに行くからな!!ちゃんと用意しとけよ!!」
「「「だな!!」」」
しかし、その後、彼らがリサヴィのもとにやってくる事はなかった。




