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643話 悩める神官

 ところで、西側のアズズ街道警備を行っている四組のパーティの中にジュアス教団の神官が一人いた。

 戦いにおいて神官の回復魔法があるかどうかでは戦術から異なって来る。

 魔術士の魔法にも回復魔法はあるが呪文を詠唱する必要があるため即効性に欠け、その効果も神官の回復魔法に劣る。

 神官が使用する神聖魔法にも呪文はあるものの必須ではなく、願うのみで即発動することが出来る。

 強敵との戦いではこのスピードの差が勝敗を分けることもあるのだ。

 彼は先のザブワック戦で自分がもっと強力な回復魔法を授かっていればと自分の無力さを悔いていた。

 とは言っても彼に問題があったとは言えない。

 魔術士は欲しい魔法を自分で選ぶことが出来るが(金がなくて買えないというのは除く)、神官は必ずしも望んだ魔法を神から授かるわけではないのだ。

 神官全てが魔法を授けられるわけではないので魔法を授かっていない者達からみたら贅沢な悩みだろう。

 彼が授かった魔法だが、支援魔法に偏っていた。

 回復魔法で授かっていたのは初級魔法のヒールのみだったのだ。

 そのため重傷を負った仲間の傷を治すことが出来ず、ただ見守ることしか出来なかった。

 サラとアリスが自分では治すことの出来なかった、自分が授かっていない上級の回復魔法を使うのを見て、仲間が回復したことに安堵すると共に自分の不甲斐無さを再び思い知らされたのだった。


(戦闘経験や冒険者としての経験はサラやアリスより多く積んでいるはずだ。だが、彼女達の実力は俺の遥か上のようだ)


 自分が二人に劣っていると認めるのは屈辱だったが、それ以上に仲間をこれ以上危険に晒すわけにはいかないという思いの方が強かった。

 そこで彼はナナルの弟子であるサラならばナナルから望んだ魔法を授かる方法を聞いているかもしれないと思い相談することにした。


「なあ、サラ。聞きたいことがあるんだが」

「はい?」

「俺はどうしたらハイヒールを授かることができると思う?ナナル様から何か魔法を授かるためのアドバイスを聞いていないか?」


 サラは神官の真剣な表情を見て姿勢を正しその目を見ながら言った。


「すみませんが私はわかりません。ナナル様もどんな魔法を授かるかは神様次第だとおっしゃっていました」

「そうか……」


 神官が目に見えて落ち込むのがわかる。

 しかし、サラの話はそこで終わりではなかった。


「もしかしたらアリスのほうが参考になるかもしれません。アリスは旅してる間いくつもの魔法を授かっていて希望に近い魔法を授かっているようでした」

「なに!?」

「はいっ?」


 名前を呼ばれたアリスがサラに顔を向ける。

 神官がアリスのもとに駆け寄った。


「アリス!お前がいくつも魔法を授かっているのというのは本当か!?それも希望したもに近い!」

「はいっそうですねっ」

「その中にハイヒールもあるのか!?」

「はいっ、ハイヒールもそうですねっ。サラさんが使えるのでわたしも欲しいなあって思ってたら授かりましたっ」


 アリスの言葉を聞いて神官の顔に希望が宿る。


「どうやったら望んだ魔法を授かることができるか教えてくれ!」

「えっとっ、欲しいと思っただけですけどっ」

「それなら俺だっていつも思ってる!他に何かないのか!?何でもいい!思い当たることがあったら言ってくれ!俺はどうしてもハイヒールを授かりたいんだ!」

「そうですねっ」


 アリスは考えている途中でリオと目が合った。


「ん?」

「あっ、そうですっ」

「何か思いついたのか!?」

「リオさんですっ」

「……は?」


 神官が間の抜けた返事をした。

 アリスは気にせず頬を赤ながら続ける。


「わたしはっ、リオさんの役に立ちたいってっリオさんのことを思っていたらっ魔法を授かりましたっ。って、きゃっ、恥ずかしいですっ」


 そのやり取りをそっと見守っていた彼の仲間達が口をポカーンと開けたまま固まった。


「そうなんだ」


 しん、となった中でリオの感情のこもっていない相槌が聞こえた。



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