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64話 Eランクアップ報告

 リオ達は以前、拠点にしていた街より更に先の街に活動拠点を移した。

 言うまでもなくストーカー対策だ。

 ストーカー、カリスの言う事を全く信用していなかったのだ。

 流石にヴェインから徒歩で三日、往復で六日もかかるこの街までカリスが追ってくる事はなかった。

 もしかしたら本当に約束を守ったのかもしれないが、確かめる術はない。

 ともかく、サラにやっと心の安らぎが訪れたのだった。



 リサヴィはコツコツ依頼をこなしていった。

 そしてついにその日がきた。

 リサヴィがギルドのカウンターで依頼完了報告を行うと、

 

「おめでとうございます!これでお二人はEランクへ昇格しましたっ!」

 

 と受付嬢がヴェインの冒険者ギルドの受付嬢とは異なり心からの笑顔で祝福した。


「ありがとうございます」

「ありがとう」


 リオは返却された冒険者カードに表示されているランクがEとなっているのを確認し、いつもあまり変化しない表情が気持ち緩んだように見えた。


「ぐふ。ベルフィ達に報告してはどうだ?」

「そうだね」


 サラは「余計な事を!言わなきゃリオは気づかなかったのにっ!」と心の中でヴィヴィに叫びながら嫌々リオに確認をとる。


「ではヴェインへ戻りますか?」

「うん」


 サラは小さくため息をついた。

 ヴェインに戻ったらまたストーカーに付き纏われる日々が始まるかと思うと、このままずっと三人(ヴィヴィは別にいらないが)で旅をしたい気分だった。

 実際、何度か「このままこのパーティで活動しませんか?」と口に出かかったが、それでは教団の依頼を受けているという話が疑われる(リオではなくヴィヴィに)ので言い出せなかった。



 リサヴィはヴェインに到着するとその足でベルフィ達の家に向かった。

 彼らはちょうど自宅にいた。


「ランク上がったよ、ベルフィ」

「よくやった」

「意外に早かったんじゃないのか?」

「ヴィヴィが協力してくれましたので」

「協力?」

「僕達に依頼ポイントを譲ってくれたんだ」

「ほう」

「あんた変わってるねっ」

「ぐふ。私も早く上の依頼を受けたいのでな」


 ヴィヴィの言葉を完全に信じたわけではなかったが、理由の一つではあると思われたのでそれ以上問う者はいなかった。



 ナックが興味深々という顔でリオに問いかける。


「俺達は昨日帰って来たばっかりなんだ。俺達と離れてた間になんか面白い事あったか?」

「面白い事?」

「ああ、お前に聞いても無理か」

「ぐふ。サラがモテモテだったな」

「ヴィヴィ!何をいきなり!」

「ちっ」


 ローズが面白くなさそうに舌打ちをする。


「どういう事だ!?」


 カリスがサラに詰め寄る。


「大した事ではありません。ヴィヴィが大袈裟に言ってるだけです」


 そこで空気を読まないことには定評のあるリオが「ああ、」と言って口を挟む。

 

「そういえば、サラを仲間にしたい為に僕達が依頼受けるのを邪魔するパーティがいたね」

「何?」

「リオ!カリス、その件はとっくの昔に済みました」

「そうなんだ」

「なんであなたが頷くんですか!」


 サラは心の中で「もう黙ってて!」と叫んでいた。

 

「まあ、サラちゃん美人だからなぁ」


 ナックが他人事のように言うのを見てカリスがずっと気になっていた事を尋ねる。


「ナック」

「ん?」

「お前にしては珍しくサラを口説かないな」

「言ってなかったか?俺はパーティメンバーは口説かないと誓ったんだよ」


 ナックは遠い目をして言う。

 間違いなく過去に酷い目にあったんだろう、と皆が思った。


「そいつはパーティメンバーなんかじゃないよっ」

「それにさ、俺の鋭いカンが告げているんだ。サラちゃんと“関係”持つと後々面倒になるってな」

「面倒ってなんだ?」

「長年の経験から言ってサラのような性格の女は色々しつこいんだぜ。例えばだ、浮気なんかしてみろ。絶対に許さないぞ」


「あんた最低だよっ!」

「浮気すんなよ」

「それは普通だろ」


 パーティみんなから、珍しくベルフィからも非難されるナック。

 しつこい、と言われたサラはにっこり笑顔でナックを見いていたが目は笑っていなかった。


「な、何言ってんだ!世界中の美女が俺が来るのを待ってるんだぞ!一人だけを愛するなんてそんな酷いことできないだろ!」


 残念ながらナックの言う事に共感出来る者はいなかった。


「そうなんだ」


 ただ一人を除いて。


「やっぱりお前だけだな!リオ!お前は俺の事をわかってくれると信じてたぜ!」

「いつものように適当に相槌打ってるだけだよっ」


 ローズの言葉に皆が頷いた。



 カリスがサラにだけ聞こえるようにひそひそと話しかけてきた。


(サラ、一体どこにいたんだ?あれから探させたんだが見つからなかったんだぞ)


 カリスのまるでサラが悪いかのような責める口振りにサラは腹が立った。

 それ以上に約束を破ってまたストーカー行為をしていた事が許せなかった。

 カリスはベルフィ達に内緒にしたいようだったがサラはその事に気づかぬ振りをしてみんなに聞こえるように大声で驚く。


「え!?もう私達の依頼の邪魔はしないと約束したのにその約束を破ってまだ私達を追い回そうとしていたのですか!?というか探させたって誰にです!?」

「わーっ!!しっー!しっー!」


 サラの声の大きさにカリスが慌てる。

 皆の注目を浴び、カリスは「何でもない!」と必死に誤魔化す。

 流石のカリスもそれ以降は聞いて来なかった。

 サラはため息をつく。


(移動して大正解だったわ。本当にカリスの言葉を信じなくてよかったわ。にしても人を雇ってまで探していたなんて……いえ、今思えばこれまでも人を使ってたんでしょうね。でなければあそこまで短時間で私達を探しだせるはずないわ)



 カリスは話を誤魔化した後、何故かサラがポカをしたかのように「やれやれ」というような顔をサラに向けて言った。


「ともあれ、やっと一緒に依頼を受けられるな!」

「……そうですね」


 カリスの満面の笑みとは対照的にサラは必死に怒りを表に出さないように堪えて答えた。

 サラが爆発しそうな様子に全く気づかず、カリスはサラのパーティ入りについてベルフィに確認する。


「ベルフィ、明日サラをパーティ登録しにいくだろ?」

「あたいはコイツら入れるの反対だよっ!」


 ローズの反応はサラ達の予想通りであった。


「サラちゃん達でパーティ組んでんだろ。とりあえずはこのままで一緒に行動するってのでいいじゃないか?」

「それじゃいつまで経っても連携とれないだろ!」


 ナックの提案にこれまた予想通りカリスが反対する。


「コイツら入れたら確実にパーティランクが下がるよっ!絶対嫌っ!どうすんだいベルフィ!!」


 皆の視線がベルフィに集まる。


「ナックの言う通りしばらくはこのままで行く」


 サラはほっと胸を撫で下ろした。


「ベルフィ!」


 カリスが抗議の声を上げる。


「連携なら依頼を複数パーティが受けられるものを選んでやればいい。それならローズも反対しないな?」

「……まあ、依頼ランクがDになるのは気に入らないけどねっ」

「よし。リオ達もいいな?」

「わかった」

「はい」

「ぐふ」


 皆が納得する中、カリスだけはいつまでも不満顔だった。



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