634話 ザブワック その7
ザブワックが結界を殴りつける。
壊れる様子はないが、そのまま攻撃させておけばいずれ壊れるかもしれない。
女リーダーが皆に声をかける。
「トドメを刺すわよ!油断しないで!!」
「「「ええ!!」」」
ザブワックに興味を失ったリオは女魔術士の護衛を女戦士と代わった。
カレンのメンバーがザブワックに総攻撃を仕掛ける。
ザブワックの動きは先程までと異なり単調でスピードも段違いに落ちているし、シールドも消失しており、今まで効かなかったのが嘘のようにダメージを与えていく。
「あともう少しよ!」
女盗賊の放った魔法の付加された矢がもう片方の目を射抜いた。
それでもまだ倒れないが、視力を完全に失って攻撃は更に雑になる。
「ああ!しぶといわね!」
「今度こそライニングプラズマで仕留めてやるわ!!」
女魔術士が再度ライトニングプラズマの詠唱を始める。
そして放った。
シールドのなくなったザブワックの体をいくつもの雷球が貫き、ザブワックの体がゆっくりと倒れた。
そして体中から煙が吹き出す。
その様子を見て女盗賊が叫ぶ。
「なんかヤバそう!みんな離れて!!」
皆が警戒体制のまま、ザブワックの変化を見守る。
ザブワックの体が崩れていき、やがて跡形もなく消え去った。
残ったのはプリミティブのみであった。
喜びあっているカレンのメンバーにヴィヴィが冷めた声をかける。
「ぐふ、まだ戦いは終わっていないのだがな」
そう言いつつ結界再起動前に侵入していたガルザヘッサをリムーバルバインダーで吹き飛ばす。
「わ、わかってるわよ!!」
女リーダーがメンバーにハッパをかける。
「最後まで気を抜かないで!」
「ぐふ、お前が言うな」
女リーダーはヴィヴィの声を聞き流した。
ザブワックが倒されたことでほとんどのガルザヘッサは戦意を喪失して逃走を図った。
本来であれば樹海へ逃げ込むところであるが、結界を再起動したことでそれが出来なくなり(実際には結界同士の隙間を通れる個体もいたがそれに気づかない)、フェラン側とオッフル側に別れて逃走する。
リサヴィとカレンはフェラン側へ逃げるものを優先して倒した。
オッフル側に逃げたものは戻る時に倒せばいいし、街道から出たとしてもその先には傭兵団が待機しているからだ。
結局、フェラン側への逃走は阻止したが、オッフル側へは何体か逃してしまった。
倒したガルザヘッサからプリミティブを抜き取り、残った死体は結界同士の隙間から樹海へ放り投げた。
キャンプスペースはすぐ先だが、流石に疲れが溜まっていたのでこの場で少し休憩することにした。
とはいえ、血溜まりや肉片が残っていて気分がよくないので、サラとアリスがリフレッシュを周辺にかけて綺麗にした。
周囲から戦闘の跡が消えて皆ほっとし各々その場に腰を下ろす。
ちなみにその時にはリムーバルバインダーに隠れていた魔術士ギルドの者達も呼び寄せていた。
ザブワックのプリミティブだが討伐依頼を受け、トドメを刺したカレンが預かることになった。
そのプリミティブを手に取りながら女リーダーが言った。
「流石Aランクね。なかなか歯応えもあったし」
その言葉に女盗賊が突っ込む。
「いやいや。何余裕ある顔して言ってるのよ。全滅も十分にあったわよ」
「わ、わかってるわよ!」
「でもさ、Aランクの魔物ってここまで強かったっけ?こんなに強いなんて聞いてないんだけど」
「てか、体が溶けて消えたんだけど……」
「流石伝説の魔物ね」
「いやいや!伝説の魔物でも体溶けて消えないでしょう!これじゃまるで話に聞く魔族よ魔族!」
「何を言って……」
「その通りです」
「「「「え!?」」」」
会話に割り込んだサラの言葉を聞き、カレンのメンバーをはじめ、話を聞いていた魔術士ギルドの者達が驚いた顔した。




