633話 ザブワック その6
リオの一撃はザブワックに大したダメージを与えられなかった。
「む?シールド最大できたか」
ザブワックはリオ達を魔の波動で動きを止めて倒すつもりであった。
効果はあったが肝心のリオの動きを止めることができなかった。
そのためリオの推測通りシールド強度を最大にして魔力消費を考えず短期決戦に切り替えたのだった。
リオが斬り裂いた右腕の傷は塞がっていたが、回復力は魔族であった金色のガルザヘッサほどではなく完治していない。
そんなザブワックにリオが見下した目を向ける。
「ただ長く生きてただけか」
ザブワックはバカにされたことに気づき怒りの表情で吠えながらリオに殴りかかるが、リオは容易にかわす。
そこへ金縛りにあって出遅れた女リーダーが戦いに加わる。
女盗賊も魔法が付加された矢を放つが、リオの時と同様に大したダメージは与えられない。
「ちょっとさっきより硬くなってない!?」
「いつまでも続かない。そのうち魔力切れを起こす」
「それなら……って、こっちの体力も無限じゃないのよ!」
そこへ女戦士の叫びが飛ぶ。
「リオ!いつまで待たせるんだって怒ってるわよ!!」
「ったく、うるさい奴らだな」
リオが短剣を放ったがザブワックのシールドに弾かれた。
「後退しろ。立て直す」
いつのまにか戦いの指揮をリオが執っていた。
それに疑問を持つ者はおらず、リオが下がるのを見て女リーダー、女盗賊、そしてアリスが従う。
だが、それはザブワックを油断させるための罠だった。
ザブワックはリオ達が離れるのを見てシールド強度を落とした。
その直後、ザブワックの視界の外から飛んできた短剣が顔面を襲う。
ザブワックは慌ててシールドを張り、短剣はそのシールドに阻まれた。
かと思われた瞬間、短剣から刃が射出された。
その刃は咄嗟に張ったため強度が不十分だったシールドを貫通してザブワックの右目を貫いた。
絶叫を上げるザブワック。
その短剣はリオが後退する際に放ったものでリムーバルダガーだった。
魔道具であることをザブワックに気づかせないために弾かれた後もコントロールせず、自然に落ちたまま放置しザブワックがシールドを弱めるのを待っていたのだ。
女魔術士がザブワックの目をリムーバルダガーの刃が貫いた瞬間に叫んだ。
「ライトニングボルト!」
女魔術士の手から雷撃が放たれ、ザブワックの目に刺さったリムーバルダガーの刃に命中する。
そのままライトニングボルトが脳を直撃した。
ザブワックから一際大きな絶叫がほと走り、動きを止めた。
女魔術士は手応えを感じてガッツポーズする。
そのまま地に伏すと思われたザブワックだがまだ倒れない。
「ええ!?嘘でしょ!?」
女魔術士が驚きの表情でザブワックを見つめる。
ザブワックの体はライトニングボルトを受けて一度動きを止めたものの、フラつきながら樹海へ向かう。
女リーダーがその意図を読んで叫ぶ。
「まずいわ!逃げる気よ!」
だが、樹海へ入ろうとしたまさにその瞬間、狙ったかのように結界が起動してザブワックの行く手を封じた。
いや、実際タイミングを図っていたのだ。
サラの指示で魔術士ギルドの男Aが結界を作動させたのだった。
 




