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616話 勇者と対極の存在

 リオ達がアズズ街道に入ってしばらくして傭兵団を雇った商隊の隊長がやって来るのに副団長は気づいた。

 しゃがみ込んでぶつぶつ呟いている団長とだらしない格好で眠っている傭兵の姿を見て彼は目を細める。


「団長、それで真面目に依頼をしているのか?」


 団長が無反応なので隊長の表情が険しくなる。

 副団長が慌てて間に割って入る。


「す、すまねえ。ちょっとトラブルがあってな。だが、二人の分は俺らがきちっとこなすから大目に見てくれ!」

「何があったのだ?」


(やっぱり聞くよな)


 副団長はちょっと迷ったが正直に話すことにした。


「じ、実は魔物退治にやって来たリサヴィと揉めて。って、リサヴィは知ってるよな?」

「ああ。いろいろ噂になってるあのナナルの弟子のサラがいるパーティだろ」

「そう、そのリサヴィだ」

「それで?」

「その、やって来た時にリサヴィだと気づかずケンカを売って返り討ちにあったんだ。で、二人はああなった」


 隊長が再び団長と眠っている傭兵に目をやってから尋ねる。


「治らないのか?」

「わからない」

「サラの力でも……いや、ケンカを売って来た相手の治療はしないか」

「いや、サラに治療してもらってあれだ」

「何?それならもうダメではないのか?」


 隊長がそう思うのも無理はない。

 サラは上級魔法である再生魔法を使える強力な神官として知られているのだ。


「いや、それはなんとも」

「そうなのか?」

「その、リオが、冷笑する狂気が怒り狂ってて……」

「治療を認めなかったか」

「ああ、そんな感じだ」


 副団長の言葉を聞いて隊長は考え込む。


「お前達が手も足も出なかったということはリサヴィは噂通りの力を持っているということか」

「噂以上だ。特にリオは化け物だ!あいつ一人に俺らは手も足も出なかった。それも明らかに手を抜いてだ」

「……そこまでなのか」

「ああ、そうだ」

「そうか。だが、考えてみればそれも当然かもな。ナナルの弟子のサラともう一人はアリスだったか。二人の神官がリオが勇者になると思っているのだろう。それだけの力があってもおかしくない」

「勇者……」


 隊長の言葉に副団長は違和感を抱く。


(リオは勇者なのか?勇者になるのか?)


「なんだ?」

「あ、いや、何でもない」

「ともかく、それなら俺の親友の敵討ちをしてくれそうだな」

「あ、ああ。そうだな」


「本気で戦ってくれたらな」と副団長は心の中で付け加えた。



 隊長が去った後も副団長の心には疑問が残り続けていた。

 リオが勇者になるかについてである。


(俺は勇者は正義、光を纏ったような存在だと思っていた。だが、あいつは、リオは違う)

(リオは俺が考えていた勇者から余りにもかけ離れている。アリスはリオを信じきっているようだったが、サラはどうだ?リオに対する態度を見る限りとてもそうは思えなかった。リオは勇者というより別の何かだ。そう、あの冷笑する姿はまるで勇者とは対極の……)


 副団長は心の中で考えていただけで言葉に出していたわけでない。

 だが、その先を心の中で言葉にしようとしただけで得体の知れない恐怖に襲われた。

 副団長はそれ以上、リオの事を考えるのをやめた。



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