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607話 混乱のオッフルギルド

 リサヴィのいる輸送隊はオッフルの街からやってきた商隊とキャンプスペースで会い、現在、アズズ街道は魔物が溢れて封鎖されていることを知った。

 その魔物がどんなものかまでは彼らは知らなかった。

 隊長はすぐさまその事を護衛や乗客に説明した。

 そしてその後、護衛とリサヴィだけで話し合いを行う。


「……というわけで私の考えていた予想を遥かに超える最悪な状況の時にオッフルに着きそうです」

「流石隊長さんだな。運がいいのか悪いのか」

「……あの、ヴェイグさん、何が流石なんですか?それに運が悪いとしか言いようがないと思うのですが」

「気にするな」

「……」


 話が脱線しそうになったのでサラが元に戻す。

 

「私達を呼んだということはアズズ街道の魔物退治に協力して欲しいということですね?」

「はい。先程封鎖と言いましたが強制ではありません。どうしても行きたいという者達は通しているそうです。ただ、今のところ無事フェランにたどり着いた者はいないようですが」

「その魔物達はっ樹海から出て来てないのですかっ?」

「はい、今のところ樹海から出て来てはいないそうです。それだけが救いですね」

「ぐふ、フェランの方はどうなのだ?」

「オッフルと同じ状況のようで魔物は樹海から出て来てはいないそうですが、向こうでも犠牲者が出ているそうでオッフルギルドの大失態に激怒しているそうです」

「ま、そりゃそうだろうな」

「また冒険者の信用が下がりますね。一般人にはクズ冒険者も冒険者には変わりませんから」


 呼んでもいないのに話し合いに参加していた自称劇作家の双璧の男がメモをとりながら呟いた。

「なんでいるの?」という視線を一身に浴びながらも彼は気にせず続ける。


「もしかしたらクズ冒険者達が冒険者ギルドを滅ぼすかもしれませんね」


 誰も自称劇作家の双璧の男の言葉を否定できなかった。

 


 リサヴィを乗せた輸送隊がオッフルの街に到着した。

 駅はフェランへの出発待ちの商隊で溢れ返り、完全にキャパを超えていた。

 その様子を馬車の窓から眺めていたアリスが言った。


「すごいいっぱいいますよっ」

「やはりまだ解決していないようですね」


 輸送隊は駅に停める場所がなく、臨時で設けられた駐車場所へ移動した。

 そこも既に七割ほど埋まっており、今後の事を相談する声があちこちで聞こえる。

 その中にハイト山脈経由でフェランへ向かうか検討している者達がいた。

 アズズ街道が通れない以上、フェランに向かうにはそれしかない。

 正確には船で行く方法もあるが魔物の脅威が他と比べものにならないのでその選択をする者はいないだろう。

 ただ、ハイト山脈の山道は険しく大型の馬車は通れないし、スピードも出せない。

 魔物と遭遇した場合、逃げる事はまず不可能で撃退することを前提に考えなればならない。

 そのため、ハイト山脈経由で向かう場合は強力な護衛が必須である。

 彼らの結論はなかなか出ず、どうすれば一番被害を最小限に抑えられるかで頭を悩ましていた。

 話し声の中には冒険者ギルドへの非難の声も少なくない。


「冒険者ギルドの無能どもが!」

「信頼のおけないクズ冒険者なんかに警備を任せやがってよ!」

「いや、冒険者がやらかしたのは今回だけじゃないぞ!」

「もう冒険者自体がダメなんじゃないか!?」


 別の商人が冒険者を擁護する。


「待て待て。それは言い過ぎだ。俺の知り合いの冒険者達は信頼出来るいい奴らだぞ」

「ああ、冒険者全員がダメなわけじゃねえ」

「ならやっぱりギルドだな!そんなクズを冒険者にしやがって!」

「くそっ!もう納期が間に合わねえ!俺はギルドに損害請求するぞ!」

「俺らもだ!」


 実際、冒険者ギルドに街道警備依頼を出していた大商会の一つであるサイゼン商会は今回の件を冒険者ギルドの過失だとして莫大な損害賠償請求をしており、他の大商会も追従する動きを見せていた。

 商人達の冷たい目が駐車場にいるギルド職員達に向けられる。

 ギルド職員達は彼らの厳しい目に耐えながら手にした看板を掲げていた。

 それらは全て同じ事が書かれていた。


『リサヴィの皆さん!Bランク以上の冒険者の皆さん!至急冒険者ギルドへお越し下さい!!』


 と。

 それを見たヴィヴィが言った。


「ぐふ、名指しか」


 アリスが首を傾げる。


「なんでっわたし達がっ来ること知ってるんですかねっ?」

「マルコでの騒ぎが原因でしょうね」


 サラがため息をついて言った。


「ほんとっクズは碌なことしないですねっ」


 ギルド職員の一人がリオ達の姿を見て「あっ」と叫んで指を指す。


「……見つかってしまったみたいですね」


 リオ達が名乗るまでもなくギルド職員達が集まってきた。

 その数は半端ない。

 大半の職員がここに来ているのではないかと思われるほどの数であった。


(ギルドはちゃんと機能しているのかしら?)


 サラは人ごとながらそんな事を考えていると一人のギルド職員が代表してサラに話しかけて来た。


「リサヴィの皆さんですよね!?」

「はあ、そうですが」


 サラの言葉にギルド職員達が歓声を上げる。

 その声の大きさにこの場にいた者達が何事かと目を向ける。

 ギルド職員は周りのことを気にせず話を続ける。


「すみませんが、至急ギルドへおいで頂けますか!?」

「アズズ街道の件ですか?」

「はい!もうあなた方だけが頼りなんです!」


 サラがリオに言った。


「リオ、行きましょう。この件が解決しないとフェランには行けそうにありません」

「わかった」

「では案内して下さい」

「ありがとうございます!」


 サラ達がギルド職員の後につい行こうとすると止める者がいた。

 輸送隊の隊長である。


「ちょっと待ってください!困ります!」


 ギルド職員が隊長を見た。


「あなたがこの輸送隊の隊長ですか?」

「そうです。私はリサヴィの皆さんと個人的に契約を結んでいるんです!」

「そうでしたか。ですが、そこをなんとかお願いします!これはあなたを始め他の商人、いえ、アズズ街道を通る者達全員に関わることなのです!」


 ギルド職員の必死の表情に隊長はあっさり負けた。


「……わかりました」

「ありがとうございます!」

「ですが、私も同行させていただきます」

「わかりました」


 そこへ更に参加の声が上がった。


「じゃあ俺も」


 ヴェイグである。


「ええ!?あ、じゃ、じゃああたいもっ」


 とイーダも参加を表明する。

 時間が惜しいからだろうギルド職員は参加を認めた。

 隊長はあとのことを部下に任せるとギルド職員の後について行く。

 更にもう一人サラ達の後について来るのにギルド職員が気づいた。


「あなたは誰ですか?」


 それに答えたのは隊長だった。


「あなたはお客様ですよね?」

「では関係ないですね」

「いえ、私はただの客ではありません!あの劇作家の双璧と呼ばれる……」


 自称劇作家の双璧の男はギルド職員に止められた。


 


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