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606話 後輩思いのクズ その2

 クズリーダーが再びサラにキメ顔をしながら言った。


「善は急げって言うし、飯食い終わったら速攻でギルドに行くぞ!」

「「だな!!」」


 しかし、サラ達は急かす彼らを無視してゆっくり食事を続ける。

 その行動にクズリーダーがイラつく。


「おいっ、俺らが待ってんだぞ!さっさと食い終われよ!」

「よく人を待たせてのんびり食ってられるな!」

「お前ら常識が欠けてんぞ!!」


「お前らが常識言うな」とサラ達が思っていると自称劇作家の双璧の男も同じ事を思ったらしく感情を抑えきれず再び大声で叫んだ。


「くーーーーーーーーーーっず!!」

「今なんと言った!?」

「俺らの事をクズと言わなかったか!?」


 今度はクズ冒険者達もしっかり聞き取れたようだった。

 しかし、自称劇作家の双璧の男は済ました顔で否定する。


「いえ、“クール”と言ったのです。すみません、また感極まって叫んでしまいました」

「わはは!まあ俺らはクールだからな!」

「「だな!」」

「……チョロいですねこのクズ達」

「なんか言ったか?」

「いえ、私のことはお構いなく。リサヴィの皆さんとお話を続けてください」

「そうだな」


 サラは面倒くさそうに言った。


「私達は行きません」


 サラの言葉を聞き、クズリーダーが見当違いの事を自信満々の顔で自身のこめかみを軽く突きながら言った。


「安心しろ。俺らを貶めた奴らの名前は全部覚えてるぜ!」

「私達は行きません」


 二度目の言葉は彼らの脳に伝わったようだ。

 何故か皆驚いた顔をする。


「何故だ!?」


 サラは彼らが驚いたことに驚きながら言った。


「何故だも何も私達はあなた達の事を知りません」

「おいおい、何言ってんだ。これだけ話したんだ。もう親友と言っても過言じゃあねえだろう」

「親友は助け合うもんだぜ!」

「だな!」


 ここで初めてヴィヴィが口を開く。


「ぐふ、過言だクズ」

「誰がクズだ!?棺桶持ちは黙って荷物運んでればいいんだ!」

「ぐふ」


 クズリーダーはヴィヴィを睨みつけたあとサラに向かって腕を組んで仁王立ちした。

 それに残りのメンバーも一斉に倣う。

 そしてキメ顔をしながらクズリーダーが言った。


「安心しろ。俺らは本当に後輩思いのいい奴だぜ!俺らが保証する!」

「「だな!」」

「よかったね」


 リオがどうでもいいように言った。

 実際にどうでもいいのだろう。

 クズリーダーはリオにバカにされたと思った。


「ざけん……」

「リーダー!」


 リオを怒鳴りつけようとしたクズリーダーをメンバーのクズ盗賊が慌てて止め、クズリーダーの耳元で囁く。

 

「そいつは怒らせるとやばいぜ」


 どうやらリオの二つ名、冷笑する狂気を知っていたようだ。


「ここに来るまでに何人もクズが始末されてる。怒らせると俺らもクズと勘違いされて殺られる可能性があるぞ」


 その声が聞こえていたヴィヴィがクズ盗賊の言葉を訂正する。


「ぐふ、勘違いではないぞ。お前らはクズだ。私が保証しよう」


 そう言ったヴィヴィの顔はなんか誇らしげだった。

 といっても仮面で顔は見えないが。


「黙れって言ってんだろうが!!棺桶持ち野郎が!!」


 クズリーダーは棺桶持ちごときにまでバカにされてたまるかとヴィヴィに殴りかかる。

 彼らの情報収集能力はお粗末でリオのことは調べていたようだが、ヴィヴィのことは全く調べていなかったようだ。

 次の瞬間、クズリーダーが「ぐへっ!?」と叫んで宙を舞う。

 あほ面晒してゆっくりくるくる回転しながら開けっぱなしだったドアを抜けて店の外まで飛んでいった。

 店の外では突然、人が飛んできたので通行人達が驚きの声を上げた。

 しかし、

 

「あっ、こいつクズだ」

「本当だ」

「よし、ほっとこう」


 彼は街の者達に認知されたクズだったらしくあほ面晒して気絶した彼を心配する者はいない。

 皆何事もなかったかのように素通りして行く。



 他のクズメンバーはクズリーダーがあっさりKOされたことに驚き怯えながらも武器に手を伸ばす。


「て、てめえ棺桶持……」

「ぐふ、お前達も空中散歩したいのか?」


 彼らは目の前をリムーバルバインダーがすっと通り過ぎるのを見て「ひっ」と悲鳴をあげて店から逃げていった。

 その際、あほ面晒して気絶していたクズリーダーの顔や腹を踏んづけた。

 気が動転して気づかなかったのかわざとかは不明である。

 その痛みでクズリーダーは「ぐああ!?」を喚きながら目を覚ます。

 走り去る仲間を見てすぐさま状況を理解し、慌てて立ち上がると踏まれた顔や腹を手で押さえながら仲間の後を追っていった。



 店内で今のやりとりを見ていた客から拍手が起こり、ヴィヴィが満更でもないという顔をしながら(と言っても顔は仮面で見えないが)手を上げて拍手に応えた。

 そんなヴィヴィを見てサラが呟いた。 


「……なにこれ」



 店内が落ち着きを取り戻してから自称劇作家の双璧の男が言った。


「いやあ、クズ冒険者もいろいろ考えるものですね。如何にして楽して報酬を得るかということだけですが」

「ですねっ」

「しかし、新米冒険者研修にまで目をつけてきましたか」

「ぐふ、確かに研修依頼は美味しい依頼かもしれないな」

「そうなんですかっ?」

「ぐふ、研修依頼は普通Cランクだ。新米冒険者の指導なら実戦相手の魔物はせいぜいEランク程度だろう。仮に自分達が相手にするとしても大した危険はないだろう」

「ああっ、確かにっ。私達が研修するといつももっとランクが高い魔物が出てきていましたから気づきませんでしたっ」

「ぐふ、サラがいるからな」

「おいこらっ!私は関係ないでしょう!……って、そこ!変なこと書かないように!」


 メモ帳にペンを走らせる自称劇作家の双璧の男をサラが注意した。

 彼は頷いて見せたものの本当にわかっているかはとても怪しかった。

 

「もしその新米冒険者もクズだったら丸儲けだね」

「!!」


 リオの言葉に皆が驚いた。

 自称劇作家の双璧の男が厳しい表情をする。

 

「……確かに研修生は無償、でなくても稼ぎの少ない新米冒険者ですから参加費は安いでしょう。その費用を差し引いても報酬がプラスになるのは間違いありません。何もせず報酬だけもらうことができますね」


 自称劇作家の双璧の男が「メモメモ」と口にしながらメモ帳にペンを走らせた。

 ところで、サラ達はリオの言葉を聞いて思ったことは彼とは異なっていた。

 

「あなた話を聞いていたの!?」


 である。

 リオに対して大変失礼であるが、そう思われても仕方がないほどリオは人の話を聞いていないのでどっちもどっちであった。


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