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603話 クズ冒険者達、アズズ樹海に消ゆ

 クズ冒険者達はアズズ街道に到着すると装備を返された。

 彼らは街道の入口でギャーギャー文句を言って最後の抵抗を試みるが傭兵団とギルド警備員達に脅され、仕方なくアズズ街道を進み始めた。

 しかし、五分ほど歩くと立ち止まり振り返った。


「今、奥から魔物の鳴き声が聞こえたぞ!」

「ちょっとお前ら様子見て来い!」

「戦専門のお前らの本領発揮だな!」

「急げよ!」


 この後に及んでもまだ自分達の立場を理解していないクズ冒険者達は上から目線で傭兵達にそう命令すると入口に戻り始めた。

 堂々とした態度で、である。

 そんなクズ冒険者達に向かって団長の指示のもと傭兵達が矢を放つ。

 その矢が彼らの足元に突き刺さり、彼らは驚き情けない格好で飛び退く。


「な、何しやがる!?」


 傭兵団の団長が冷めた目で言った。


「さっさと魔物を倒して来い。それがお前らの仕事だろう」

「「「「「「「「「「「ざけんなーっ!」」」」」」」」」」」」


 クズ冒険者達は事実を指摘されて何故かキレた。

 怒りの形相をして歩みを再開する。

 もちろん、アズズ街道の入口に向かってである。

 団長は彼らに見下した目を向けながら警告する。


「それ以上近づいたら殺す」

「「「「「「「「「「「ざけんなーっ!」」」」」」」」」」」」


 そう言ってクズ冒険者達は一斉に武器を手に取り傭兵達に向ける。

 本気ではない。

 ただのポーズだ。

 戦えば全滅するのは自分達だと理解していたが、プライドだけはBランク以上であるので弱みを見せまいと虚勢を張ったのだ。

 ただ、距離が離れているのに接近戦武器を構えた時点で相手に本気でないことはバレバレであった。


「やれるもんならやってみろ!俺らを殺したらギルドが黙ってねえぞ!大問題になっからな!!」


 その叫びの後に「だな!!」(クズ女冒険者は「だね!!」)の大合唱が起きる。

 何故か彼らの自己評価は非常に高くギルドが助けてくれると思っていた。

 彼らを傭兵団と共に連行してきたギルド警備員達は離れた場所で知らん顔をしていた。

 団長がため息をついて言った。


「お前ら全然自分達の立場を理解してねぇなぁ」

「なんだと!?」

「あんなあ、ギルドはなあ、お前らを見捨てたんだよ」

「ざけん……」

「いいから黙って聞け!クズども!!」

「「「「「「「「「「「「……」」」」」」」」」」」」

「アズズ街道が出来てから今まで魔物の襲撃で封鎖されたことなんて一度もなかったんだ。それをお前らクズの愚行で起きちまった。既に犠牲者も出ている」


 団長はそう言って表情を消してじっとクズ達を見つめる商隊の隊長の顔をチラリと見てから続ける。


「その者達の無念を晴らすためにも元凶であるお前らを生かしておけるわけねえだろう」


 すかさずクズ冒険者達が言い返す。


「ざけんな!俺らを殺しても死んだ奴らは生き返らねえんだぞ!」

「そんな死んだ奴らより生きてる俺らを大事にしろ!」


 彼らの叫びを聞き、商隊の隊長の頬がピクピク震える。

 商隊の隊長の怒りの炎に薪を焚べ続けるクズ冒険者達に向かって団長が続ける。


「それによ、そんなお前らクズを雇っちまったギルマスも責任を問われるのは間違いない。どうにかして今の地位を死守しようと必死なのさ。そのためにもお前らには死んでもらった方が都合がいいんだ」

「お前らの死は決定事項なんだよ」

「わかったかクズども」


 もちろん、クズ冒険者達はわからなかった。


「ざけんな!」

「自分の地位惜しさに俺らの命を犠牲にしようってのか!?なんて身勝手な野郎だ!!」


 今の状況を作り出した元凶が言っても全く説得力はなかった。

 団長はクズ冒険者達を呆れた顔で見ながら言った。


「お前らが言うな」


 今まで沈黙を保っていた商隊の隊長が小さな声で呟いた。


「……一人、見せしめにやれ」


 商隊の隊長の言葉を受けて団長が人差し指を空に向けると傭兵の一人が再び矢を放った。

 直後、クズ冒険者達をまとめるイケメンクズパーティのクズリーダーが「あへっ?」と変な声を出して倒れた。

 その頭には矢が突き刺さっていた。

 即死だった。


「「リーダー!?」」

「て、てめえ……」

「俺らはお前らが言うこと聞かなければ殺せと言われている」


 団長は誰の命令かは敢えて言わない。


「「「「「「「「「「「な……」」」」」」」」」」

「ギ、ギルドが黙って……」


 団長は最後まで言わせなかった。


「さあ選べ。俺らに殺されるか魔物に殺されるか、な」


 団長の言葉に副団長が笑いながら突っ込む。


「おいおい団長、本音ダダ漏れだぞ。そこは魔物に殺されるか、じゃなくてよ、魔物を殺すか、と言えよ」

「お?そんなこと言ってたか。悪い悪い。まあそういうことだ」


 商隊の隊長が口を開いた。


「おい」


 団長が商隊の隊長に顔を向けると不満そうな顔をしていた。


「ありゃ?殺しちゃまずかったか?今のはそういう意味だと思ったんだが」

「楽に殺しすぎだ。もっと苦しませて殺せ」


 隊長の言葉を聞き、団長が苦笑する。


「そいつはすまねぇ。しかしなあ、俺らは素早く殺す技術は磨いてるが、いたぶって殺すことには慣れてねーんだ。だが、依頼主の要望だ。次はそうするぜ。わかったな、お前ら!」


 傭兵達が「おうっ!」と答えた。


 その返事を聞き隊長は小さく頷いた。



 クズ冒険者達は自分達が生き残る道はアズズ街道を抜けるしかないとわかり、魔物と出くわさないことを祈りつつ奥へと進む。

 クズ冒険者達の姿が遠ざかり、その姿がだいぶ小さくなった頃変化が起きた。

 魔物が現れクズ冒険者達に襲いかかったのだ。

 その魔物は前回、商隊を襲った二本足の人型の魔物ザブワックではなかった。

 ガルザヘッサでリバース体も複数いた。

 数はほぼ互角だが、単体の攻撃力はガルザヘッサが勝り、クズ冒険者達を一方的に狩っていく。

 街道の入口へ、傭兵達に助けを求めようとするクズ冒険者もいたが、ガルザヘッサに背後から襲われてすぐに動かなくなった。



 クズ冒険者達から助けを求める声が聞こえたが傭兵団は動かなかった。

 彼らが殺され、あるいは生きたまま樹海の奥へ引き摺って行かれるのをじっと見ていた。

 依頼主である商隊の隊長の依頼に「クズどもを私の親友と同じように魔物に殺させろ!」というものが含まれていたからだ。

 それとは別に団長は個人的に冒険者が大嫌いだったのである。

 こうしてクズ冒険者は全員死んだ。

 まさに自業自得であった。

 ガルザヘッサはザブワックと同じくアズズ樹海から出る気がないのか、樹海へ姿を消した後、再び姿を現すことはなかった。



 団長が商隊の隊長に言った。


「これであんたの依頼は完了だな」

「ああ」

「なんならあんたの親友を殺した魔物の退治もしてやろうか?もちろん、別料金だがな」

「それは冒険者ギルドの仕事だ」


 隊長は吐き捨てるように言った。

 

「確かにな」

「だが、そうだな。依頼を追加したい」

「なんだ?」

「このまましばらくアズズ街道を監視して魔物が樹海から出てくるようなら退治してくれ。ただし、魔物が姿を見せても樹海から出ない限り何もする必要はない。それは冒険者ギルドの仕事だからな」

「いいぜ」


 商隊の隊長は団長と追加依頼の報酬についての話を済ますとオッフルの街へ戻っていった。


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