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597話 盗賊団VSリサヴィ派

 不正合格して冒険者となったことがバレた冒険者達はギルドで強制的に面談を受けさせられた。

 その結果、異常思考を改めさせるのは不可能と判断されて冒険者ギルドを退会させられた者達がいた。

 更に面談での追放は免れたものの、Fランクへ降格してユダスで再出発することを拒否した者達も冒険者ギルドを退会となった。

 冒険者ではなくなった彼らの中には盗賊に転職する者がいたが、商隊を襲っても護衛達に返り討ちに遭い失敗ばかりしていた。

 理由は単純明快で実力が足りない。

 劣勢になるとこれまでの習慣から無意識に必殺呪文「何々ラーンク冒険者だぞ!」を放つ者が少なからずいた。

 もちろん効くはずもなく、「お前ら冒険者崩れか!」と身元をバラすだけであった。

 元冒険者のクズ達はこの時に至り、自分達が口だけの存在なのだとやっと自覚した。

 失敗し続けて彼らは改心した、

 なんてことはなく、質で劣るならば量で補えばいいと考えて同じ境遇の元冒険者の新米盗賊( クズ)に共闘を持ち掛けた。

 しかし、共闘はなかなか成立しなかった。

 誰もがその集団のトップになりたがったのだ。

 ランク絶対主義者である彼らは同ランクの者の下につくのは我慢出来ず(冒険者でなくなっても冒険者ランクは彼らの心の中で永遠に生き続けるのだ!)、誰がトップになるかで揉め続けたのだ。

 そんな中で彼らは盗賊として成功を収めていた元Bランクのクズパーティの存在を知った。

 自分達よりランクが上ならばと彼らの元に新米盗賊( クズ)が集った。

 こうして第二の三本腕ともいえる冒険者崩れの盗賊団が誕生したのだった。

 元Bランクのクズパーティのクズリーダーが盗賊団のメンバーの顔を見回す。

 その顔は皆根拠のない自信に満ち溢れていた。

 クズリーダーは何かを確信し、大商隊を襲撃することを決断した。



 この盗賊団が馬車五台からなる商隊を襲った。

 街道を荷車で塞ぎ、商隊を強制的に止めると降伏勧告した。

 数は盗賊団の方が多いと確信しており、商隊はすぐに降伏するものと考えていた。

 盗賊団のクズリーダーは降伏しても男は皆殺しにするつもりだった。

 しかし、彼の予想に反して商隊は降伏しなかった。

 それどころか攻撃を仕掛けて来たのだ。

 商品で満載と思われた荷馬車から冒険者達が次々と現れる。

 クズリーダーは自分達が襲ったのは商隊ではなかったと悟った。


「嵌められたのか!?」


 クズリーダーの叫びが正しいことを商隊が自分達の正体を明かして証明した。


「俺達はリサヴィ派だ!」


 商隊が通るというのはリサヴィ派が流したデマであった。

 それにまんまと盗賊団は引っかかったのである。

 もし、この盗賊団の要である元Bランククズパーティのクズ盗賊が真面目に調査していればこの嘘を見破ったかもしれない。

 しかし、彼は獲物の下調べを部下となったクズパーティに任せっきりであった。

 部下の腕を信頼していたからというわけではない。

 彼は部下に命令するのが楽しく自分で仕事をするのが面倒だったのだ。

 クズ冒険者あるあるである。



 リサヴィ派は盗賊団のクズリーダーが元Bランク冒険者であることを知っていた。

 なんちゃってBランクではなく、強さは本物だと理解していた。

 対するリサヴィ派は皆Cランクである。

 実力もCランク相当であり、クズリーダーとの力の差は歴然であった。

 しかし、リオに心酔した彼らに死への恐怖はなかった。

 彼らにある思いのはリオに近づきたい、認められたい、ただそれだけだった。

 あちこちで戦いが始まるとリサヴィ派の一人が力の差を自覚しながらもクズリーダーに突撃した。


「死ね!冒険者の恥晒しが!!」

「雑魚が!」


 彼の一撃はかわされ、クズリーダーの一撃が彼を肩から斬り裂く。

 クズリーダーがニヤリと笑った。


「はっ、まず一匹だ」


 だが、その一撃は彼を真っ二つにすることはなく、体の途中で止まった。

 重傷だが、即死ではない。

 彼はそのままクズリーダーにしがみつく。


「なっ!?なんだてめえ!放しやがれ!」


 もちろん、彼がクズリーダーの言うことを聞くわけがない。


「や、やれ!」


 瀕死の彼の叫びに他のメンバーが「おう!」と応えてクズリーダーに向かって突撃する。

 クズリーダーはリサヴィ派が何を考えているのか察した。


「お、お前らマジか!?」


 クズリーダーは必死にしがみついているリサヴィ派を振りほどこうとするが間に合わなかった。


「ちょ、ちょ待てよ!!……がああ!!」


 突撃してきたリサヴィ派がしがみついている仲間ごとクズリーダーを剣で突き刺した。

 悲鳴を上げるクズリーダーの背後からリサヴィ派の盗賊がスキル、インシャドウで近づく。

 クズリーダーが万全な状態ならその接近に気付いたかもしれないが、そんな余裕はなかった。

 リサヴィ派の盗賊は難なくクズリーダーの首を掻っ切った。

 クズリーダーがしがみついたリサヴィ派と一緒に倒れる。


「リ、リーダー!?」

「こ、こいつら!狂ってやがる!!」

「お前らに言われるのは心外だ」


 力の差を埋めるために死をも恐れぬ特攻をするリサヴィ派に盗賊団が動揺する。

 クズは仲間を本人の意思に関係なく無理矢理肉盾にすることはあっても自らが進んでなる事は決してない。

 自己犠牲を躊躇なくやり遂げるリサヴィ派に恐怖した。

 負けると思っていなかった元Bランクのクズリーダーが殺されたことで盗賊団は当初の余裕が消え失せ焦りとなって隙ができた。


「冒険者の名誉のため!そしてリサヴィ派の名誉のためにクズを一人として生かしておくな!!」


 リサヴィ派のリーダーの叫びにリサヴィ派は「おう!」と応え勢いづく。

 彼らの死もいとわぬ突撃に次々と盗賊達が倒れていった。



 戦いは終わった。

 その直前、盗賊団の一人がやって来た輸送隊に気づきそちらへ逃げて行った。

 その盗賊は停止して様子見していた輸送隊の護衛達にリサヴィ派を指差して何事か命令していたがその護衛達が動く気配は全くない。

 リサヴィ派はその護衛達が盗賊に騙されることはないと確信していたのでまずは後始末を済ませることにした。



 リサヴィ派の者達が死亡確認のため倒れた盗賊達に剣を突き刺していく。

 何人か死んだ振りをしていたが、それで致命傷を負いあっけなく死んだ。

 死んだマネが効かないと見て両手を上げて降参する者もいた。

 しかし、


「はははは!リオさんが降参を認めたかよ!」


 リサヴィ派の者達は笑いながら無抵抗な盗賊の首を刎ね飛ばした。

 こうして盗賊団は一人を残して全滅したのである。

 リサヴィ派は逃げた盗賊団最後の一人を始末するため輸送隊へ向かった。


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