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595話 冒険者のクズ化

 自称劇作家の双璧の男は続ける。


「皆さんはクズ冒険者がBランクであっても鼻で笑い飛ばし一蹴しました。相手がAランク、いえっ、Sランクであろうと笑いならがボコる事でしょう!そんな皆さんの行動に真面目な冒険者達は勇気づけられたのです!」


 自分の発言に気分よくして暴走を始める自称劇作家の双璧の男。

 流石に看過できないとサラ達は抗議する。


「おいこら!勝手な妄想で話を広げるな!何が笑いながらですか!私達は戦バカではありません!」

「ですねっ」

「ぐふ、ランクを重視しない者達など今までにもいただろう」


 サラに怒られ彼は少し冷静さを取り戻した。


「はい、いました。しかし、その者達には大した影響力がなくここまで広がることがなかったのです」

「私達だって……!!」


 サラは反論しかけてハッとする。

 その態度を見て自称劇作家の双璧の男が満足気に頷く。


「その通りですサラさん。あなたはあの六英雄の一人であるナナル様の弟子です。あなたの行動はナナル様の意思でもあると判断したのです」


 そう言われるとサラも強く否定できない。

 自称劇作家の双璧の男は続ける。


「少し話が逸れましたね。ともかく、今までクズ行為を受けていた冒険者達がその被害を報告するようになり、ギルドはクズ冒険者達を追放したのですが、これも想定を上回る数だったのです。これらが重なったこともあり元冒険者のクズが溢れたのです。しかし、これで終わりではありません」


 自称劇作家の双璧の男は一旦言葉を切るとリサヴィの面々を見回してから続けた。


「真面目だった冒険者がクズ化しているのです」

「クズ化ですかっ?」

「はい。一番の理由として魔物の凶暴化が挙げられます。同時に複数のリバース体が現れたこともあるそうです」

「「「「……」」」」

「魔物討伐依頼を受けたものの、その魔物達が冒険者ギルドで定義されたランクよりも上の力を持っており苦戦し大怪我したり、依頼を失敗しているようです」

「ぐふ、確かに私達もここへ来る途中にウォルーのリバース体に遭遇したな」

「今まではどうにか倒せていた魔物が倒せなくなった。だからと言って依頼ランク落とせば報酬はグッと下がり今までように稼げなくなる。そこで彼らの中に実力ある冒険者に寄生する、つまりクズスキルを使用することを選ぶ者が増えているのです。主に“ごっつあんです”ですね」

「ぐふ、追い詰められて秘められた力が開花した、ということか」

「ですねっ」


 サラが呆れた顔で言った。


「何言ってるんですか。そんなカッコいいものじゃないでしょう」



 リサヴィと自称劇作家の双璧の男の話に耳を傾けていた冒険者達が会話に参加して来た。

 

「俺もつい最近クズ化した奴らに会ったぜ!以前は真面目な奴らだったはずなのによ」

「まあ、そいつらはクズ行為がバレて退会処分になったけどな」


 その話に異論を唱える者達がいた。

 彼らはその退会処分になったクズ達と親しかったらしく擁護する。


「ざけんな!あいつらはな!クズなんかじゃねえ!あいつらの活躍を僻んだ奴らに濡れ衣を着せられて追放されたんだ!」


 クズを擁護した者達はサラ達に挨拶に来た時の言動がどこかおかしく、サラ達が心の中でクズ予備軍と判定していた者達だった。

 そのクズ予備軍の言い分を認めたのはごく少数でこれまたサラ達がクズ予備軍と判定した者達だった。

 酒に酔ったからだろう、本性を現した彼らの考えを聞き、サラ達は彼らを予備軍から正規軍に昇格させる。

 つまり、クズ冒険者と認められたのだ!

 マトモな冒険者達とクズ冒険者達が言い争いを始める。


「何が活躍だ!他の冒険者に寄生して報酬を奪うクズだろうが!」

「ざけんな!あいつらは親切心から低ランク冒険者共に冒険者の常識を手取り足取り教えてやろうとしただけだ!それを指導が厳しいからって逆恨みしてギルドに報酬を奪っただの依頼の邪魔しただの嘘を話しやがったんだ!!」

「何が嘘だ!全部本当のことだろうが!大体何が常識だ!お前らの常識は非常識なんだよ!」


 その言葉にキレたクズ冒険者達が一斉に喚き始める。


「ざけんな!お前らのせいでギルドを追放されて仕方なしに盗賊になった奴らだっているんだぞ!」

「お前らさえ素直に従っておけばあいつらが冒険者をやめることも盗賊になることもなかったんだ!」

「あいつらの人生を滅茶苦茶にして申し訳ないと思わねえのか!?あん!?」


 クズ冒険者達の叫びに今度はこっちのターンとばかりにマトモな冒険者が次々と言い返す。


「阿呆か!」

「人のせいにすんじゃねえ!」

「お前らクズの行動が全部悪いんだろうが!」

「根っこがクズだから盗賊になる道を選ぶんだろうが!」

「そうだぜ!傭兵になったり遺跡探索者ギルドに入るって手もあんだろうが!」


 今の言葉に同じマトモな冒険者が反論する。


「いやいや、遺跡探索者ギルドはないだろ。あそこは冒険者ギルドより入会試験が厳しいらしいから既にクズの奴は入れんぞ」

「ああ、確かに」


 クズ冒険者達から「ざけんな!!」の大合唱が起きた。

 


 自称劇作家の双璧の男はマトモな冒険者とクズ冒険者が言い争っている様子を見ながら必死にメモを取っていたが満足したらしく、蚊帳の外になっていたリサヴィに別の話題を振った。


「ところで知っていましたか?冒険者ギルドを追放されたクズ達があちこちで暴れてて問題になっていることを」

「問題ですか」

「はい。今までクズ冒険者達が迷惑をかけるのは同じ冒険者でした。いわゆるクズスキルを使って報酬を奪うってやつです。それが冒険者をクビになった事でその被害は冒険者に留まらず一般人へと広がったのです。ギルドの規則に縛られなくなったからでしょう」

「ぐふ、それではまるで冒険者の時は規則を守っていたみたいではないか」

「そうですね。冒険者だった頃もまともに守っていたようには見えませんでしたが」

「は、ははは……。それでも彼らなりに冒険者としての誇りを持っていたため、一般人にまで迷惑をかけるのは一部の者達でした。しかし、」

「ぐふ、冒険者でなくなったからクズ全員が一般人に迷惑をかけるようになった、と?」


 自称劇作家の双璧の男はヴィヴィの言葉に頷いた。


「ほとんどの者が犯罪者になったと言っていいでしょう。今回の旅ではすでに三組ものクズの悪事を目にしましたし」


 そう言って彼はクズの悪事を挙げる。

 

「まず、魔物の襲撃で全滅した盗賊」


 彼は戦闘終了後、その場へ向かい盗賊の遺体を確認していた。


「彼らの装備は元傭兵か元冒険者のものでした。あの程度の数のウォルーから逃げ出し全滅させられるとなれば戦を専門とする傭兵とは考え難いですから彼らは元冒険者でしょう」

「ぐふ、そうだな」

「更にこの街の駅で出会った強引に護衛になろうとしたクズ。そしてリオさんが決闘で全滅させた宿にタダで泊まろうとしたクズ。幸いにも私達は無事でしたが、それは彼らが弱かったというよりリサヴィの皆さんや雇っていた護衛の方達が強かったからです」

「ぐふ、そうか?」

「あれくらいならっ、わたし一人でも倒せますよっ」

「確かに皆さんなら可能でしょう。しかし、一般人では彼らの武力に太刀打ちできません。脅されたら言うことを聞くしかないでしょう」

「「「「……」」」」

「今回と同じような悪事をクズ達はあちこちで行っているのです。そんな彼らを無策に野に放った冒険者ギルドへの不満が高まっているのです」

「「「「……」」」」



 サラ達が自称劇作家の双璧の男と話している間もマトモな冒険者とクズ冒険者の話は平行線を辿っていた。

 互いに我慢の限界に達し、各々が武器を手にしようとする。

 この場にいるクズ冒険者の数は圧倒的に少ないので戦いになれば間違いなくクズ冒険者達が負けるだろう。

 しかし、彼らは酔いが回って正しい判断が出来ないようだった。

 ……いや、酔っていなくても頭のおかしい彼らに正しい判断は出来ないか。


 酒場で暴れられては敵わないと女主人がリサヴィのテーブルに助けを求めにやって来た。

 何故か息子を連れて。

 これはもう放っておけないわね、とサラが思った時だった。


「ぐふ!静かにしろ!酒場とは言え騒ぎ過ぎだ馬鹿者どもが!!全員ぶっ飛ばすぞ!!」


 魔装士の叫び声で一触即発だったのが嘘のようにしん、と静まり返る。

 ちなみにヴィヴィは一言も発していない。

 一緒の席にいた自称劇作家の双璧の男がカルハン製第二世代魔装具の仮面を着けると皆に気づかれないように背を向けてヴィヴィに成り切って叫んだのだ。

 さっきの決闘で味を占めたのだろう、とても楽しそうにヴィヴィに成り切っていた。

 それで騒ぎは収まったのでヴィヴィは何も言わなかった。



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