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594話 クズ増加の理由

 サラが宿屋の女主人と今夜泊まる部屋の話をしているときに話しかけてくる者がいた。

 リサヴィの後にくっついて来た自称劇作家の双璧の男である。

 ちなみに決闘のときヴィヴィの真似事をしていたのは彼である。

 リサヴィのメンバーは皆気づいていたが何も言わなかった。


「あの、もしよろしければ私も部屋をご一緒できませんか?」

「いえ、私達は四人部屋を貸し切りますので空きはありませんよ」


 サラがそう断ると彼はおかしな事を言った。


「しかし、ベッドは最低一つは空きますよね?」

「……は?」

「ハレパを自称する皆さんのことですから夜もお盛んなんですよね。是非劇の参考に夜の営みを見学……いえ、なんでもありません」


 サラの冷めた視線を受けて自称劇作家の双璧の男は言葉を途中でやめた。


「私達はハレパなどと呼ばれていません」

「そ、そうですか。それはすみませんでした」


 自称劇作家の双璧の男は何か言いたそうだったがサラが怖かったのだろう、それ以上余計なことは言わなかった。

 結局、彼は二人分払って二人部屋を貸し切った。

 その宿屋はリサヴィが泊まるということで客が殺到し、すぐに満室になりそうな勢いだった。

 リサヴィが泊まるならまだクズがいたとしてもこの宿に泊まるのを避けるだろうし、既にクズが泊まっていたとしてもリサヴィの前で悪さはしないだろうと一般客は考え、冒険者達はなんとかお近づきになりたいとの下心からだ。

 サラの耳に宿屋の外から様子を見ていた他の宿屋の主人らしき者の愚痴が聞こえた。


「俺んところも子供を呼び込みに使えばよかったぜ」


 サラは彼と目が合った。

 途端、彼は客商売らしくない硬い笑みを浮かべると頭を下げて逃げるように自分の宿屋へ帰っていった。


「ったく。何を考えているのかしら」


 サラの独り言を聞きつけアリスが得意げに説明する。


「サラさんがショタコンだからですよっ。呼び込みの子供を見てっこの宿を選んだと思ったんですっ」


 サラはアリスの親切な説明にお礼をした。

 げんこつで。


「痛いですっ」



 借りた部屋に荷物を置き、少し休憩してから食事をするために一階の酒場へ向かう。

 酒場は満席に近かったが、四人用テーブル席がひとつ不自然にぽっかりと空いていた。

 予約席かと思ったが、女主人が「空いていますよ」と言い、その席に案内された。

 リオ達が料理を注文し終わるのを待っていたかのように他の席に着いていた冒険者達が次々と挨拶にやって来た。

 それを見てサラ達は彼らが自分達と話がしたいために空けておいたのだと悟る。

 その中でもソロ冒険者達はパーティに入れてほしいとアピールして来た。

 その多くが盗賊クラスだった。

 リサヴィに盗賊クラスがいないのは周知の事実なので当然と言えば当然だった。

 中にはクズ予備軍らしき者も含まれていた。

 言うまでもなく全員断った。



 食事が運ばれて来たのを口実にアピールタイムを強制終了する。

 女主人はサラに気を利かしたのか、料理を運んできたのは呼び込みをしていた息子だった。

 それはともかく、食事の邪魔をしては印象が悪くなると不満げな顔をしながらも冒険者達は渋々自分達のテーブルへ引き下がった。

 ソロ冒険者達はまだリサヴィ入りを諦めていないようでパーティ入りする手掛かりを求め食事そっちのけでリサヴィの話に耳を傾けていた。

 リオの次に空気の読めないアリスが彼らのことを気にすることなく疑問を口にする。


「それにしてもっ決闘の時といいっ駅の時といいっ、この街っ、元冒険者のクズが多いですねっ」

「元冒険者のクズが多いのはここだけではありませんよ」


 アリスの疑問に答えたのは自称劇作家の双璧の男だった。

 彼は四人テーブルに座っていたリサヴィのところへ椅子を持ってきてちゃっかり一緒に食事をしていた。

 サラ達はその図々しさに呆れながらも実害はないと判断して追い出さなかった。

 宿屋の女主人も特に文句を言わなかった。

 彼をリサヴィの友達だと思っているようだった。

 当初、リサヴィと一緒のテーブルで食事をする自称劇作家の双璧の男に嫉妬混じりの視線が集中した。

 口に出さなかったのはリサヴィが彼を邪魔だと思っていないようだったからだ。

 ソロ冒険者達は彼がリサヴィの新メンバーなのではと疑っていた。

 彼の服装は冒険者のものではないがそれだけでは安心できなかったのだ。

 彼はそのことにすぐ気づいて冒険者達の誤解を解いた。


「私は冒険者ではなくリサヴィの取材をしているだけなので気にしないで下さい」


 自分の正体を明かすまではしなかったが(明かしたところで彼自身が言うほどの有名人なのかは不明だが)、それだけ説明するとライバルではないとわかり冒険者達の視線は和らいだ。

 もちろん、その説明を全員が信じたわけではないことに彼は気づいていたが、取材の邪魔さえしなければそれでいいのだ。

 アリスが自称劇作家の双璧の男に顔を向ける。


「それは本当ですかっ?」

「はい。今回、調べてわかったことなんですが」


 自称劇作家の双璧の男はそう前置きして続ける。


「冒険者ギルドは不正合格者を摘発して冒険者に相応しくないと判断した者をギルドから追放しましたが、それが想定以上に多かったようです」

「不正が行われていたのが特定のギルドではなかった、ということですか」

「はい。多かれ少なかれどのギルドでも不正が行われていたようです。更に不正合格者ではなくてもその行動が冒険者に相応しくないと判断されて追放になった者達も多くいます」

「真面目な冒険者に寄生したクズ冒険者ですねっ?」

「そうです。被害を受けた冒険者達は最初相手の方がランクが上であることから泣き寝入りしていたのですが、皆さんのランクをものともしない行動に勇気をもらい泣き寝入りをやめてそのクズ達を告発したのです」



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