表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
592/867

592話 クズとの議論は時間の無駄

 キメ顔でリサヴィの返事を待っているクズ達にリオが素直な感想を口にする。


「クズ」

「「「おうっ……って、馬鹿野郎!誰がクズだ!誰が!?」」」


 クズ達が激怒した。

 リオに代わりヴィヴィがクズの相手をする。


「ぐふ、そもそもお前らクズはもう冒険者ではないのだろう。追放されたクズの保証などすると思うのかクズ」


 ヴィヴィがクズを連発するのでクズ達がキレた。


「ざけんな!この棺桶持ちが!!」

「俺らはCラーーーーーンク!冒険者だぞ!!」

「元、でしょう」

「「「ざけんな!!」」」


 サラの言葉にクズ達が見事にハモる。


「大体てめえらランクはいくつだ!?言ってみろ!!」


 どうやらクズ達はサラ達が若いためランクが自分達より低いと思っているようだった。

 そんなことを聞くくらいだから相手にしているのがクズの天敵リサヴィであることに気づいていない。


「私達は全員Cですが、それが何か」


 サラがそう答えるとクズ達が勝ち誇った笑みを浮かべた。


「はははっ!後出しジャンケンかよ!」

「はい?」

「俺らがC!ラーーーンク!って言ったから嘘ついてんだろうが!!」

「嘘はついていませんが」


 サラの言葉をクズ達は信じない。


「だからよ、すぐバレる嘘つくんじゃねえぜ!」


 そう言ってクズリーダーがヴィヴィを指差す。


「ぐふ?」

「はっ!棺桶持ちがCランクに上がれるものかよ!」

「おう!荷物しか持てねえ足手纏いがよ!Cランク昇格試験に受かるわけねえだろうがよ!」

「だな!」


 どうやら彼らはフェラン製のあらゆる機能をオミットした廉価版魔装具を装備した魔装士しか見たことがない、あるいはそれ以外の魔装士と行動を共にしたことがないようだった。


「棺桶持ちは皆Dランク止まりなんだよ!この嘘つき野郎どもが!!」

「こりゃ、嘘ついた責任をとってもらわねえとなあ」

「お前らの体でな!」

「嘘をついていたのはあなた達の方でしょう。まだ冒険者だと言って」

「ざけんな!」

「元がつこうが冒険者には変わらんだろうが!」

「「だな!!」」


 クズロジックを展開するクズ達にヴィヴィが呆れ顔で(と言っても顔は仮面で見えないが)言った。


「ぐふ、そんなわけあるかクズ」

「そうですねクズ」

「「「誰がクズだ!誰が!?」」」



 サラとヴィヴィがクズの相手をしている間、リオはぼーと空を眺めていた。

 アリスもリオに倣って空を見ていた。

 リオは空を眺めるのに飽きたのか顔をクズ達に向けて会話に参加する。


「クズとの口論は時間の無駄だから決闘で方をつけよう」


 リオの言葉にクズ達が激怒する。

 何度も激怒できる疲れ知らずのクズ達である。


「誰がクズだ!誰が!?」

「いい気になんじぇねえぞ男娼野郎が!」


 どうやらクズ達はリオ達が美形揃いなので体を売る冒険者だと思っているようだった。


「そうか!わかったぞ!お前らが本当にCラーンクならその体で試験管をたらし込んだんだな!」

「確かにな!」

「それに違いねえ!この卑怯モンが!!」


 自分達の思い込みで非難罵倒するクズ達にヴィヴィがまたも呆れ顔で(と言ってもやっぱりその顔は仮面で見えないが)言った。


「ぐふ、ならお前らは金か」 

「「「ざざざ、ざけんなっー!!」」」


 クズ達は動揺を含め見事にハモった。

 リオは彼らの動揺など気にすることなく再度問う。


「で、受けるの受けないの?受けないならさっさと尻尾を巻いて逃げて行きなよ」


 クズ達はリオの挑発に顔を真っ赤にしながらも仲間同士で視線を送り合う。

 いわゆるクズコンタクトである!

 違った、アイコンタクトである。

 クズ達はそれだけで意思疎通ができ同時にニヤリと笑った。

 クズに相応しい悪党顔であった。


「いいだろう。俺達三人まとめて相手になってやるぜ男娼野郎!」

「じゃ、決まりだ。ルールだけど」

「当然デッドオアアライブだ!」

「今更逃げんなよ!」

「まあ逃さねえけどな!」


 そう言ったクズ達は勝ち誇った顔をしてリオの顔を覗き込む。

 デッドオアアライブと聞いてリオが怖気付いて泣いて謝ってくると思っていたのだ。

 しかし、当のリオは平然とした顔で「わかった」とOKした。

 リオがあまりにあっさりとOKしたので彼らはサラ達の様子を窺う。

 ヴィヴィは仮面で表情が読めず、サラは困ったような顔をしていたが止める気配はない。

 アリスは笑顔で「またこの世からクズが減りますねっ」とリオが勝つ事を疑っていない発言をする。

 クズ達はちょっと不安になったので更に脅しをかける。


「決闘は一対一じゃねえぞ!お前は俺ら三人を同時に相手にすんだからな!それをお前はOKしたんだ!今更取り消せねえぞ!」

「あくまで時間が勿体無いからだからな!一対一じゃ勝てねえってわけじゃねえからな!勘違いすんなよ!」

「謝るんなら今のうちだぞ!まあ、ただじゃあ許してやらねえがな!」


 そう言ったクズ戦士はリオをいやらしい目で舐め回す。

 彼は“どちらも”いける口であった。

 しかし、リオはまたも平然とした表情で答えた。


「わかってるよ。そうじゃないと一瞬で終わるからね」

「「「な……」」」


 クズ達は再びサラ達の様子を探るとサラと目が合った。

 哀れんだ目を向けて来た。

 その目を見てクズ達はリオが相当強いのではと不安になった。

 だが、彼らとて伊達にクズではない。

 百戦錬磨のクズである。

 これまでも自分達より強い冒険者にイチャモンをつけられたことがあるが(客観的に見れば全面的にクズ達が悪い)あらゆる汚い手を駆使して今こうして生き延びているのだ。

 クズリーダーがクズ盗賊にクズコンタクト、じゃなくてアイコンタクトを送る。

 クズ盗賊がニヤリと笑って頷いた。


「ついて来い!」


 クズリーダーがそう言うと堂々とした足取りで先を歩き出す。

 その後にリオが続く。

 そしてサラ達が続こうとするとその間にクズ戦士とクズ盗賊の二人が割り込んだ。

 リオがクズ達に前後挟まれた格好だ。

 明らかに何かやる気だと誰の目にも明らかだったが、サラ達はクズ達のやりたいようにさせる。


「あのっ」


 心配そうに声をかけてきた宿屋の少年にサラが笑顔で答えた。


「大丈夫です。すぐに終わります」

「は、はいっ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ