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588話 ヴェイグとの再戦 その2

 リオとヴェイグが模擬戦をするという話はあっという間に広がり、乗客や手の空いている者達が集まってきた。

 このとき見張り番になった護衛達はとても悔しがった。

 審判はサラが務めることになった。

 リオは右手に剣を左手にリムーバルダガーを構える。


「なんだそりゃ」

「あれ?知らなかった?僕は二刀流なんだよ。これが僕の本来の戦いの方なんだけど、やっぱりヴェイグに合わせて一本だけにしたほうがよかったかな」

「ふざけんな!それでいいに決まってんだろ。全力のお前を倒さなきゃ意味がねえんだよ」

「そうなんだ」

「かかってこい!」

「いや、挑まれたのは僕の方なんだけどね」

「うるせえ!」


 サラの「はじめ!」の開始の合図とともにリオが左手に持ったリムーバルダガーを正面のヴェイグにではなく真横に放った。


「え?」


 そこにはイーダが立っていた。

 ヴェイグがイーダを庇おうとダッシュするとリムーバルダガーが突然軌道を変えてヴェイグに迫った。


「なっ!?」


 ヴェイグは咄嗟にリムーバルダガーを弾いたまではよかったが、その時にはリオが目の前にまで迫っており、あっさりと剣を弾き飛ばされた。


「はい、一勝。いや、前回のを合わせて二勝か」


 ヴェイグが怒りの表情でリオに食ってかかる。


「てめえ汚ねえぞ!」

「ん?これ?」


 そう言って戻って来たリムーバルダガーを掲げる。

 

「イーダを狙いやがったことだ!この卑怯者が!」

「それはぼんやりしてるイーダが悪い」

「なっ!?」


 その言葉にイーダが顔を真っ赤にして抗議する。


「リオ!それはどういう意味よ!?」


 リオは飄々とした顔で言った。


「なんで自分は安全だって思ったのかな?」

「こ、これは模擬戦でしょ!」

「だから?剣が折れ、その破片が飛ぶかもしれない。見学者が絶対に安全だなんて保証はない」

「な……」

「そのことを全く考えずぼけっと突っ立ってるから緊張感を持たせてあげたんだよ」

「うっ……」


 その言葉は言われたイーダだけでなく、他の冒険者達にも痛い言葉だった。


「勝手な事言ってんじゃねえ!」

「それより続きをしよう。それとももう終わりにする?」

「ふざけんな!このまま終われるかよ!」

「そう」

「そのヘラヘラ顔を屈辱で真っ赤に染めてやるぜ!」

「そうなんだ」



 ヴェイグの手から剣が離れて宙を舞う。

 そして地面に落ちた。

 ヴェイグが屈辱で顔を真っ赤に染めすごい形相をしながら剣を拾いリオに向ける。

 しかし、リオは剣を鞘に収めたところだった。


「おいこら!まだ勝負はついてねえ!」

「いや、十分確認出来たからこれで終わり」

「逃げんのか!?」


 リオがため息をついてから言った。


「六回も剣落とされてよくそんな言葉が言えたね。その図太い神経には感心したというか、ヴェイグ、クズの才能があるね」

「……絶対殺す!」


 イーダが間に割って入る。


「やめなって!リオもそうやって挑発しないでよ!」

「これはヴェイグのためなんだ」

「ああっ!?なんだと!?」

「ヴェイグはすぐ頭に血が上って周りが見えなくなる。そんなんじゃ簡単に仲間を失うよ」


 その言葉でヴェイグは以前リオがイーダの危機を救ったことを思い出した。(実際リオに確認したわけではないが確信していた)


 結局、ヴェイグ達が見張りを行う番になったこともあり、模擬戦は終了となった。



 休憩が終わり輸送隊が出発する。

 護衛用の馬車で不貞腐れたヴェイグにもう一組の護衛が話しかけた。


「落ち込むことないぞ。お前だって大したもんだって」


 全敗したヴェイグだがリオに一方的にやられていたわけではない。

 最初こそリムーバルダガーの動きに翻弄されていたがそれにも対応できるようになり、リオが操作をミスった隙をつきあと一歩まで追い詰めたときもあった。

 あと一歩といったように結局負けたのだが。


「本当にお前強かったんだな。俺らお前達よりランク上なのに自信失くしてしまうぜ」


 不機嫌なヴェイグに加えて自信を無くしかけている護衛達と護衛の馬車の中の雰囲気は最悪だったのでイーダが回復に努める。

 ほっとけばそのうち機嫌が直るだろうヴェイグは放置して護衛達のフォローをする事にした。


「実はあたいらEランクだけどCランクに上がるだけのポイントは貯まってるのよ」

「そうなのか……って、ちょっと待て。それでギルドは文句言わねえのか?」

「あたいらこれまでずっとユダスで活動してからさ、その辺のことはあんまり言われなかったのよ」

「ああ、なるほどな」


 盗賊が納得顔で頷く。


「どういうことだ?」

「ユダスはいつも冒険者不足だからさ、出て行かれちゃ困るからってギルド本部も黙認しているって聞いたことがあるんだ」

「それで問題起きないのか?」

「ユダスには戦バカが多くてさランクに関係なく強い魔物倒しに行くんだ。で、うまく回ってる」

「そうなのか」

「でもよ、ランクを上げない理由ってなんだ?普通いいことばかりだろう?」

「まあ、色々ね」


 リサヴィには一緒のパーティだったグルタがEに上がれてないからと理由を説明したが、彼らにはそこまで説明する必要も理由はない。

 彼らもその辺りは察してそれ以上聞いてこなかった。



 彼らはヴェイグ達がCランク相当であることを知り、どうにか自分を納得させることに成功した。

 相変わらずヴェイグは不機嫌なままだったがイーダは放置する。

 彼らとの話はリオが使用したリムーバルダガーに移った。


「あの自由自在に飛び回るダガーは一体何なんだ?俺はあんな武器見たことないぞ」

「だよな。魔装士のリムーバルバインダーを元にしてるんだろうってのはわかるけどよ」

「リオって魔術士の才能もあるのか?魔法戦士なのか?」


 仲間に聞かれた魔術士が首を横に振り、助けを求めるようにイーダを見た。

 

「あたいもよくわかんないわ。リオからはそんなに魔力を感じないし」

「それは俺も思った」

「リオの場合、魔力が多いんじゃなくて魔力回復が異常に早いのかも。あくまでもあたいの予想よ」

「ああ、確かにな」


 護衛のリーダーが羨ましそうな顔をしながら言った。


「あの武器、俺も使えないかな?」

「確かにあれ便利だよな。なんかカッコいいし」

「お前、女にモテそうだとか考えてんじゃないのか?」

「ち、違うわ!!」


 そう言ったものの、その顔は真っ赤であった。

 イーダは客観的な意見を述べる。

 

「あんた達が使いたい理由はともかく、あれの扱いは難しいと思うわよ。下手すればリムーバルバインダー飛ばすよりね」

「そうなのか?」 

「あれを操作するには魔力は当然として他に高度な空間認識能力、そして精密操作し続ける集中力も必要だと思うわ」

「そうだな。リムーバルバインダーと違いあのダガーには目はついていないみたいだったから魔装士酔いは起きないだろうけどその分正確に操作するのは難しそうだ」

「確かにな。それに加えて自らも剣で攻撃できるなんて化け物だぜ」

「やっぱリオはすごいんだな。サラが認めるわけだ」



 イーダは会話に参加しないヴェイグが気になり様子を見た。

 ヴェイグは小さな声でぶつぶつ独り言を言っていた。

 先ほどの戦いの反省をしているようだったのそっとしておく事にした。

 


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