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587話 ヴェイグとの再戦 その1

 輸送隊が休憩のため街道脇にあるキャンプスペースに停車した。

 それに倣い輸送隊の後をついて来た三台の馬車もキャンプスペースに停車する。

 その三台は知り合いというわけではないようだった。

 主らしき者が護衛を連れて輸送隊の隊長の元へ向かおうとするの見て輸送隊の護衛パーティが止める。


「ちょっと待ってくれ。こちらは俺らのスペースだぞ。何か用なのか?」


 護衛パーティのリーダーの問いに主人の一人が答えた。


「ああ、これは失礼しました。私は商人をしておりまして途中までご一緒出来ないかこの輸送隊の隊長殿にご相談しようと思っていたのです。よろしければお引き合わせ願いませんか?」


 その主の後で他の二人も同様のことを言った。

 護衛達はその言葉を完全には信じておらず警戒しながら答えた。


「わかった。聞いてくるから馬車に戻って待っていてくれ」


 彼らは護衛の言葉に素直に従い「よろしくお願いします」と言ってそれぞれの馬車へ戻って行った。

 護衛の一人がリーダーの指示で隊長に知らせに行く。

 その様子を黙って見ていたイーダがリーダーに尋ねる。


「彼らは怪しそう?あたいには本当のこと言ってそうに見えたけど」

「俺もそう思ったが世の中には善人面した悪党もいるからな。下手に通して実は隊長に恨みを持つ者だった、なんてことになったら目も当てられない」

「それもそうね」


 しばらくして隊長が専属の護衛達を連れてやって来た。

 そして、商人達を一人ずつ呼び出して話をした。



 隊長は話を終えると見張りをしていたヴェイグ達を呼んだ。

 予想通り彼らは途中まで同行したいとの申し出だった。


「OKしたんですか?」


 護衛パーティのリーダーの問いに隊長はため息をついてから答えた。


「はい。私達にも利点がないとは言えませんから」

「確かに集団が大きいほど魔物の襲撃は少なくなるだろうからな」

「ええ。ただ、自分の身は自分で守って下さいとはっきり言っておきました」

「その顔、相手は納得しなかったのか?」

「いえ。それは問題ないのですが、その、リサヴィを護衛に雇えないかと相談されまして」


 ヴェイグの表情が一気に不機嫌になる。


「まあ、わからなくもない……いや、わからん」


 護衛はヴェイグと目が合い訂正した。

 しかし、隊長はヴェイグが不機嫌であることに気付かず言った。


「リサヴィの実力はBランク以上と噂されるくらいですからね。彼らをCランクの依頼料で雇えるなら誰だって雇いたがるのは当然です」

「それで?」


 ヴェイグの不機嫌な声に気づかなかったようで隊長は続ける。


「もちろん断りましたよ。いざとなった時に手助けしてもらえるように交渉済みですので、と」


 隊長の言葉を聞いてイーダだけでなく護衛全員が「あちゃー」という顔をした。

 尚も隊長は続ける。


「全くクズ冒険者には困ったものですね。彼らが騒ぎを起こさなければリサヴィの存在が明らかになることはなかったのですが……あ」


 そこまで言ってやっと隊長はヴェイグが機嫌を悪くしていることに気づき「で、では私はこれで」と言うと場を悪くしたままそそくさと自分の馬車へ戻って行った。



 輸送隊が再び休憩のためにキャンプスペースに停車した。

 今回は昼食を取るため長い休憩となる。

 昼食を終えたリオのところへ一人の護衛がやって来た。


「おいリオ、腹ごなしに付き合ってくれよ」


 リオは声をかけてきた護衛、ヴェイグを見て首を傾げる。


「あれ?Cランクに上がったんだっけ?」

「……」


 ヴェイグは顔をむっとして沈黙する。


「冒険者カード見せて」


 リオが差し出した手をヴェイグが乱暴に弾く。


「うるせえ。上がってねーよ」


 リオがくすりと笑うとからかうように言った。


「あれー?おかしいぞー。約束を守らずにまた挑んでくるんだ?」

「挑んでねぇ!お前が暇そうにしてるから仕方なく俺が相手してやるんだ!」


 ヴェイグの苦しい言い訳にリオが笑みを浮かべたまま言った。


「あれー?僕、クズと話してるのかな?」

「てめえ……」


 ヴェイグの行動が気になって後をついて来ていたイーダが二人のやりとりを見てサラに尋ねる。


「ねぇ、リオってさ、あんな性格だったの?会った時から思ってたんだけど聞いていたのとすごく違うんだけど」

「いえ、いつもは違います」

「ぐふ、ヴェイグと話す時ああなるな」

「ですねっ」

「そうなんだ。ヴェイグも普段はああじゃないんだけどリオのこととなるとなんか大人げなくなるのよね」

「相性バッチリなんですねっ。でもっ私とリオさんとの相性には負けますけどねっ。エヘヘっ」


 アリスを見てイーダが呟く。


「……アリスは噂通りね」


 どういう噂かは口にしなかった。



 リオがゆっくりと立ち上がる。


「まあいいか。相手してあげるよ。僕もちょっと試したいことがあったからね。ヴェイグを実験台にしよう」

「言ってくれんじゃねーか!前回はお前の罠にまんまと引っかかったが今度はそうはいかねえからな!」

「何言ってるのかさっぱりだ」

「言ってろ」



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