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583話 絡みクズ、最後の抵抗 その2

 出発確認のために離れていた隊長が戻ってきた。


「皆さん、出発の準備が出来ましたので馬車に乗ってください」

「わか……」

「「「おう!!」」」

「「……」」


 絡みクズ達はヴェイグとイーダより早く返事すると素早く護衛用の馬車に乗り込もうとする。

 もちろん、今度もヴェイグが蹴りを放って三人を転がす。

 計三度も蹴られたクズリーダーがキレた。

 クズリーダーが剣を抜くとヴェイグに切先を向ける。

 それに残りの二人も続く。


「てめえホントにいい加減にしろよ!!」

「だからこっちのセリフだ」


 そう言うとヴェイグも剣を抜いた。

 絡みクズ達は一瞬で実力差を理解した。

 しかし、だからと言ってのこのこと逃げるわけにはいかない。

 このやりとりは皆(クズに絡まれてそれどころではない商隊は除く)の注目を浴びているのだ。

 プライドだけはBランク以上である絡みクズ達はみっともないところを見せるわけにはいかないのだ!

 昨日から十分みっともないところを見せているのだが……。

 クズリーダーは力ではヴェイグに勝てないと察し、必殺の呪文を放つ。


「俺らはC!ラーーーーーーーーーンク!冒険者だぞ!!」

「それがどうした」


 必殺呪文は全く効果がなかった。


「ちょっと待って」


 今の言葉に疑問を持ったイーダが割って入る。


「どうした?」

「このクズ達、昨日ギルドに連行されて処罰されたはずよ」


 ヴェイグはイーダの言いたいことを理解した。


「なるほど。つまり、こいつら“元”冒険者か」

「ええ。冒険者を騙るニセモノよ」

「「「ざけんな!!」」」


 そう叫ぶと彼らは懐から冒険者カードを取り出した。

 そのカードは本物で内容が表示されているのでまだ冒険者であることがわかる。

 しかし、


「おい、なんでランクを指で隠す。ちゃんと見せろよ」

「「「ざけんな!!」」」


 絡みクズ達は喚くだけで指を退かさない。

 イーダは彼らの一人がランクをきちんと隠せていないのに気づいた。


「ヴェイグ、そいつ隠せてない。Dランクって見えるわ」


 イーダが指差したのはクズ戦士だった。

 彼はイーダの指摘通りうまくランクを隠せていなかった。

 ランク部分を隠して見せる練習をしていたものの、昨日の今日なので時間が足りなかったのだ。


「あっ、しまった……」

「「馬鹿野郎!!」」


 クズ戦士がクズリーダー、クズ盗賊に責められるのをイーダは呆れた顔で見ながら言った。


「降格で済んだのね。ちょっと甘すぎ」

「確かにな。まったく反省してねえし。だが、今回のことで間違いなく追放だろう」


 ヴェイグの“追放”の言葉でクズ戦士を責めるのを中断する。

 確かにこのまま護衛の依頼を受けることが出来なければ依頼の邪魔をしただけになる。

 頭のおかしいクズ達とはいえ、流石にマズイと理解した。

 彼らは武器を収めるとクズリーダーが隊長に卑屈な笑みを浮かべながら交渉を始める。


「へ、へへっ。じゃあよ。仕方ないからよ、今回はその女とは別パーティってことで護衛の依頼を受けてやる」

「いえ、護衛は間に合っています」

「俺らはC!ラーーーーーンク!冒険者だぞ!」

「「だな!」」


 ヴェイグがすかさず突っ込む。


「降格しただろ」

「「「あ……」」」

「降格するような冒険者の腕など信用できませんね」


 隊長の言葉を受けてもクズリーダーは諦めない。


「安心しろ!俺らの腕は俺らが、いや!リサヴィが保証する!」


 そう言ったクズリーダーの顔はなんか誇らしげだった。


「嘘うそ」


 イーダがどうでもいいような口振りで否定した。


「と言うことだ。邪魔だからどっか行け」

「「「ざけんな!」」」

「俺らはなあ、あいつらと互角に渡り合ったんだぞ!」

「そしてわかり合えたんだ!」

「おう!もう大親友と言っても過言じゃねえ!」


 そう言った絡みクズ達が誇らしげな顔で遠くを見る姿はそのときの出来事を思い出しているようだった。

 もちろん、そんな事実はない。

 彼らの妄想である。

 すかさずイーダが突っ込む。


「いや、あんたらヴィヴィに一方的にどつかれただけでしょ。しかも一発KO」

「「ざけんな!」」


 ヴェイグが絡みクズ達に向かってしっしっと追いやる仕草をする。


「ほれ、もういいからどっか行け。お前らが邪魔で出発出来ねえだろ」

「「「ざけんな!」」」


 クズリーダーがヴェイグを怒鳴りつける。


「俺ら三人が保証してんだぞ!」

「対してそっちはその女たった一人だ!多数決で俺らの方を信じるべきだろうが!」


 ヴェイグが呆れた顔をして言った。


「人数なんか関係ねえ。信用ゼロが何人揃ったところでゼロだ」

「「「ざけんな!」」」


 イーダが疲れた顔で言った。


「じゃあ、リサヴィに直接聞いてみましょ」

「もう出発すんだろうが。そんな時間ねえし、必要もねえ!」

「おう!俺らはホントのこと言ってんだからな!」


 そう言った絡みクズ達の顔は根拠のない自信で満ち溢れていた。

 が、


「呼びましたか」


 そう言ってサラを先頭にリオ、アリス、そしてヴィヴィが乗合馬車から降りてきた。


「「「なっ……」」」


 本人達の登場で彼らは妄想から現実に戻ってきた。



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