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575話 イーダの相談 その1

舌の根の乾かぬうちにクズ復活です。

クズさよなら宣言してから読者が減ったような気がしますのでしばらく登場させて様子を見ます。


 魔術士ギルドからの帰り道、前方で冒険者達が言い争いしてるのが見えた。

 どうやら女魔術士が三人の冒険者に絡まれているようだった。


「!!……あの人は」


 その女魔術士にサラは見覚えがあった。

 いや、サラだけでなく、リサヴィ全員が知っていた。

 女魔術士はイーダだった。

 彼女は一人歩いているところにその冒険者達と遭遇したのだった。

 イーダは不機嫌であることを隠さず怒鳴る。


「あんた達に用事はないって言ってるでしょ!邪魔だからどっか行きな!」

「ざけんな!俺らはな、一人ぼっちで寂しそうに歩いていたお前を可哀想だと思ってパーティに入れてやるって言ってやってんだぞ!」

「喜んで即入るところだろうが!」

「そんで、感謝を込めて俺ら全員をベッドで楽しませるもんだろうが!」


 イーダに絡んでいる者達は、酔っているのか、シラフで言ってるのか判断つかなかった。

 少なくとも冗談で言っているわけではないことだけは確かだった。

 なぜなら、言うまでもない気もするが彼らはクズだったからである。

 クズ臭をぷんぷん放つ高ランククズだったからである。



 先の家賃踏み倒しクズ捕獲作戦でその場にいたため無関係でありながら巻き添いで拘束されていた者達が解放された。

 その大半はマルコを去っていったが、まだマルコに残っていた者達もいたのである。

 彼らは不正合格者を追放したことにより戦力不足になったパーティで、その補充が目的だった。

 タチが悪いこと彼らは無事解放されたことで、今まで行ってきた数々のクズ行為(もちろん、本人達にその自覚はなく、ちょっとヤンチャした程度にしか思っていない)も全て無罪判決を受けたと拡大解釈していたのである。

 イーダがリオ達の姿に気付いた。


「あっ、リオ!」

 

 イーダがリオに向かってぶんぶん手を振る。


「ちょっとあんたらに聞きたいことがあるんだよ!」


 イーダの呼びかけに真っ先に答えたのはリオではなかった。

 リサヴィのメンバーですらなかった。

 クズ達であった。

 彼らはリサヴィの姿を見て一瞬脅えの表情をしたものの、無罪判決を受けたことを思い出し(思い込み)、デカい態度で続ける。


「よしっ、わかった!リサヴィの代わりに俺らが聞いてやろう!その代わり俺らのパーティに入れよ!」

「だな!!」

「うるさいね!あんたらは!!あんたらに話すことなんか何もないよ!関係ないのに口出してくんじゃないよ!」

「「「ざけんな!!」」」


 一緒に叫ぶ練習を毎日欠かさずやっているのだろう、見事なハモリであった。

 イーダのそばにやって来たリサヴィをブロックするようにクズ達が立ち塞がる。

 そして卑屈な笑みを浮かべながら交渉してくる。


「おいおいサラ、割り込みはよしてくれよ。この女は俺らが最初に見つけたんだぞ」

「人を珍獣みたいに言うなっ!」


 イーダの抗議をクズ達はスルーし、リサヴィを説得しようとする。


「お前らはよ、戦力整ってんだろ?こいつは俺らに譲ってくれよ!」

「なっ?いいだろ?よしっ、決まったな!」


 クズはサラ達が返事する間を与えずに結論を出すと勝ち誇った顔をイーダに向ける。


「聞いたな?」

「はあ?」


 イーダがバカを見る目をそのクズに向ける。


「誤魔化すんじゃねえ!リサヴィは『お前はいらん』と言っただろうが!!」

「言ってないでしょ。てか、一言も話してないでしょ」

「安心しろ!俺らの腕はホンモンだ!リサヴィが保証した!!」


 そう叫んだクズリーダーだけでなく、全員が仁王立ちして腕を組んでキメ顔をイーダに向ける。

 そこへサラ達が冷めた声で言った。


「保証してません」

「ですねっ」

「ぐふ、そんなことするか、クズ」

「だってさ」


 イーダは心底馬鹿にした顔でクズ達に言った。

 しかし、クズ達にはどの言葉も届かなかったようだ。

 クズフィルターが機能して都合の悪い言葉をカットしたのだろう。


「よしっ、行くぞ!」

「だな!こんなとこにいつまでも立ってたら他の奴らに迷惑だろ」

「ったく、そんくらいわかれよ。常識がねえのかよ」


 クズに“おま言う”発言されてイーダがキレた。

 いや、さっきからキレていたか。


「あんたらが常識なんて言葉口にするなーっ!!あーっ!もうっ、ほんとクズは話が通じないね!!」

「「「誰がクズだ!?誰が!?」」」

「あんたらだ!あんたら!」

「「「ざけんな!」」」


 クズリーダーが物分かりの悪い子供をあやすかのような、むかつく態度でイーダに言った。


「あんなあ、リサヴィはメンバー募集してねえんだよ」

「誰もリサヴィに入りたいなんて言ってないでしょ!!」


 イーダの言葉を聞き、クズ達が満面の笑みを浮かべる。


「じゃあ、俺らのパーティに入るってことだな!」

「よしっ、決まったな!」

「そんじゃ、パーティ登録しに行くぞ!」


 クズの一人がイーダに手を伸ばすが、その手がイーダに触れることはなかった。

 そのクズは宙をくるくるくる、と三回転してから地面を転がって止まった。

 もちろん、アホ面を晒すことを忘れない。

 ヴィヴィがリムーバルバインダーでぶっ飛ばしたのだ。


「なっ!?」

「て、てめえ……」

「ぐふ、なんだお前達も空中散歩したいのか?」

「「ひっ……」」


 残りのクズ二人が逃げ出した。

 クズにしては珍しくあほ面晒して気絶したクズをその場に放置せずに連れて逃げた。

 仲間思いのパーティだったのか、これ以上戦力が欠けるのを恐れたのか。

 ともかく、イーダはクズの脅威から脱したのだった。



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