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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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565話 種明かし

 サラはこのままでは埒が明かないとみて行動に出ることを決意する。


「ヴィヴィ」


 サラに呼ばれたヴィヴィは彼女の目を見て意図を察した。


「ぐふ」


 ヴィヴィがリムーバルバインダーを飛ばして近すぎるクズを弾き飛ばし始める。


「イテッ!?」

「がっ!?」

「て、てめえ!何しやがる!?」


 ヴィヴィはクズ達の文句を聞き流し、まるで羽虫を追い払うかのようにクズ達を遠ざける。

 サラはクズ達が離れた隙を見逃さず、範囲防御魔法、エリアシールドを発動して自分達と一緒に依頼を行うパーティを囲んだ。

 それに気づくのが遅れて再びサラ達に近づこうとしたクズ達がエリアシールドに激突し、悲鳴を上げる。


「おいサラ!なんだこれは!?」

「俺らも入れてくれよ!大親友だろ!?」


 いつのまにか大親友になっていたらしいサラだが、彼らのいう事を聞く気はない。

 聞くならそもそもエリアシールドを張るわけがないのだ。

 そんなことも理解出来ないクズは彼だけではなかった。

 クズ全員が理解出来ていなかった。

 しかし、この程度でクズが諦めるはずもない。

 クズ達は必死にキメ顔アンド決めポーズをサラに向けて大親友アピールをする。

 が、やっぱり効果は全くなかった。


「……ぐふ、それしかすることがないのか」


 ヴィヴィが呆れ顔(と言っても仮面で顔は見えないが)で呟くが、クズ達には届かなかったようだ。



 黒服のリーダーは好機と見て部下に命令を下す。


「シールドの外は全てクズだ!全員捕えろ!魔法の使用も許可する!」


 黒服達が「は!」と返事をして行動を起こす。


「ちょ、ちょ待てよー!!」



 リーダーの許可を得た魔術士達が全力でクズ達に魔法を放つ。

 クズ達は悲鳴を上げながら逃げ回るが、次々とバタバタ倒れていく。

 中には攻撃魔法が直撃し、重傷を負った者もいた。

 その様子を見てリオにしがみついていたアリスが首を傾げる。


「……なんかっ、魔術士の人達っ、さっきまでより力が入っていませんっ?」


 アリスがそう言った直後、攻撃魔法がエリアシールドを直撃した。

 攻撃を当ててしまった魔術士が謝罪のためサラに向かって頭を下げた。

 しかし、その表情は謝っている、というより悔しそうに見えた。


「……確かに少し異常ですね」


 アリスの言う通り魔術士達は全力で攻撃していた。

 それは任務に忠実だから、という理由だけではなかった。

 先のリーダーの命令で彼らのプライドは少し傷ついたのだ。

 魔法の使用許可が出たということは、自分達の魔法が誤ってサラのエリアシールドに命中しても破る事は出来ないと判断したということでもあるからだ。

 確かにサラのエリアシールドが強力なのは魔の領域のドラゴンブレスを防いだことからも明らかだ。

 とはいえ、プライドの高い魔術士達はそう簡単に納得できるものではなかった。


(ちょうどいい!その力、見せてもらうぞ!)

(私の日頃の成果を試す絶好のチャンスよ!)


 などと不純な動機込みでエリアシールドに当たるのも構わず、いや、意図的に巻き込むように攻撃魔法を放ち始めたのだ。

 何をとち狂ったのかクズそっちのけでエリアシールドを破ろうとする魔術士まで現れる次第であった。(流石にこのあからさまな魔術士はすぐに黒服に拘束された)

 この魔術士の暴走の最大の被害者はクズ達であった。

 ……誰も同情しなかったが。



 リサヴィに助けを求めたクズ達は一人残らず黒服に連行されていった。

 リサヴィに呪詛を吐きながら。

 完全な八つ当たりである。



 黒服( とクズ)が去り、サラ達だけになってからモモがニコニコ顔でやって来た。

 そして、今回のことについて種明かしをする。

 リサヴィに指名されて一緒に依頼を受けることが出来れば家賃踏み倒しが帳消しになる、との噂を流して家賃踏み倒しクズをマルコに呼び寄せ一網打尽にする作戦だったこと。

 そのための準備をマルコギルドだけでなく、街ぐるみでしていたこと。


「道理であれだけの騒ぎを起こしても兵士がやって来なかったのですね」


 サラの言葉にモモが頷く。


「クズを呼び寄せるのは、ギルドとしても諸刃の剣だったのですが、あのお方に協力をお願いされたら無下に断れません。それにマルコ所属だったクズを野に放ってしまった責任も感じていましたので」

「私達は大迷惑でしたが」


 サラが憮然とした顔で言った。


「ほら、よく言うじゃないですか。敵を騙すにはまず味方からと」


 そう言ったモモの顔はなんか誇らしげだった。


「皆さんは先日、他のギルドで不正合格した冒険者達を捕まえるのに尽力したではないですか。ですから今回も喜んで協力してくれると信じてました」

「前回も今回も喜んで協力などしていません」


 しかし、サラの言葉はモモには正しく伝わらなかった。

 

「本当にありがとうございました!流石リサヴィの皆さんですね!」

「「「「……」」」」

「でも、依頼はこれからが本番ですからね!」


 サラは何を言っても無駄だとわかり、ため息をついて依頼の確認をする。

 

「依頼と言いましたが依頼主のお婆さんはどこかへ行ってしまいましたよ」

「ああ、そうでした。その事ですが、すみませんが出発は明日に変更になります」

「「「「……」」」」

「でも、安心してください。これも予定通りですので」

「聞いていませんが」

「ですから、敵を騙すにはまず味方からですよ!ではまた明日、同じ時間に集合でお願いします」


 モモは言いたい事を言い終えると満足顔で帰っていった。



 まだ依頼は始まってもいないのにサラ達はげっそり疲れた。

 いや、リオは除く。



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