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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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564話 クズ達の抵抗

 辺りが静かになった。

 逃走を図ったクズ達のほとんどが捕えられ、連行されて行った。

 黒服の中には包囲網を突破したクズ達を追っていった者達もいたが、ほとんどは中央広場に残っていた。

 彼ら黒服の次の標的はリサヴィの周りに集まったクズ達である。

 そのクズ達はといえば、何故か安心しきった顔をしていた。

 サラ達はその理由を考えたりしない。

 するだけ無駄だからである。



 お婆さんと無関係のクズ達が黒服に声をかける。


「おいおい、もうクズはいないぞ」

「だな!さっさと逃げた奴らの後を追えよ」

「ったく、だらしねえ奴らだな!」


 クズ達の発した言葉に黒服達はカチンときた。

 

 

 今回の作戦は完璧のはずだった。

 お婆さんの家賃踏み倒しクズを捕らえるための人数を十分揃えたはずだった。

 しかし、蓋を開けてみれば想定の倍に近い数のクズが集まっていた。

 リサヴィと一緒に依頼を受けたいという理由でお婆さんとは関係ないクズ達まで集まって来たためである。

 もちろん、彼らの邪魔をしたクズ達に自覚はまったくないから謝罪はない。


「ほれ!お前らもこんなところで遊んでないでさっさと行け!」


 残存クズが「だな!」と叫ぶ。


 しかし、黒服達はクズの言う事など聞かない。

 ただ、黒服のリーダーが魔術士に魔法を控えるように指示をした。

 ここで魔法を使えばサラ達も巻き込んでしまう可能性が高い。

 これがリサヴィでなければ強行したかもしれない。

 だが、黒服のリーダーは察していた。

 “彼”を敵に回してはいけない、敵と認識されてはいけないと。

 傭兵として各地を回り、何度も死戦を潜り抜けてきた経験がそう告げるのだ。

 それもあり、リサヴィのそばに向かうクズ達に気づいていたが後回しにしたのだった。

 無言の圧力をかけて来る黒服を見てクズの一人がサラに声をかける。


「おい、サラ、お前からもなんとか言ってやってくれよ」


 何故かサラが助けてくれると思っているクズ達。

 しかし、サラはその期待に応えることが出来なかった。

 いや、最初から応える気はなかった。

 サラは冷めた声で言った。

 

「無理です」

「おいおい、お前らは俺らが無関係だと知ってんだろ?」


 そう言ったクズがサラにキメ顔をする。

 それに倣って他のクズ達もキメ顔を向ける。

 その中には家賃踏み倒しクズも紛れ込んでいたが、そんなことを微塵も感じさせない見事なキメ顔であった。

 もちろん、効果はまったくない。

 サラはため息をついてから言った。

 

「知りません。あなた方の事は誰一人知りません」

「ざけんな!!」

「そもそも、無関係なら怯える事はないでしょう」

「何言ってんだ!?お前も見ただろうが!コイツらは誰彼構わず捕まえてんだろうが!!」

「無実ならすぐに解放されるでしょう。必要なら後であなた達の得意な謝罪を求めればいいではないですか」


 サラのいう謝罪とは慰謝料のことであり、当然説明するまでもなくクズ達は理解する。

 しかし、何故かクズ達は尋問されるのも嫌がった。

 

「俺らは無実だ!しかしな!無実でも有罪にされることがあんだぞ!」

「おう!俺らをクズと勘違いするようにな!」


 そのすぐ後に「だな!」の大合唱。

 サラ達はコケそうになったが必死に耐えた。

 ヴィヴィが呆れた顔で言った。

 と言っても仮面で顔は見えないが。


「ぐふ、それは勘違いではないと思うぞ」

「黙れ!棺桶持ち!」

「なあ、頼むぜサラ。お前から言ってくれよ。俺らは無実だって」

「さっきも言いましたがあなた達の事は何一つ知りません。無実かどうかも当然わかりません」


 などと言いながらも彼らからクズ臭がぷんぷんしていたので、数えきれないほどのクズ行為をやったクズであることを確信していた。

 それに気づかずクズ達が自信を持って断言する。

 

「安心しろ!俺らは誠実な人間だぜ!」

「おう!俺らが保証する!!」


 腕を組んで仁王立し、誇らしげな顔をするクズ達を見て、


「あれ?もしかしたら本当にクズじゃないかも」


 などど思うことは全く、これっぽっちもなかった。

 

「それにですね、あの人は私を嫌っているので私の言うことなど聞きませんよ」

「なっ!?」


 サラがお婆さんに嫌われていると知り、クズ達から根拠のない自信が消えて動揺し始める。

 

「サ、サラ!話が違うぞ!」

「意味がわかりません」


 そのやり取りを静観していた黒服のリーダーがクズ達に冷ややかな目を向けて言った。


「もう気が済んだだろう。大人しくこちらに来い」

「お、俺らは無実だ!」

「おう!お、俺らはサラと依頼を受けんだからな!なっ、サラ!」


 もはや何度目かわからないが、クズ達が一斉にサラに向かってキメ顔をする。

 しかし、やっぱり全く効果はなかった。



 ところで、

 クズはマウントをとるために常に人の弱みを探している。

 上級クズともなるとその行為を無意識に、呼吸をするかのように行うことができる。

 オートで発動したそのスキルで黒服達がなかなか実力行使に出ない理由に気づく。

 黒服達は誤ってサラ達に攻撃が当たるのを恐れて慎重になっているのだと。

 弱みを見つけたらそこにつけ込まなければ相手に失礼である!

 とでも思っているのだろう、クズ達は勝ち誇った顔してあからさまにサラ達に体を寄せてくる。


「来ないでっ」


 アリスが恐怖で悲鳴を上げてリオにしがみつく。

 その顔に満面の笑みを浮かべていたのは恐ろしさのあまり感情をうまくコントロールできなかったからであろう。

 たぶん。


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