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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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562話 噂の黒幕、現る

 クズダンス?で荒れた息を整えてからクズがサラに声をかけてきた。

 言うまでもなく、腕を組み、仁王立ちしてキメ顔をしてである。


「おい、サラ!俺のパーティを依頼に参加させてくれ!」

「それは私達ではなく、ギルドに相談してください」

「ぐふ、無駄だと思うがな」


 サラとヴィヴィにあっさり断られたが、彼は引き下がらない。


「何言ってんだ!?お前らにはその権限があるだろうが!」

「は?」


 サラが首を傾げるとクズが不機嫌な顔であの噂話を始めた。


「おいおい、何とぼけてんだよ?今回の依頼にはお前らリサヴィに一パーティ参加させる権利があんだろ?この集合場所でそのパーティを選ぶんだろ。そんでこの依頼を受ければあのババアの家賃踏み倒した件をチャラにできるんだろうが」


 彼の言葉に集まったクズ達の多くが「だなーっ!」と叫ぶ。


「は?」

「ぐふ?」


 サラ達は彼らが何を言ってるのかさっぱりわからない。

 いや、ヴィヴィはそういう噂が流れていたことを知っていたが今初めて知ったかのように驚いた顔をする。

 と言ってもその顔は仮面で隠れて見えないが。

 サラ達が困惑するのをよそにそのクズパーティはこの日のために考えて来た決めポーズで依頼参加のアピールをする。


「どうだ!俺らが一番カッコいいだろ!」

「は?」

「ぐふ?」

「はいっ?」


 言うまでもなく、冒険者に必要なのは依頼を達成する力である。

 カッコ良いに越した事はないが必須ではない。

 だが、彼らは冒険者に必要な絶対条件がカッコよさだと思っているようだった。


「ざけんな!サラ!俺らの方がカッコいいだろう!?」

「俺らだ!」

「俺ら俺ら!」


 どうやらここに集まったクズ全員がそう思っているようであった。

 先程の奇行といい、クズ同士の意思疎通はバッチリであった。

 だが、そんな事はリサヴィの知った事ではなかった。

 それに彼らの姿は滑稽なだけであった。

 先ほどまで楽しく踊っていた連帯感が嘘のように消え、クズ本来の力を発揮し始める。

 あちこちでクズ同士の小競り合いが始まったのだ。

 呆れた顔をしながら後退するサラ達を見てクズ達が怒り出した。


「お前ら!いい加減にしろよ!いつまで惚けてるつもりだ!?」

「こっちはな!危険を犯してまでマルコに戻って来てやったんだぞ!」

「そうだ!俺達の覚悟に!お前らは!応える義務がある!!」


 直後、クズ達の「だなー!!」の大合唱が起きた。

 こういう事だけは争っていても息ぴったりであった。

 しかし、サラ達は彼らの言ってる事がやっぱり理解できない。

 

「ぐふ、危険とはなんだ?」

「確かに気になりますね」


 ヴィヴィ達の声は決して小さくはなかったが、その問いに答えるクズはいなかった。

 全員が突発性難聴にかかったのだろう。

 ヴィヴィは答えを諦めるとクズ達を諭そうと優しい笑顔で話しかける。

 と言っても顔は仮面で見えないが。

 

「ぐふ、ともかくだ。私達がクズと一緒に依頼を受けるわけないと常識で考えればすぐわかることだろう」


 突発性難聴が治ったのか、すぐさまクズの一人がヴィヴィを怒鳴りつける。


「バッカ野郎!お前らじゃなくてもクズなんかと一緒に依頼受けたがる奴がいるか!」


 再び「だなー!!」の大合唱。

 ヴィヴィがため息をついて言った。

 

「ぐふ、お前らのことだ、クズ」

「ざけんな!俺らはクズじゃねえ!」

「……ぐふ、確かに今のは私が間違っていたな」

「ヴィヴィさんっ!?」


 ヴィヴィから意外な言葉が出たのでアリスが驚いた顔でヴィヴィを見た。


「わかりゃいいんだ棺桶持ちが!」

「おう!」

「俺らのどこを見ればクズと勘違いすんだ!!」


 「だなー!!」の大合唱とともにクズ達が勝ち誇った顔をする。

 その顔を見ながらヴィヴィは言った。


「ぐふ、常識のないお前達に『常識で考えろ』とはあまりにも無理な要求だった。すまん、クズ」


 ヴィヴィの心からの謝罪をクズ達は受け入れて許すどころか激怒した。

 激おこだった。


「ざけんな!誰がクズだ!誰が!」


 クズ達が喚きまくる中、サラが彼らの根本的な考え違いを指摘する。


「大体、あなた達は冒険者をなんだと思っているのですか」

「なんだと!?」

「仮にですが、本当に仮にですが、私達が一緒に依頼を受けるパーティを探しているとしても選ぶのは依頼を達成できる力を持つ者達です」


 サラに続き、ヴィヴィもクズ達の間違いを指摘ようとした。


「ぐふ、カッコよさなど順番で言えば下も下……」


 アリスはヴィヴィが話を中断して考え込んだのを不思議に思い、声をかける。

 

「ヴィヴィさんっ?」

「……ぐふ、私としたことがうっかりしていた」

「えっ?それはどういう意味ですっ?」

「ぐふ、考えてもみろ。クズ達は戦闘力は言うまでもなく人柄も最悪で皆五十歩百歩だ。そんな中からどうしても選ばなければならないとなれば選考方法はカッコよさしかないかもしれない」

「あっ」

「確かにそうですね」

「そうなんだ」


 アリスだけでなくサラも同意する。

 リオは適当に相槌を打ったようだが。


「ぐふ、やはりそれしかないな。済まなかったなクズ。お前達の事など考えたくないから今まで気づかなかった」

「ですねっ」


 ヴィヴィが再び心からの謝罪をするとクズ達から「ざけんな!!」の大合唱が巻き起こった。

 だが、明確な反論は皆無だった。



 クズ達がリサヴィを怒鳴りつける。


「俺らを揶揄うのも大概にしろよ!」

「今更嘘だったなんて許されねえぞ!!」

「もし嘘だったとしてもお前らが責任とってなんとかしろ!」


 またも「だなー!!」の大合唱が起きた。



 サラがため息をついて言った。


「嘘も何も私達はそんな話知らないと最初から言っています」

「ざけんな!俺らが信じた時点でお前らが言ったことになんだよ!」

「お前らに責任が発生すんだ!」


 クズ論理にクズ全員の「だなー!!」の大合唱が起きる。

 サラ達が呆れた顔をしていると突然、中央広場に大声が響き渡った。


「ぴーぴーよく喚くクズどもだねえ!!」

「誰だ!?」


 クズ達が一斉に声の主、リサヴィの背後から現れた人物を睨む。

 直後、クズ達の顔があほ面で固まった。

 声の主は依頼主のお婆さんだった。

 


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