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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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558話 リオ、クズに決闘を挑まれる

 手伝いを終えたサラ達が教会を出ると外でヴィヴィが待っていた。

 

「いつからいたのですか?」

「ぐふ」

「……まあ、別にいいですけど」


 しばらく歩いているとリサヴィの前に一人の冒険者が立ち塞がった。


「勝負だリッキーキラー!」


 その声に通行人が立ち止まる。

 皆の注目を浴びる中で、その冒険者がリオに向かって叫ぶ。


「俺が勝ったらリサヴィに入れてもらうぞ!」



 その冒険者は少し前まであるクズパーティのリーダーであった。

 つまりクズである。

 リーダーであった彼が何故今、ソロなのか?

 それは先のギルドの不正合格者摘発が原因であった。

 彼自身は不正合格者ではなかったが、彼のパーティの中にいたのだ。

 その者をパーティから追放したことで彼のパーティは戦力不足に陥り、メンバー補充が急務となったのだが、彼らはクズだと知られており、勧誘してもすべて断られた。

 そこで彼は同じくメンバー不足に悩んでいた、彼らに匹敵するクズパーティとの合併を決断した。

 合併したまではよかったが、新クズパーティのリーダー争いに敗れてしまったのだ。

 怒った彼は合併を解消すると言い出した。


「誰がリーダーになっても恨みっこなしだぜ!」


 と前もって決めていたにも拘らず、である。

 だが、これは別段驚くべきことではない。

 クズにとって約束とは相手だけが守るべきものなのだ。

 自分は守らなくてもいいのである!

 しかし、彼がその場から去ろうとしても彼のメンバーは誰も付いてこなかった。

 彼のパーティメンバーは新クズリーダーに従うと言い出したのだ。

 孤立した彼は卑屈な笑みを浮かべながら、


「へ、へへっ、今のは冗談だぜ!俺も新リーダーに従うぜ!」


 と前言を撤回したが、新クズリーダーは反逆者を許さず、彼を新クズパーティから追放した。

 この時、新クズリーダーは怒りの表情を見せていたが、内心では合併して逆に過剰になったメンバーを減らす口実ができたと大喜びであった。

 更にいうとクズパーティに副リーダーやナンバー2的な者はいらないのだ。

 そういう者達をリーダーの座を脅かす敵と見做す者も少なくない。

 彼は去り際に捨て台詞を吐いた。


「覚えてろよ!俺はお前らクズが羨ましがるパーティに入ってやるぜ!」


 こうして彼は彼と同じCランクで最も有名なパーティ、リサヴィへの加入を決意したのである!

 ……リサヴィにとっては迷惑以外のなにものでもなかったが。



 決闘騒ぎを聞きつけ、あちこちから人が集まってくる。

 街中とはいえ、両者が同意した決闘ならたとえ相手が死んだとしても罪に問われることはない。

 集まった中には冒険者もおり、リオに決闘を申し込んだクズに好奇の眼差しが向けられる。


「マジかよ、あいつ」

「リオの強さを知らないのか?」

「リオの事を“リッキーキラー”って呼んでる時点でわかるだろ」

「確かにな」


 冒険者の大半はリオの勝ちを確信していた。

 しかし、そのクズを応援する者もいた。


「とうちゃんがんばれー!!」


 声援を送る子供はそのクズの息子だった。

 息子の声援を受けてクズは右腕を力強く振り上げて「おうっ!」と応えながら偉そうな態度でリオに近づく。

 

「勝負はデッドオアアライブだ!と、言いたいところだがよ、息子が見てっから勘弁してやる。そうだな、気絶するか『参った』って言った方が負けだ!」

 

 そこで一旦言葉を切ると、偉そうな態度のまま小さな声で、リオ達リサヴィにだけ聞こえる声でふざけた提案をする。


「悪いけどよ、この勝負、負けてくれねえか?なあに、二、三回打ち合った後によ、剣を落として『まいった』って言ってくれればいいからよ」

「「「「……」」」」


 リオを始め皆が無反応なのに構わずクズは話を続ける。


「ほれ、俺のガキが見てるだろ?父親としてはよ、かっこいいとこ見せてやらないといけないだろ?」


 このクズはリオに同情作戦が効くと何故か本気で思っていたようだ。

 ここでリオが初めて反応する。


「あれ?もしかして僕に決闘を申し込んでるのかな?」


 リッキーキラーが自分の事だと思っていないリオであるが、クズが自分に向かってずっと話し続けるので流石に気づいた。

 クズが呆れた顔をする。


「何言ってんだ?そう言っただろうが」

「そうなんだ」


 今度はヴィヴィがそのクズに呆れた顔を向ける。

 と言っても顔は仮面で見えないが。


「ぐふ、リオ相手に八百長を持ちかけてくるとはな」

「仕方ねーだろ。一応よ、リッキーキラーの力は認めてやってんだ。それで十分だろうが」

「ぐふ?何が十分なのだ?」

「全く意味不明ですね」

「ですねっ」


 サラ達に全否定されながらもクズは気にする事なく、自分勝手な事を言い続ける。


「それでよ、俺が勝った後のことだがよ、俺がリサヴィのリーダーをやらしてもらうぞ。リーダーに勝つだけの実力があんのに入るだけじゃおかしいだろ?」

「ぐふ、おかしいのはお前の頭だ」

「ですねっ」


 ヴィヴィとアリスの言葉はクズには聞こえなかったようだ。

 クズフィルターによってカットされたのだろう。

 クズは気分よく先を続ける。


「もちろんずっとって訳じゃねー。しばらくの間だ。適当なところで代わってやる。そうだな、俺よりリーダーに相応しいと思ったらな!」

「「「「……」」」」

「とは言ってもよ、俺は前のパーティでリーダーを五年以上やってっからな!ベテランリーダーである俺に認められるのはそう簡単じゃあねえぞ!わははは!」


 そのクズは何がおかしいのか突然笑い出す。


「「「「……」」」」

「よしっ、決まったな!」


 リオが首を傾げて言った。


「さっぱりだ」



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