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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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557話 ヴェイグ、クズの勧誘を受ける その2

 ヴェイグはクズ達の自分勝手な提案を受け入れた。


「いいぜ。他のメンバー呼べよ」

「ははは!言ったな!もう取り消せねえぞ!」


 ヴェイグは強力な助っ人がいるのかと思った。

 それでも全く負ける気はしなかったが。

 だが、違った。

 クズリーダーは酒場だけでなく、外にまで聞こえるほどの大声で叫んだ。


「Cラーンク!冒険者にぃ!!楯突くう!!この生意気なあ!E!ラーンク!冒険者をぶっ殺すチャンスだぞ!人数制限はない!C!ラーンク!冒険者の名誉を守るため!野郎ども!集まってこい!!」

「報酬はこの女だ!」


 クズリーダーに続いてクズ戦士が卑猥な笑みを浮かべながらイーダを指差す。

 直後、ヴェイグが強烈な殺気を放った。

 それに気づかない者はほとんどいない。


「俺は構わんぞ。参加したいならするがいい。だが、生きて帰れると思うな」


 今までのやりとりを聞いていれば、クズ達の頭がおかしいのは明白であり、彼らに賛同できる者がいるとすれば彼らと同レベルのクズ以外いないだろう。

 ヴェイグの殺気を受けてか、単にクズ達の人望がなかっただけか、ともかく、提案に乗る者は現れなかった。



 参加者ゼロに呆然としているクズ達にヴェイグが冷めた目を向ける。


「参加者はいないようだぞ」

「へ、へへっ……」

「二対一で決まりだな」

「ちょ、ちょ待てよ!」


 もちろん、ヴェイグは待たない。


「人数を自由にしてやったんだ。ルールは俺が決める」

「だからちょ待てよ!」

「デッドオアアライブだ」


 ヴェイグがそう言った途端、酒場から歓声が起きた。


「「ちょ待てよー!!」」


 クズ達が悲鳴を上げる中、成り行きを見守っていた一人の冒険者(リサヴィ派)がヴェイグに尋ねる。


「立会人がいないなら俺がやろうか?」

「じゃあ頼む」

「よし、それじゃあ、さっさと終わらせよう。外に出てくれ」


 ヴェイグとイーダが外に出た。

 観戦しようと客達も続く。

 だが、決闘相手であるクズ二人は酒場から出ようとせずに必死に抵抗する。


「じょ、冗談だって!軽い冗談なんだ!本気にすんなよ!!」

「なあ!?わかんだろ!?」

「わからん。さっさと来い!」


 クズ二人を酒場にいた立会人のパーティ(彼らもリサヴィ派)が外へ引きずっていく。

 決闘のことはすぐに広まり、あっという間に見物人が集まってくる。

 決闘を見守る冒険者達の中には武器をいつでも抜けるように準備している者も少なくない。

 クズ達が逃げ出したら即殺す気満々のようで、ヴェイグより気合いが入っている。

 言うまでもなく、彼らはリサヴィ派だ。

 クズ達に逃げ場はなかった。



「今から二対一の決闘を始める!ルールはデッドオアアライブ!」


 立会人の宣言に場が盛り上がる。

 決闘相手であるクズ達は除く。

 クズ達は見物人達に囲まれた中で責任の擦りつけ合いを始めた。


「待ってくれ!いや、待ってくださいヴェイグ!いや、ヴェイグ様!俺は違うんだ!リーダーが!このクズが決闘を言い出したんだ!俺はあんたと争う気はなかったんだ!」

「てめえ!」

「本当のことだろが!」

「ざけんな!ヴェイグ!騙されんなよ!元凶はこいつだ!こいつがお前を利用しようって言い出したんだ!俺は反対したんだ!」

「ざけんな!」


 ヴェイグが冷めた目をクズ戦士に向けて言った。

 

「どっちかと言えばお前の方が許せん。俺の仲間をモノ扱いしやがって」


 クズ戦士が怯える。

 

「わ、悪かったって!本気じゃなかったんだ!」


 このチャンスを逃すまいとクズリーダーが保身に走る。

 

「わかった!こいつは好きにしていい!だから俺は見逃してくれ!なっ?それくらいいいだろう!?」

「なっ!?リーダー卑怯だぞ!!」

「……」


 クズ戦士が必死に言い訳を始める。


「あ、あれはリーダーに言えって命令されたんだ!ほんとだ!」

「てめえ!嘘言ってんじゃねえぞ!」

「嘘じゃねえだろ!いつもリーダーが言ってる事を真似しただけだ!」

「ざけんな!」

「……御託はいい。さっさと始めるぞ」


 しかし、クズ達は決闘したら死ぬとわかっているので、見物人から同情を誘おうとする。


「聞いてくれよ!俺らは決闘を承諾してねえんだ!」

「無理矢理決闘させられんだっー!」

「善良な俺らを助けてくれっー!」


 恥も外聞もなく喚き続ける彼らの姿はどこに出しても恥ずかしい、情けなさっぷりであった。

 流石のヴェイグも興醒めした。


「土下座して謝罪しろ」


 クズ達は喚くのをやめてその場に土下座した。

 やり慣れているのだろう。

 とても見事な土下座であった。

 そして、


「「申し訳ありませんでしたヴェイグ様」」


 と頭を地面に擦り付けて謝罪したのだった。



「いいのか?」


 立会人はヴェイグより不満そうな顔で尋ねる。

 ヴェイグは彼がリサヴィ派だと薄々思っていたが、今の態度で確信する。

 だからと言って何かするわけでもない。


「アホらしくなった」

「……わかった」


 立会人が周囲に聞こえるように決闘が中止になったことを叫ぶ。


「このクズ達は自分達から決闘を申し込んでおいて、いざ決闘となったら怖気付いた!見ての通り情けない姿を晒して決闘をなかったことにしたいと懇願した!自ら多対一という卑怯な決闘方法を持ち込み!更に追加の参加者を集うという愚行までしたのにだ!本来であればこんな自分勝手な事は許されない!ーーこの冒険者の恥晒しのクズどもが!!」


 立会人の「クズ」の言葉の直後、見物人の誰かが「クズ!」と叫んだ。

 それに呼応し、他の見物人からもクズコールが巻き起こる。


 クッズ

 クッズ!

 クッズ!!


 クズコールを一身に受けるクズ達だが、「クズの名は伊達ではない!」とでもいうように(本人達にクズの自覚はないが)精神的ダメージは皆無で土下座したまま卑屈な笑みを浮かべていた。



 立会人が手を上げてクズコールを止めるとクズ達に吐き捨てる。


「今回の決闘は中止とする!!街からとっとと出て行け!クズ共!!」


 クズ二人は素早く立ち上がると土下座直後とは思えない軽快な動きでその場から走り去って行った。



 ヴェイグのそばにイーダがやってきてぼそりと呟いた。


「なんかさ、あの立会人のほうがあんたより怒ってない?」

「リサヴィ派だからだろ」

「ああ」


 ヴェイグはクズ二人の後を追う冒険者達がいるのを見逃さなかった。

 その者達が立会人のパーティと親しそうにしていたのを思い出し、彼らもリサヴィ派であると確信する。


「……まあ、俺の知ったこっちゃねえ」

「ん?」

「いや、なんでもねえ」



 今回の騒ぎ以降、クズ達がヴェイグを勧誘する事はなかった。



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