555話 ヴィヴィ、クズに絡まれる その2
ヴィヴィがそろそろ“終わり”にしようかと考えていた時だった。
「もしかしてヴィヴィさんじゃないですか!?」
ヴィヴィは新たに現れた者達に目を向ける。
「ぐふ、お前達マルコにいたのか」
それはマルコで最初に行った新米冒険者研修に参加した者達だった。
「はい!って言っても依頼を終えてついさっき帰ってきたばかりなんですけど」
「ぐふ。依頼か。という事はお前達でパーティを組んだのか?」
「「「はい!」」」
全員が頷いた。
ただ、そこにいたのは三人だった。
新米戦士Bの姿はなかった。
それに新米戦士A、いや、Eランク戦士が気づき補足する。
「あいつは別のパーティに入りました」
「ぐふ、そうか」
そこにクズパーティが会話に割って入る。
今まで静観していたのはこのパーティにはすでに魔装士がおり、ヴィヴィを勧誘に来たのではないとわかっていたからだ。
「おい、もう挨拶はいいだろ!さっさとどっか行け!」
「ぐふ、お前らがな」
「「「ざけんな!」」」
Eランク戦士が遠慮気味に尋ねる。
「ヴィヴィさん、この人達は?」
「ぐふ、気にするな。通りすがりのクズだ」
「誰がクズだ!?誰が!」
「てめえ棺桶持ち!いい加減にしろよ!こっちが下手に出てりゃいい気になりやがって!」
「ぐふ、全く気づかなかったな」
「ざけんな!お前は俺に慰謝料払うってのもあるんだぞ!忘れようたってそうはいかねえぞ!コラっ!」
クズ戦士がリムーバルバインダーを殴って真っ赤に腫れた拳をヴィヴィに見せつける。
「……これはまたすごいクズだ」
Eランク盗賊の呟きを聞き、クズ達が激怒する。
「お前らも生意気だぞ!ランクを言ってみろ!!ランクを!!」
と言いながら言う暇を与えずに「俺らはな!」と続ける。
そして、クズ三人が揃って腕を組んで仁王立ちして同時に叫ぶ。
「「「Cラーーーンク!冒険者だぞ!!」」」
これまた見事なハモリっぷりだった。
そして、その顔はとっても誇らしげだった。
「そうですか、すごいですね」
Eランク戦士がどうでもいいように返事した。
「てめえ……」
クズ達が顔を真っ赤にして怒りを露わにするのを無視してEランク魔装士がヴィヴィに言った。
「そんなことよりヴィヴィさん!また冒険者研修したんですよね!?俺達も参加したかったんですけど、一度受けてるからダメだって断られたんですよ!」
「ぐふ、それでいなかったのか」
「そうなんですよ!それでですね、今度また見てもらえませんか?俺、前より更に出来るようになりましたんで!」
「ぐふぐふ」
「てめえら!人の話を!……ん?……冒険者研修だと……?」
クズ達の表情が怒りからあほ面へと変化する。
「ま、まさか、てめえ、いや、お前、リサヴィの棺桶持ち、さん?」
「ぐふ、それで敬ってるつもりなのか、クズ」
「なっ、てめえ……、いや、しかし……」
クズ達は勧誘していた相手がリサヴィのメンバーだと知り、慌てて必死にク頭脳を働かせる。
しかし、散々リサヴィと一緒に行動する妄想話をぶち撒けた後である。
ク頭脳をフル回転させたがすぐにはいいアイデアが浮かんで来なかった。
取り敢えず卑屈な笑みで誤魔化そうとする。
「「「へ、へへっ……」」」
もちろん、そんなものがヴィヴィに通じるわけがない。
いや、ヴィヴィでなくても通じないか。
「ぐふ、わかったらさっさとどっか行け、クズ」
「へっ、へへっ、そんなこと言うなよ」
「だな!こんだけ話したんだ。もう親友って言っても過言じゃねえぜ!」
「だな!」
「ぐふ、そんなわけあるか、クズ」
クズリーダーはこめかみに怒りマークを浮かべながらも必死に笑みを保ち失態をなかったことにしようとする。
「おいおい、クズなんて言うなよ。なあ、わかんだろ?」
「ぐふ、さっぱりだ」
「じゃ、じゃあこうしようぜ!さっきのよ、俺を怪我させたのは無かったことにしてやる!」
「それだ!」
「グッジョブ!」
クズ戦士は仲間に褒められて満更でもない顔をする。
ヴィヴィは呆れた顔、と言っても仮面で顔は見えないが、で言った。
「ぐふ、そういえばそんな言いがかりをつけられたな」
クズ達はヴィヴィの言葉を聞いて今更ながらに逆効果だったと悟る。
「ちょ、ちょ待てよ!」
「バッジョブ!」
なんとしてでもリサヴィと行動したいクズリーダーは苦渋の決断をする。
「よし、わかった!こいつを追放する!」
「リ、リーダー!?」
クズ戦士は驚き、同情を誘う顔をクズリーダー、そしてクズ盗賊に向けるが二人は無視。
苦渋の決断と言ったが、どうやらそうではなかったようでクズリーダーが満面の笑みをヴィヴィに向ける。
「これで満足だろ?これで手を打ってくれるよなっ!?」
「ぐふ、顔なら殴ってやるぞ」
「よし、構わん!好きなだけ殴れ!」
「だな!それであいこだ!」
クズリーダーにクズ盗賊も同意する。
慌てるクズ戦士。
「ちょ、ちょ待てよ!俺は手を怪我してんだぞ!それで……ぐへっ!?」
クズ戦士が宙を舞った。
ヴィヴィのリムーバルバインダーでぶっ飛ばされたのだ。
三回転後、ぼてっと落ちてあほ面晒して気絶した。
「これで……あべっ!?」
「ちょ、ちょま……ひでっ!?」
立て続けにクズが宙を舞う。
二人とも三回転後、ぼてっと落ちてあほ面晒して気絶した。
「ぐふ、やっと静かになったな」
「予備動作なしからの一撃!流石ですヴィヴィさん!」
Eランク魔装士の歓声後、周りから拍手が起きた。
見ればこのやり取りを多くの者達が見学していた。
旅芸人などはイキイキとした表情で今のやり取りをメモしていた。
そこへ兵士がやって来た。
ヴィヴィがリサヴィのメンバーだと知るとそれ以上は尋ねず、あほ面晒して気絶したクズ達を引きずっていった。
「やっぱり噂は本当だったのか」
Eランク盗賊がボソリと呟く。
「ぐふ?噂だと?」
「あれ?ヴィヴィさんは聞いてないんですか?じゃあ、嘘なのかな?」
「ぐふ、その話、詳しく聞かせてもらおう」
「はい、別に構いませんけど」
「ここは目立つから場所を変えませんか?」
「ぐふ、そうだな。またクズに絡まれてもかなわん」
「ではギルドの訓練場へ行きましょう!」
そう言ったEランク魔装士の目的は見え見えであった。
ヴィヴィに見つめられてEランク魔装士は慌てて付け加える。
「さ、流石にギルドの中ではクズ達も控えると思いますのでっ」
「……ぐふ、まあいいだろう。話を聞いた後で少し相手してやる」
ヴィヴィとの稽古を他の二人も望んでいたようで、
「「「やったー!!」」」
と元気よく叫んだ。




