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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
548/868

548話 動き出すクズ

 その日の夜。

 リサヴィが泊まっている部屋に訪問者があった。

 彼らはドアノブを回して鍵がかかっているとわかってからノックする。

 そして、やや小さめの声で話しかける。


『おい、リサヴィ、ちょっと重要な話があるんだ。ここじゃなんだからよ、中に入れてくれ』

『急げよ!』


 用事があるのは彼らの方なのに何故か上から目線で命令してくる。

 そのことに彼らのパーティのリーダーも気付き、言ったメンバーを怒鳴りつける。


『馬鹿野郎!何威張ってんだてめえはよ!』

『す、済まねえリーダー!いつものくせでついっ』

『ったく、だからおめえはダメなんだ!』


 リサヴィの部屋の前で説教が始まった。

 サラ達は今までの行動から彼らがクズであると判断し、無視することにした。



 説教が終わり、再びサラ達にドアを開けるように話しかけてくる。

 が、やっぱりサラ達は無視。

 するとクズ達が怒り出した。

 今まで控えめに叩いていたドアをどんどんどん!と激しく叩き始め、叫び声も大きくなった。

 当然、そんな蛮行が長く続けられるはずもなく、騒ぎを聞きつけて宿屋の主人がやってきた。


「お客様、泊まってる方の迷惑ですのでおやめ下さい」


 そんな言葉でクズ達が引き下がるはずはない。

 すぐさま嘘を生成して吐き始める。


「いや、俺らはリサヴィに呼ばれてきたんだ」


 そう言ったクズリーダーを始め、メンバーの顔はなんか偉そうだった。


「……本当ですか?」

「おう!」


 訝しげな表情をする宿屋の主人にクズリーダーは堂々を嘘を吐く。


「困ったもんだな。約束しておきながら寝ちまったのかもしれんな」

「確かに今日はガキどもの面倒を見て疲れたかもしれん」

「では、また明日出直してはどうですか?」

「まあ、そう言ってやるな」

「は……?」


 宿屋の主人はクズリーダーの言葉の使い方に首を傾げるが、それに構わずクズリーダーは自分勝手な言葉を吐く。


「しょうがねえな。お前、ここの主人だろ。ドア開けてくれ。合鍵ぐらい持ってんだろ」

「急げよ!」


 クズ達の要請を宿屋の主人は間を置かずに答えた。


「お断りします」


 主人の返事を聞いてクズ達が激怒する。


「「「ざけんな!」」」

「客を蔑ろにしていいと思ってんのか!?あんっ!?」

「リサヴィと仲がいいからっていい気になってんじゃねえぞ!?」


 宿屋の主人は仕事柄、この手のクレームには慣れているのだろう、クズ達の脅しに屈することはなかった。

 目を細めてクズ達に尋ねる。


「さきほど自分達の事を“客”と言いましたが、あなた方のお部屋はどこでしょうか?」


 クズ達はその言葉に「うっ」と唸り、一瞬黙り込む。

 彼らはこの宿の宿泊者ではなかったのだ。


「申し訳ありませんが、二階は部外者立ち入り禁止です。お引き取りを」


 もちろん、クズがそんな言葉で引き下がったりはしない。

 クズの誇りが傷つくというものである!

 クズ達が卑屈な笑みを浮かべた。


「そ、そう言ってやるなよ」

「だ、だな!」

「なあ、わかんだろう?」


 クズお得意の相手の返事に乗っかろう作戦を発動する。


「さっぱりです」


 しかし、あっさりと失敗に終わった。


「さあ、さっさと出ていかないと不法侵入で兵士を呼びますよ」

「「「ざ、ざけんな!」」」


 それでもクズ達はやっぱり引き下がらない。


「俺らはリサヴィと話をするまでここを動かねえぞ!!」

「では、兵士を呼びます」

「ちょ、ちょ待てよ!!」


 クズ達が情けない姿を前面に押し出して同情を誘おうとするが効果は全くなかった。

 宿屋の主人は男色家ではなかったのだ。

 これが若いお姉ちゃんなら多少効果があったかもしれないが。

 そこへ新たに一組のパーティが現れた。


「おい、クズ共!さっさと出て行きやがれ!」

「なんだとテメェ!」

「邪魔すんじゃねえ!」

「お前らこそ出て行きやがれ!!」


 その言葉を聞いてそのパーティのリーダーは鼻で笑った。

 

「何言ってやがんだ。俺らはリサヴィの隣の部屋を借りてんだぜ」


 そう言ったそのパーティのリーダーを始め、メンバーは誇らしげな顔をしていた。

 

「なっ……」

「ほれ、オヤジ、俺らがこのクズの相手をしてやるからよ、さっさと兵士連れてこい」

「ちょ、ちょ待てよ!!」

「いやいや、これはお前らのためでもあるんだぞ」

「どこがだ!?」

「今日泊まるとこがないんだろ?一泊でも二泊でも好きなだけ泊まれよ……地下牢に」

「そりゃ、いい!」


 新たに現れたパーティが「がはは」と笑った。

 

「「「ざけんな!!」」」


 更にしばらく言い争いをしていたが、やがて静かになった。

 クズパーティが逃走したのだ。



「クズが!」


 クズパーティを追い払ったパーティのリーダーが彼らの後姿に吐き捨てると笑顔を宿屋の主人に向ける。


「おいオヤジ」

「なんでしょうか?」

「俺らはあのクズと違ってホントにリサヴィと会うを約束してるんだ」

「はあ、そうですか」

「『そうですか』じゃねえだろ」

「はい?」

「開けてくれ」


 宿屋の主人は一瞬、ぽかん、とするが、すぐに立ち直ると彼ら、ネオクズに向かって言った。


「お断りします」

「おいおい、まさか俺らの言うことが信じられないと言うんじゃないだろうな?」

「全く信じられません」


 宿屋の主人は間を置かずに答えた。


「「「ざけんな!」」」

「いえ、ふざけているのはお客様方です。そんな非常識なこと出来ません」

「安心しろ。俺らの言う事は本当だ。俺らが保証する!」

「いえ、信用できないあなた方の保証などなんの意味もありません」

「ざけんな!」

「俺らはCラーンク!冒険者だぞ!」

「ランクがなんであろうと約束してるかどうかとは関係ないですね」


 もっともな意見であったが、クズがその程度で引き下がるわけがない。


 結局、その騒ぎを聞きつけた別の部屋のパーティが彼らネオクズの相手をしているうちに宿屋の主人が兵士を連れてきて騒ぎは収まった。

 その間、リサヴィが部屋から顔を出すことはなかった。



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