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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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544話 自信過剰な冒険者達との再戦

「これで終了ですね?」


 全ての試合が終了したことをサラがモモに確認する。

 

「はい、そうなんですが、後六人お願いできませんか?」

「六人、ですか?」


 モモの合図でギルド警備員が六人の冒険者を連れて来た。

 それはリオにあほ面気絶させられて退場した自信過剰な冒険者六人衆であった。

 彼らは登場時とは打って変わって神妙な顔つきをしており、前に出ると頭を下げた。

 

「「「「「「さっきはすみませんでした!」」」」」」

「「「「……」」」」

「この通り彼らも反省していますのでもう一度試合をしていただけないですか?」

「お断りしますっ!」


 そう言ったのはアリスだった。

 彼女の彼らに対する怒りは収まっていなかった。


「アリスさん、そう言わずに」

「ではっ、わたしが相手をしましょうっ!もちろんっ、怪我は治しませんっ」

「いや、治しなさいよ」


 サラが思わず突っ込む。

 アリスの怒りように彼らは微妙な反応を示す。

 どうやら彼らはアリスになら勝てると思って対応に困っているのだとサラは察する。

 実際に戦ったらアリスが勝つとサラは思っている。

 ただし、手加減ナッシングであろうから下手したら死者が出るかもしれない。


「アリス、落ち着いて」

「でもっ」

「確かにあれで終わったら研修に参加した意味がありません」

「……わかりましたっ」


 アリスは不満顔をしながらも引き下がった。


「ではやりましょう」

「ありがとうございます」


 モモの後に自信過剰だった冒険者達も礼を言った。


「リオ、どうしますか?あなたがやらないなら私が相手しますが」

「……」


 リオが返事をしないのでどうしたのかと思って見ると、リオは研修を見学している者達を見ているようだった。

 

「リオ?」


 再度名を呼ぶとリオはサラに顔を向けた。


「なに?」

「ですから、彼らの相手をどちらがするか相談しているのです」

「どっちでもいい」

「わかりました。では半分ずつ受け持ちましょう」

「わかった」


 即席で三人パーティを二組つくって試合を行うことになった。

 連携に問題があるのは疑いようもないが、彼らのために個別に戦う気は流石になかった。

 一組はサラが担当し、もう一組はリオが担当することになった。

 ところで、六人の中にただ一人、心からの謝罪をしていない者がいた。

 最初にあほ面晒して気絶し退場した元傭兵のFランク冒険者だ。

 彼は最初の試合結果に納得していなかった。

 リオの不意打ちで負けたと思っていたのだ。

 リオが担当するパーティにその元傭兵のFランク冒険者はいた。



 サラ達の試合が終わり、リオ達の番になった。

 元傭兵のFランク冒険者は最後まで残ったが、リオにあっさり剣を弾き飛ばされて今回も負けた。

 誰が見ても明らかに実力で負けていた。

 だが、彼は納得しなかった。


(武器を落としたら負けだと!?ふざけんな!本当の戦場ではルールなどない!どんな手を使おうが勝てばいいんだ!こんな甘っちょろいルールなどクソ喰らえだ!)


 リオが剣を落としたその傭兵に背を向けた。

 その瞬間、元傭兵のFランク冒険者は行動を起こした。

 落とした剣を拾うとリオに背後から斬りかかったのだ。

 しかし、リオはその斬撃を振り向きもせずにあっさり回避する。


「なっ!?」


 元傭兵のFランク冒険者は驚くと同時に両腕に激痛が走った。

 腕を見ると両手がなかった。

 リオは剣を握る両手ごと斬り飛ばしたのだ。

 いつ斬られたのかと考える余裕はなかった。


「があああ!!い、いでええ!!」


 元傭兵のFランク冒険者の悲鳴が訓練場に響き渡る。

 今回の研修でここまでの大怪我を負った者はいなかった。

 だが、それでリオの攻撃は終わりではなかった。

 喚くその冒険者の脇腹に蹴りを入れる。

 鈍い音と共に肋が折れ、内臓にダメージを負う。

 流石に彼も実力の差を認めないわけにはいかなかった。

 

「ま、参った!い、痛えから早く治療してくれっ!」

 

 サラはアリスが見下した笑みを浮かべているのを見て、内心ため息をついてから彼の元へ行こうとした。

 しかし、それをリオが手で制した。

 

「リオ?」

「まだ終わっていない」


 リオの言葉を聞き、元傭兵のFランク冒険者が悲鳴を上げる。

 

「ふ、ふざけんな!お、俺は降参しただろう!?」

「降参?」


 リオが首を傾げる。

 全く感情のこもっていない目でその冒険者を見ながら言った。


「ルール無用で始めたのはお前だ。今更ルールにすがるな」


 元傭兵のFランク冒険者はリオの言葉を聞き、苦痛に喘ぎながらもこれ以上戦えないことを訴える。


「ちょ、ちょ待て、いや、待ってください!俺はもう戦えない!」


 しかし、リオに通じない。


「何を言っているんだ?まだ足があるだろ。肘打ちだってできる。それに頭突き、体当たりもね。まだまだ充分戦える」

「う、嘘だろ?」


 リオが本気で言っているとわかり、彼はサラに助けを求めるように目を向ける。


「リオ、彼はもう戦えません」

「……お前にはガッカリだ」


 リオがゆっくりと元傭兵のFランク冒険者に向かっていく。


「リオ!」


 サラの制止の声ではリオは止まらない。

 そして、苦痛に歪みながら同情を誘うおうとするその顔面を蹴り飛ばした。

 その冒険者は思いっきり後方へ吹っ飛んでいった。

 そして、倒れるとピクリとも動かなくなる。

 訓練場がしん、と静まり返る。

 誰かが「死んだ……」と呟いた。

 そう思ったのはその者だけではない。

 サラはアリスに声をかけようとしたが、その冷笑を見て諦め、一人で倒れた冒険者の元へ向かった。


 その冒険者は、顔はグチャグチャに崩れ、内臓破裂を起こし、更に両手を失うという、瀕死の重傷であったが、サラの回復魔法で全ての傷を癒すことができた。

 先日の、「ラグナを使える」と嘘をついてリオを怒らせたクズの傷より重傷であったにも拘らず、完治することができた。

 サラはこの違いを自分の力が不安定だからとは思っていない。


(恐らくだけど、リオは彼の愚行を“裏切り“と思わなかったからね)



 あれだけの傷を一瞬で治してしまったサラの力は驚くべきものであったが、誰からも驚きの声は上がらなかった。

 その前にリオの圧倒的な力を目にして皆、感覚が追いついていなかったのだ。

 リオの力に陶酔する者、恐怖する者と彼らの思いはそれぞれだった。

 ともかく、これで今回の研修はすべて終了した。



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