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54話 別行動

 翌朝、サラとヴィヴィがリビングに向かうと他の者はすでに集まっており、サラの姿に気づいたカリスが話しかけてきた。

 

「サラっ、大丈夫だったか?」

「……は?なんの事です?」


 サラは昨夜の事など何も知らない、というように首を傾げる。


「いやっ、サラちゃん、なんでもないんだよっ」


 ナックが慌ててフォローに入る。


「こいつ、昨日見た夢の事言ってるだけだからっ」

「はあ、そうですか」


 サラはカリスに関わりたくないのでその話を広げる事なくナックの話に頷く。

 カリスは何か言いたそうだったが、それ以上は何も言ってこなかった。


 サラ達は朝食を済ますと宿屋を探しに出かけた。

 それについて来ようとするカリスにサラは「私達で大丈夫です」と丁寧に何度も何度も断り、それでもついて来ようとするので困っていると、ベルフィとナックがカリスを説得して、どうにか振り払うことができた。



 サラ達は宿屋を決め、ウィンドと待ち合わせをしている冒険者ギルドに向かう。

 ギルドに入ると冒険者達の視線を浴びた。

 その相手は剣士の姿をしフードを深く被ったサラではなく、もちろんリオでもなくヴィヴィであった。

 理由はヴィヴィの魔装具がカルハン製だったからだ。

 皆の視線を浴びてもヴィヴィは気にしているようには見えなかった。


「サラちゃん、こっち!」


 声のした方を見るとナックとローズがいた。

 

「ベルフィ達はまだですか?」

「あっちあっち」


 ナックが指さしたのは依頼掲示板だ。

 他の冒険者達に混じってベルフィとカリスがおり、何か揉めているように見えた。


 しばらく待っているとベルフィ達が戻って来た。

 ベルフィはその手に依頼書らしきものを持っており、カリスはどこか不機嫌そうに見えた。


「もう依頼を決めたのですか?」

「ああ」

「でもお気に入りがなかったようだな」

「いや、そうでもない」

「そうなのか?その割には面白くなさそうな顔してるぞ」


 ナックの視線がカリスに向けられているのに気づき、ベルフィは納得顔をする。


「……まあ、問題が一つあってな」


 ベルフィはそう言って依頼書を皆に見せる。

 ナックとローズはすぐに意味に気づき意味ありげな笑みを浮かべる。

 サラとヴィヴィは表情を変えず、と言ってもヴィヴィは仮面で表情が見えないのだが、リオだけが首を傾げた。

 

「何が問題なの?」

「よく見てください」


 サラの冷たい視線を受け、リオはもう一度は依頼書を見る。

 そして再び首を傾けた。


「おいおい、リオ。お前のランクはなんだ?」

「Fだけど」

「はあっ!マジでコイツダメだわっ!」

「この依頼はCランク。つまりお前達は受けられないだろ」

「あれ?でもベルフィ達がBランクだから大丈夫でしょ?今までもそうだったし」


 リオは冒険者ギルドに入る前、ベルフィ達に一緒について行った事を言っているのだった。


「アホか。今まではお前がギルド会員じゃなかったからどうでもよかったんだが、今はギルド会員だ。俺達について来てもな、報酬はまあ、分けてやるとしても依頼ポイントはつかないんだぞ」

「ついて来ても報酬は渡さないわっ!」


 ナックの説明にローズが口を出す。


「だとさ。完全にタダ働きだぞ」

「それで済めばいいがな。規約違反で下手したら会員取り消しになる事もある」

「そうなんだ」

「ま、こうなる事は最初からわかってたけどねっ!」


 リオはともかく仲間になった神官の冒険者ランクがFなどとは誰も予想していなかった。


「ぐふ。では私達は別の依頼を受けるか?」

「そうだね。いい?ベルフィ」

「ああそうだな。それが丁度いい」

「『丁度いい』とはどう言う意味ですか?」


 サラの問いにベルフィが説明を始める。


「俺はお前達をパーティに加入させるかどうかをヴェインで決めると言ったな」

「はい」

「ぐふ」

「お前達の力は合格だ。だが、今すぐウィンドに入れることはで出来ない」


 その言葉に真っ先に食いついてきたのはカリスだ。

 

「おいっベルフィ!それじゃあ話が違うだろ!」

「落ち着けってカリス。お前は当事者じゃないだろ」


 ナックの言葉を受けて少し冷静さを取り戻したカリスがサラを見た。


「サラっ、お前はどうなんだ?お前は俺と、俺達のパーティに早く入りたいだろ!?」


 サラはカリスの問いには答えず、ベルフィを見た。


「まず理由を聞かせてください」

「そ、そうだっ!理由だベルフィ!」


 ベルフィが頷き、その理由を話す。


「理由は簡単だ。お前達の冒険者ランクが低すぎる。お前達をパーティに加えるとパーティランクが下がる」


 その説明にローズが嬉しそうに頷く。

 ヴィヴィが口を開いた。


「ぐふ。それだけか?」

「そうだ」

「ぐふ。そうするとリオもウィンドには入れないと言う事になるぞ」

「こんな奴入れる気なんか最初からないよっ」

「ああ!」


 ロースの言葉にカリスが同意する。

 その後に「そうなんだ」とリオの感情のこもっていない言葉が聞こえた。


「もちろんリオもだ。だからお前達はランク上げに励め」

「わかった」


 リオが何も考えていないような顔で言った。

 その後にサラ、そしてヴィヴィも頷く。


「サラは本当にそれでいいのか?」


 カリスはまだ不満のようでサラに問いかけるが、「はい」とあっさり返事され失望した表情をする。


「でもベルフィ、相手が金色のガルザヘッサの時は僕もついて行くよ」

「ああ」

「その時は私も同行させて頂きます」

「ぐふ。私もだ」

「わかった。ともかくまずは全員Eランクに上がれ。Eランクに上がれば一つ上のDランクの依頼を一緒に受けられるようになるからな」

「うん」

「わかりました」

「ぐふ」

「ちょっとベルフィ!Dランクの依頼なんかあたいは参加しないよ!」


 早速、ローズが不満を口にする。


「その話はリオ達がEランクに上がってからだ」

「……わかったよっ」


 不満である事を隠しもせずローズが言った。


「サラ、俺がいなくて大丈夫か?どうしてもって言うなら俺はお前につい……」

「いえ、お構いなく。お気をつけて」


 サラはカリスの言葉を遮って満面の笑顔で別れの挨拶をする。

 カリスはまだ未練がましい顔をしていたがそれ以上は何も言わなかった。

 こうしてリオ達は再びベルフィ達と別行動を取ることになった。



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