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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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536話 ヴェイグとクズの決闘 その1

 ヴェイグとイーダが街の出口に向かっていると前方に二人の冒険者が立っていた。

 腕を組んで仁王立ちして、である。

 彼らは通行人を物色しているように見えた。

 イーダがぼそりと呟く。


「なんかクズ臭がして来たわ」

「そうだな」


 その冒険者達はイーダを見ていやらしい笑みを浮かべた。

 そして、すぐそばまで来たイーダにキメ顔をする。

 もちろん、イーダは無視。

 そのままヴェイグ達が彼らの横を通り過ぎようとすると彼らが前に回り込んできた。


「おい、ちょっと待てよ」


 一人がそう言って、再び腕を組み、仁王立ちしてキメ顔をイーダに向けて言った。


「おいお前、冒険者の魔術士だな?」


 イーダは面倒臭そうな顔をしながら答える。


「それが何?」

「実はな、俺らちょうど魔術士を探していたんだ。だからお前を俺らのパーティに加えてやる」

「よかったな」

「結構です」

「「……」」


 その冒険者達はイーダに速攻で断られ、キメ顔があほ面に変わる。

 が、すぐに真っ赤に染まり怒り出した。


「「ざけんな!」」


 ヴェイグが面倒臭そうな顔をし、手でしっしっ、と犬でも追い払うような仕草をしながら言った。


「邪魔だ。さっさと退け」

「ざけんな!邪魔なのはお前だ!」

「おう!その女は俺らのパーティに入るんだからな!」

「それはお前らの妄想だ」

「「ざけんな!」」


 二人がヴェイグを睨みつける。

 彼らはヴェイグが若いだけで低ランク冒険者だと判断したようだ。


「お前!ランクを言ってみろ!」

「俺らはC!ラーンク!冒険者だぞ!」

「またかよ」

「またみたいね」

「ほら!俺らは言ったぞ!お前もランクを言え!」

「おう!さっさとな!」

「面倒くせえ奴らに会っちまったな」

「ほんとね」


 あまりにしつこいのでヴェイグ達が「Eランクだ」と答えると彼らは勝利を確信したような笑みを浮かべる。

 もちろん、ヴェイグ達には彼らに勝利の美酒を飲ませる気はない。


「ほれ、これで満足だろ。さっさとそこを退け」

「ざけんな!」

「話はこっからだろうが!」


 そう言って彼らがイーダに目を向ける。


「おい、お前!たまたま、ちょうど俺らのパーティに欠員が出来たから仲間に誘ってやったんだぞ!」

「こんな幸運滅多にないぞ!喜んですぐにパーティに入るところだろうが!」

「不幸の間違いでしょ。パーティは間に合ってるわ」


 その言葉に冒険者の一人がヴェイグを見て鼻で笑いながら言った。


「おいおい、お前、もしかして俺らがそのE!ラーンク!冒険者より弱いとでも思ってんのか?」

「C!ラーンク!冒険者の俺らがよ!」

「ええ、思ってるわ」


 イーダが速攻で答えると彼らはまたもあほ面を晒す。

 が、すぐに立ち直った。


「おいおい、冗談はよせ。俺らの腕はホンモンだぞ!」

「おう!俺らが保証する!」


 そう言った彼らの顔は誇らしげだった。


「クズ確定ね」

「まあ、もっと前からこいつらはクズだとわかってたがな」

「「誰がクズだ!?」」


 ヴェイグが尋ねる。


「お前ら、なんでパーティに欠員が出てんだ?」


 ヴェイグの問いにクズ達は偉そうな態度で答えた。


「奴は力不足でな。俺らのパーティに相応しくないと判断したんだ」

「力不足ねえ……ホントはよ、そいつ、不正合格者だったんじゃないのか?」

「「な……」」

「そんでお前らも不正合格者でよ、それがバレるのを恐れて追い出したんじゃないのか?」

「「ざざざざ、ざけんなっー!!」」


 ヴェイグに図星を指されてクズ達の一際大きな叫び声が街中に響き渡った。

 それに驚き、何事かと通行人達が足を止める。

 クズ達も流石に目立ち過ぎたと思ったようだ。


「……わかった」

「やっとわかったか」


 言うまでもないと思うが、クズの「わかった」は一般人とは異なる。


「仕方がないからお前も俺らのパーティに入れてやる」

「は?」

「だが、当然E!ラーンク!のお前は下っ端だ!」

「これからはその女とのお楽しみは俺らが終わった後だからな!」

「それも俺らの許可を得てからだ!」


 そう言って鼻の下を伸ばすクズ達。

 ヴェイグの目がすっと細まる。


「……は?お前ら何言ってんだ?」


 ヴェイグの放った殺気にクズ達は気づかなかった。

 それどころか、生意気だと激怒する。


「もう許さんぞ!決闘だ!」

「おう!決闘だ!逃げんなよ!」


 クズ二人が「決闘だ!決闘だ!」と騒ぎ出す。

 クズ達は二ランクも下のヴェイグに負けるはずはないと思っていた。


「……あー、面倒くせえ。だが、ここできっちり片をつけといた方がいいか」


 ヴェイグはクズ達との決闘を受けることにした。

 


 ヴェイグ達は決闘によく使われる中央広場へ移動した。

 噂を聞きつけ、野次馬がぞろぞろ集まってくる。

 どちらが勝つか賭けを始める者もいるようだ。

 ヴェイグは内心、「俺も自分に賭けたいぜ」と思いながらクズ達に確認する。


「で、ルールは?」

「決まってるだろうが!後腐れなくデッドオアアライブだ!」

「ほう、いいだろう」


 クズ達はこのルールを聞いてヴェイグが怯えて逃げ出すと思っていたのだが、あっさり条件を飲んだのでちょっぴり不安になった。


「あれ?もしかしてこいつ強いんじゃね?」


 と。

 ヴェイグはそんな彼らの心情を気にすることなく話を進める。


「で、どっちから来るんだ?」


 クズ二人が視線を交わす。

 それで意思疎通はバッチリだった。


「はっ、お前如きに時間をかけてられるか!」

「まとめて相手してやるぜ!」


 ヴェイグは一瞬、クズ達はイーダとも戦う気なのかと思ったが、クズ二人が同時に剣を抜いて構えるのを見てそうではないと気づく。

 ヴェイグは呆れた顔をしながら言った。


「お前らがまとまってかかってくんのかよ。普通は俺が言うセリフだぞ、それ」

「「ざけんな!」」


 


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