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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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531話 神官の反省

 デスヴァイパーとの戦いに終わりの時がやって来た。

 最後の一体をヤックが倒し、デスヴァイパーは全滅した。

 


 リサヴィの戦績は以下の通りである。


 リオ:赤いデスヴァイパーを含む五体、

 アリス:四体、

 ヴィヴィ:三体、

 サラ:二体、

 の計十四体である。

 リオは「なんだ」と呟いた通り、赤いデスヴァイパーに苦戦することなく一人であっさり倒した。


 一方、ニューズ達は、


 魔術士が単独で三体、

 ニューズのメンバーが五体に止めを刺したが、単独で倒したものはなく誰が倒したかは判断が難しい。

 毒や怪我を神官とサラが治療したり、魔術士のフォローがなければこの戦績はなかっただろう。

 ともかく、九人で合計二十二体を討伐したのであった。



「しかし、まだまだだな俺も」

「どうした?」


 落ち込んでいるように見える神官がそう呟くのを聞き、魔術士が尋ねた。

 神官は魔術士に尋ねられて声に出していた事に気づく。

 少し躊躇したものの、話し始める。


「サラはともかく、アリスまで接近戦ができるとは思わなかったぜ。それもあれほど強いとはな。なんかショックだぜ」


 神官はサラがサポートに来た事で少し余裕ができて全体の様子を確認した。

 その時、アリスがメイスでデスヴァイパーを打ち倒すのを目にしたのだった。

 魔術士もアリスがデスヴァイパーを倒す姿を思い出す。

 それはサポートに徹する神官ではなく、戦い慣れた、頼りになる前衛の姿であった。


「……確かに驚いたな。俺もアリスはサポート専門だと思っていたからな」


 その話が聞こえていたらしくアリスがやって来て会話に参加する。


「リオさんは最近っ怪我をしませんからっ、わたし達っ神官は手持ちぶたさなんですっ」


 その言葉に魔術士がすかさず突っ込む。


「いや、だからって接近戦挑むのもどうかと思うぞ。そこまで追い込まれてたんなら別だけどよ」

「えへへっ」

「いや、『えへへ』じゃないだろ」


 神官がアリスの顔を見てため息をつく。


「この戦いで神官、いや、魔物倒してないの俺だけだぜ」


 彼らの話にサラも参加する。


「あなたは何を言っているのですか。それは当然でしょう」

「サラ」


 サラが彼の貢献を言葉にする。


「あなた一人でニューズの三人をサポートしていたのです。あなたまで戦っていたら噛まれた彼らを素早く治療出来ず、犠牲者を出したかもしれません」


 サラに褒められて神官は満更でもない顔をするが、それでもやはり納得はしていないようだ。


「でもよ、途中からお前だってサポートしただろ……」

「ええ、途中から、です」


 それまでは間違いなく彼の活躍だと強調する。

 その言葉で神官はやっと少し自信を取り戻したようだ。

 サラは更に続ける。


「それよりも戦いに参加して手遅れになる方が問題です」

「いや、まあそうなんだけどよ」


 魔術士も神官のフォローをする。


「冷静に考えろよ。リサヴィが特別なんだ。全員戦士というわけでもないのに全員が前衛出来るリサヴィがおかしいんだ。これが普通だと思うのは間違いだ」


 おかしい、と言われてサラは複雑な思いだが魔術士の言っている事は間違ってはいない。

 それでも神官はまだ納得しない。


「それだけじゃないんだ」

「といいますと?」


 神官は今までの行動を振り返っての思いを口にする。


「俺よ、これまでほどんど魔物と戦ったことなかったんだ。ずっと後衛にいてみんなに守られていたんだ。でも今までは、さっきまではそれでいいと思ってたんだ。直接戦うのは前衛である戦士の役目だって組んだパーティにも言ってたんだ」


 彼はこれまでに入ったパーティに直接的、間接的問わず、「戦闘に加われ」と言われた事がある。

 当然のように断った。

 それが元でパーティを出て行ったこともあった。

 それでも彼はパーティ選びに困らなかった。

 それだけ冒険者の神官は少なく貴重だったからだ。

 

「……だが、違ったんだ。その言葉は本当は自分に言い聞かせていたんだってわかった」

「……」

「確かに今回に限って言えば俺の行動は正しいんだろう。だが、これからも、どんな時も任せっきりでいいとは思えなくなった。任せっきりじゃダメだと思ったんだ」

「その考えは正しいですね」


 サラの後に魔術士が続く。


「そうだな。さっきアリスに言ったが神官でも前に出て戦わなければならない時が来ると思う。もちろん、魔術士の俺もな」

「やっぱそうだよな」

「しかし、あなたは近接戦を全くした事がないわけではないでしょう?教団で訓練を受けているはずです」

「……サボってた」

「「……」」


 サラと魔術士の冷めた目を受けて神官は慌てて言い訳を始める。

 

「いやっ、最初は真面目にしてたぜ!でもよ、武器を扱うのが上手い奴がいてよ、そいつが何かにつけて俺に絡んできて嫌味を言うんだよ。まあ、そいつは俺と違って魔法をなかなか授からなくて焦ってたみたいなんだがよ。そんでまあ、そいつとの言い合いでだな、『俺には魔法があるから武器なんか扱えなくていいんだ』とムキになってだな……」

「訓練をサボるようになったと?」

「ま、まあ、話はそう単純じゃないんだが、結論だけ言えばそういうことになるな。うん!」

「「……」」



 サラが神官に今後のことについて尋ねる。

 

「それであなたはどうする気ですか?苦手と言ってるだけでは強くはなりませんよ」

「それはわかってるさ」

「サボっていたとはいえ、基本くらいは覚えているのでしょう?」

「たぶんな。でもあれからだいぶ時間が経ってるから自信ないな……」

「確かにそんな状態でいきなり実戦は無謀でしょうね」

「そうなんだよな……」

「では、別荘周辺の調査が済んだ後でよければ私が見ましょうか?」


 サラの言葉に神官の表情がパッと明るくなる。


「ほんとか!?是非頼む!」

「ええ」



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