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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
529/868

529話 ハモリクズの追跡

 翌朝。

 サラ達は別荘へ向けて出発した。

 村を出てすぐだった。


「「待て待てっー!!」」


 そう叫びながらハモリクズが村から追いかけて来た。

 彼らは深夜にこの村に着いていたのだ。

 サラ達に気づかれると置いてけぼりを食らう可能性があるため、この時まで身を隠していたのである!

 うんざりした顔をするサラ達にハモリクズは追いつくと文句を吐き始める。


「「よくも俺らを街道なんかに置き去りにしやがったな!!」」


 ヴィヴィがリムーバルバインダーでハモリクズを脅すと怯えた顔をして離れた。

 しかし、次の瞬間には得意の卑屈な笑みを浮かべて交渉を持ちかけてきた。


「「まあ、話を聞けって」」

「「おうっ、お前らにだって悪い話じゃないぞ」」


 サラ達が沈黙しているとクズ達は“悪くない話”を話し始める。


「「俺らが指揮を執ってやるって言ってんだぞ!先任!Cラーンク!冒険者であり!リーダー経験豊富な俺達がな!」」

「「そんかわり!報酬は素材を含めて俺らが五割貰う!残りはお前らで分ければいい!」」

「「なっ、全然悪い話じゃねーだろ?」」


 ハモリクズ達の顔を見れば、冗談ではなく本気で言っている事がわかる。

 一応今の言葉を翻訳すると、


「安全なところから応援してやるから報酬として五割よこせ」


 である。

 ヴィヴィがため息をつき、面倒くさそうに言った。


「ぐふ、悪い話しかないな」

「ですねっ」

「「ざけんな!!」」


 神官が見下した目を彼らに向けながら尋ねる。


「じゃあ、聞くけどよ、今の話のどこに俺らに良い話があったんだ?」


 魔術士も続く。


「お前らクズだけに良い話だろ」


 ハモリクズは「「誰がクズだ!?」」と喚いた後、わざとらしくため息をついて言った。


「「お前ら頭悪いな」」


 皆がハモリクズに殺気を向けるが、彼らは気付かなかったようで偉そうに説明を始める。


「「さっき言っただろ。先任Cラーンク!冒険者でリーダー経験豊富な俺達が指揮をしてやるんだ。それでもう勝利は確定だ。それだけで充分だろうが」」


 そう言ったハモリクズの顔はなんか誇らしげだった。

 ハモリクズは今回も本気で言っていた。

 根拠のない自信から来る確信である。

 サラがため息をついて言った。


「話になりませんね」

「ぐふ、全くな」


 サラ達がハモリクズにバカにした視線を向けるが、彼らには通じなかった。

 いや、それどころか、彼らにはサラ達のその行為が自分達の素晴らしい提案に感動しているように見えていた。

 言うまでもなく、彼らは現実を妄想で上書きしたのである!

 もちろん、上書きできるのは彼らの記憶だけだ。

 現実にはまったく効果を及ばさない。


「「よしっ決まったな!」」

「「だな!!」」


 ハモリクズは自分達の妄想を元に話を進める。


「「よしっ、じゃあ、俺達は指揮を取るために隊列の真ん中に入るぞ。これは決してそこが一番安全だからとか言うわけじゃないからな!!」」


 サラ達は彼らの言い訳を正しく理解する。

 ハモリクズは偉そうな態度で歩きながらリサヴィとニューズの間に割り込もうとする。


「「「「「「「「「……」」」」」」」」

「「なんだその顔は!?これはリーダーの決定事項だ!文句は言わせねー!!」」

「「棺桶持ち!今度俺達をぶっ飛ばしたらお前の報酬はなしだからな!!」」

「……」

「「絶対殴んじゃねえぞ!!」」


 ハモリクズはそう叫んだ直後、その体が宙を舞う。

 言うまでもなく、ヴィヴィがリムーバルバインダーでぶっ飛ばしたのだ。

 今回も片方だけ殴ったのだが、前回と同様に殴られていない方も一緒に宙を舞う。

 あほ面晒して気絶したクズにヴィヴィが見下した目を向けながら言った。


「ぐふ、今のは間違いなくフリだな。『やれ』と言う」

「ですねっ」


 ヴィヴィは前回と違う方のクズをぶん殴った。

 はずだったが、クズの顔などいちいち覚えていないのでちょっと不安になり、神官と魔術士に確認する。


「ぐふ、私は前回と違う方を殴ったよな?」

「ああ」

「前回は俺の元リーダーだったぜ」

「ぐふ、ならいい」

「つまりっ、どちらも本体っ、と言う事ですかっ」

「ぐふ、そのようだ」


 アリスとヴィヴィの人間扱いしていない酷い言いように誰からも同情の声は出なかった。

 あほ面晒して気絶したハモリクズをその場に放置してリオ達は歩みを再開した。

 もう誰もクズ達が魔物に襲われることを心配しなかった。



 そして、しばらくするとまたも後ろから叫び声が聞こえてきた。


「「待て待てっー!!」」


 ハモリクズである。

 もう復活して追いかけてきたのだ。


「ぐふ?やけに気づくのが早いな。もう片方は気絶した振りをしていたか?」


 ヴィヴィの呟きを神官が首を振って否定する。


「確かに二人とも気絶していたぞ」

「ぐふ、では打撃耐性でも出来たか」

「誰かに起こされたのかもな」

「考えるだけ無駄ですから無視して先を急ぎましょう」


 ハモリクズがサラ達に追いついた。

 三度目の正直と言うべきか、流石に学習したようで隊列に割り込む事はせず、最後尾で「「俺達がリーダーだからな!」」と喚く。

 もちろん、みんな無視した。

 相手にされなくてもハモリクズは後をついてきた。


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