528話 別荘近くにある村
サラ達は途中でウォルーの襲撃を受けたが難なく撃退した。
その時、戦ったのはニューズと神官、そして魔術士だ。
彼らがデスヴァイパーと戦う前にパーティ連携の確認をしたいと言ったので任せたのだ。
多少問題はあったが、ウォルー相手だったので危機に陥る事はなかった。
戦いの後、ニューズ達は歩きながら連携確認を行なった。
昼前。
街道のキャンプスペースで少し早めの昼食を取る事にした。
朝が早かったこともあり皆、お腹が空いていたのだ。
「相変わらずリオさんの料理はうまいですね!」
ヤックに続きソウオン、リイも大絶賛するが、
「そうなんだ」
とリオの返事は相変わらずであった。
「お前、ほんと料理うまいぜ!」
初めてリオの料理を食べた神官も大絶賛だ。
そんな中で一人、魔術士が首を傾げる。
リオの料理が不味いわけではない。
皆と同じく大満足だった。
彼が気になっているのは味ではなく、料理を作った相手のことである。
彼は以前、クズパーティにいた時にリサヴィの料理を食べた事があった。
その時は鍋の周りについたシチューの残りをパンにつけて食べた程度だったが、その味を覚えていた。
そのときの料理はサラが作ったと思っていたのだが、今回、リオが作った料理と味が同じ気がしたのだ。
考え込んでいる魔術士にアリスが気づいた。
「どうしたんですかっ?」
魔術士は声をかけられて顔を上げた。
「あ、いや、以前にお前達の料理を食べた事を思い出してな、って、そうだ、あの時は勝手に食べて済まなかった」
当時、クズの一員だった魔術士はクズリーダー達と共にサラ達の料理を許可なく勝手に食べたのだった。
魔術士が頭を下げて謝罪する。
「ぐふ、もう済んだことだ」
「ですねっ」
「そうですよ」
「そう言ってもらえると助かる」
魔術士がほっとした顔をした。
ところで、
よかれと思った行動が予期せぬ結果を及ぼすことがある。
この時のサラがそうだった。
サラは魔術士が他にも何か心配事があるように見えたので親切心で尋ねてしまった。
「まだ気にしている事があるのではないですか?」
「あ?ああ。まあ、大したことではないんだが……」
そう前置きして魔術士は話し始めた。
「以前、食べたシチューの残りだが、俺達はてっきりサラが作ったと思っていたのだが、あれもリオだったのか?」
「……」
サラが沈黙するのに構わず魔術士は続ける。
「その時は否定しなかったのでサラが作ったと思ってたんだが、……あ」
そこまで言って魔術士はこれ以上、踏み込んではいけないと察した。
「悪い!どうでもいい話をして!忘れてくれ!」
しかし、意地が悪いことには定評のあるヴィヴィが代わりにぐっと踏み込んで来た。
「ぐふ、お前は命拾いしたのだ」
「何?」
「あなたは何を……」
「ぐふ、私はあの時、サラに言ったのだ。『希望通り手料理を食わせて仕留めてやれ』とな」
「ちょ……」
「サラの料理はそこまで酷いのか!?」
「ぐふ!」
ヴィヴィが思いっきり頷く。
「おいこら!!」
今の会話でサラの料理は相当酷いのだと皆に伝わった。
「私の料理はヴィヴィが言う程酷くありません!」
サラの叫びに皆は沈黙で返した。
ニューズはサラと顔を合わしていけないと下を向く。
サラはこのままでは料理下手が定着してしまうと必死に抵抗する。
「いいでしょう!そこまで疑うなら今度は私が料理を作ります!」
サラの宣言に皆の顔に動揺が広がる。
「ぐふ、サラ」
「なんですか!?」
サラは喧嘩腰にヴィヴィを睨む。
「ぐふ、……食材に謝れ!!」
「まだ作っとらんわ!!」
ヴィヴィがサラの暴挙?を阻止しようと説得にかかる。
「ぐふ、ただでさえ料理が下手なのに加えて一年以上ブランクが空いているのだぞ。今、お前が料理をしてみろ、おそらく腹痛程度では済まないだろう、即死効果が付与されていても私は驚かないぞ」
「そんなわけあるか!!」
サラの叫びが空に虚しく響く。
サラは孤立無援である事を悟る。
「ああ、いるのよね!本人は一口も食べないくせに文句だけ言う人って!」
サラはそうヴィヴィに言い返すのがやっとであった。
そんなサラにみんなが優しい目を向ける。
「その目をやめなさい!」
結局、サラの暴挙(料理)は皆の説得で阻止された。
「ぐふ、リオより上手く作れるのか?」
というヴィヴィの言葉が決定打になったのだった。
その日の夕方。
お婆さんの別荘の近くにある村に着いた。
今日はここで一泊し、早朝出かけることにしていた。
宿屋に向かう前に会わなければならない相手がいた。
お婆さんに雇われて別荘を管理している者がこの村にいるのだ。
その者が別荘近くで魔物を発見してお婆さんに報告したのだ。
デスヴァイパーの件が伝わっているのか、村の中を自警団が見回っていた。
サラ達の姿を認めるとやって来て用件を聞いて来た。
厳しい表情をしていた彼らだが、サラ達がデスヴァイパー退治に来たと知ると態度をころっと変えて笑顔になる。
「是非村長にお話を!」
こうしてサラ達は自警団に村長の家へ案内された。
サラが代表してギルドの依頼でデスヴァイパー退治に来たと告げると村長も大喜びした。
村長もお婆さんがギルドにデスヴァイパー退治を依頼した事は知っていたが、まだ先の話だと思っていたのだ。
そのデスヴァイパーだが、お婆さんの別荘がある私有地からこの村へ近づいているようで、村からも退治依頼を出そうか考えていた。
問題はそのお金をどう工面するかだった。
そんな時にサラ達がやって来たのである。
村長の元へ別荘を管理する者がやって来た。
村長が自警団に指示を出していたようで、サラ達はその者を探す手間が省けた。
サラ達は別荘の位置の確認を行ない、その後、宿屋で体を休めて明日に備えた。




