522話 ハレパ、太陽のカケラ
流れがおかしいところを修正しましたが、本筋は変わりません
宿屋へ向かうリオ達の前に一組のパーティが立ち塞がった。
そのパーティは男一人に女四人の五人パーティだった。
彼らは皆美形であった。
サラは以前に出会った顔だけで実力皆無のパーティ、イケメンズの事を思い出した。
嫌な事思い出したわ、と思いながらもそれを顔には出さずに彼らに尋ねる。
「何か用ですか?」
サラの問いにそのパーティ唯一の男であるリーダーがキメ顔で言った。
「俺達があの“太陽のカケラ”だ」
「はあ」
サラはあの、と言われてもそのパーティ名に全く聞き覚えはなかった。
リーダーはサラ達が知っていて当然だと思っているようで確認せずに話を続ける。
「お前達がリサヴィだな?」
「そうですが」
「ぐふ。用があるならさっさと言え。こちらは暇ではない」
「そう慌てるなってブス」
「……ぐふ」
リーダーはヴィヴィが女であることを最初から知っていたわけではない。
長年の経験(なんの?)からヴィヴィが女であることを見抜いたのだ。
だが、ブスと決めつけていたことからわかるようにまだまだ経験不足(なんの?)であった。
リーダーはヴィヴィを鼻で笑った後でリオに顔を向ける。
「お前がリッキーキラーの……なんだっけ?」
リーダーは隣に立つ女戦士に尋ねる。
「リオよ。そのくらい覚えておきなさいよ」
「はははっ、悪いな。俺は男の名前を覚えるのが苦手なんだ。で、リオ、お前、俺に張り合ってるんだってな」
「ん?」
リオが首を傾げるとおいおい、と笑いながらリーダーが驚くべき事を告げた。
「お前、俺らに対抗してハレパを名乗ってるらしいじゃないか」
「ん?ハレパ?」
「何知らない振りしてるんだ」
リーダーが呆れた顔でリオを見るがリオは首を傾げるのみ。
「まあいい。それに付き合ってやるよ。ハレパとはな、男一人に対して女が四人以上のパーティの事だ」
「あんたが勝手に言ってるんでしょうが」
彼のパーティの女魔術士からツッコミが入った。
「そうだったか?まあいい、俺はそう呼んでいる」
「そうなんだ」
「もう俺が言いたい事はわかるな?」
「どうだろう?」
リーダーから笑顔が消え、凄みのある表情をして言った。
「お前らは条件を満たしてねえからハレパを名乗るな、って言ってんだ」
「私達は名乗ってなどいません」
リーダーはサラに顔を向けると表情から凄みが消え、その代わりにキメ顔になる。
「ちなみによサラ、俺には後二人いるぞ。今妊娠中でな、ホームで安静にしてんだ」
その言葉を聞き、サラは心底軽蔑した目を向ける。
リオはその言葉を聞いて斜め上の感想を述べる。
「じゃあ、本当は七人パーティなんだ」
「まあな!」
そう言ったリーダーはなんか誇らしげだった。
「羨ましいか?リ……、なんだっけ?」
リーダーは隣の女戦士にリオの名前を尋ねる。
「リオよ」
「おう、そうだった。リオ、羨ましいだろ!?」
「別に」
「ははっ、無表情ぶっても無駄だ!無駄無駄!俺にはお前が心ん中で地団駄踏んで悔しがってるのが丸わかりだぞ!」
「そうなんだ」
リオはどうでもいいように返事した。
ヴィヴィが首を傾げる。
「ぐふ。コイツらは何がしたいのかさっぱりわからんな」
「そんなのいつものことでしょう」
アリスが焦った表情で叫ぶ。
「マズイですっ!このままではわたし達からっハレパの称号がなくなってしまいますっ!」
「落ち着いてアリス。そんな称号最初からないから。あると不名誉だから」
「そんな事ないですっ!リオさんの偉大さ伝わりませんっ」
「それ悪い意味だから伝わらなくていいわよ」
「ぐふ。困ったものだな。エロ神官共には」
「一緒にしないで!」
サラは気を取り直して彼らに用件を尋ねる。
「それで何か用があったのではないですか?ないのであれば……」
「そう慌てんなって」
「……」
「お前らが推薦してる宿屋に泊まったんだ」
「……あの部屋ですか。別に推薦などしていません」
サラの声はリーダーには聞こえなかったようだ。
「ハッキリ言ってダメだな。全然ダメだ!」
「はあ」
「どこがダメかわかるか?」
「いえ、興味ないですし」
しかし、リーダーは話を続ける。
「ベッドだ!」
その言葉にアリスが反応した。
「えっ?とっても寝心地いいですよっ?」
「それは認める。だが……」
リーダーは一旦言葉を止めて、続ける。
「シングルってのが最悪だ!」
「「「……」」」
「そうなんだ」
「『そうなんだ』じゃねえ!アレじゃあどう頑張っても三人でヤルのがやっとだ!」
「「「……」」」
「そうなんだ」
「リオはちょっと黙ってて下さい」
「……」
サラは冷めた目でリーダーに反論する。
「私達は別に不満はありません」
その言葉を聞いてリーダーがわざとらしく頭を抱える。
「今の言葉ですべてわかったぜ。リオ、お前、弱すぎだ」
「……」
今までどうでもよさそうに返事していたリオの表情が微かに変化した。
微かに殺気を感じたサラが慌ててフォローする。
「リオ、今のは戦いとは関係ありません」
「……」
リオから殺気が消え、ホッとしたのも束の間、リーダーがまたも余計な事を言った。
「何言ってんだ!戦いだろうが!」
「……」
リオから再び殺気を感じる。
それに気付かないリーダーが偉そうに叫ぶ。
「ベッドの上はな!男と女の戦いの場だ!」
「あなた、いい加減に……」
サラが注意する途中でそのパーティの女戦士が顔を真っ赤にしてリーダーをど突いた。
「こんな道の真ん中で恥ずかしい話しないでよ!」
「ってえな!!」
二人が言い合いを始めた。
「ともかくだ!シングルベッドなんて問題外だ!その点、俺達の家には特注の四人ベッドがあるぜ!それでも今じゃ足りないがな!!わはははっ!」
そう言ったリーダーの顔は誇らしげだったが、他のメンバーの顔は真っ赤だった。
顔から火が出そうだった。
「ほんといい加減にして!」
女戦士を皮切りに全員がリーダーをど突いた。
パーティメンバーにどつかれて顔を腫らしたリーダーがサラ達を見て言った。
「という事でだ。お前らも俺のハレパに入れてやってもいいぞ。十分資格がある!」
「僕はいいや」
空気を読まない事には定評のあるリオが真っ先に断りを入れた。
「……あー、うん、そうだな。俺もお前は誘ってないぞ」
「そうなんだ」
呆れ顔をするリーダーがパーティの一人にど突かれた。
「いい加減にしなさい!これ以上増やしてどうするのよ!?今で一杯一杯よ!」
「だからパーティメンバー増やして稼ぎアップだろ!」
「アホか!そう言って更に苦しくなったでしょうが!」
リーダーはパーティメンバーに引きずられて去っていった。
静かになったところでサラはため息をついて言った。
「……何故、あんな人について行くのかしら?」
「ぐふ」
「あのっ、本で読んだんですけどっ、クズを好きになる人って一定数いるらしいですよっ」
「そうなんだ」
「はいっ。なんでも頼られる事に喜びを感じるとか書いてありましたっ。わたしはゴメンですけどっ。リオさんはクズじゃないですしっ。って、きゃっ、わたしっ、はしたないですっ」
「「……」」
「そうなんだ」




