520話 新米巨乳女戦士争奪戦?
新米巨乳女戦士に声をかけてくる冒険者がいた。
「おい、お前フリーなのか?」
「え?あ、はい、そうですけど」
新米巨乳女戦士は少し怯えた様子で頷く。
「じゃあ、俺らのパーティに入らないか?」
「え?」
「お前、Fランクなんだろ?流石にCランクパーティのリサヴィに入れてくれっていうのは無謀だろう」
「で、でも……」
「ああ、ランクを気にしてるんだな。俺を含めてみんなEランクだが、ちゃんと優しく指導するぞ」
その冒険者は笑顔で言ったが、新米巨乳女戦士は態度をはっきりしない。
彼女が躊躇しているのは、突然見ず知らずの冒険者に誘われたこともあるが、その冒険者の目が彼女の目どころか、顔も見ずにずっと彼女の巨乳をロックオンしていたからだ。
「先程リオに自分から胸をアピールしていただろう?」
と思うかもしれないが、誰にでも見て欲しい訳ではないのである。
見て欲しい相手は自分で選びたいのである!
その冒険者を皮切りにパーティ枠に余裕のある冒険者達が次々と彼女のそばに集まって来てパーティに誘い始める。
ただ、彼らの目のほとんどは彼女の巨乳をロックオンしていた。
「ったく、男どもは」
女冒険者達からそんな呆れ声が聞こえた。
そして、真打が登場する。
「「待て待てっー!!」」
新米巨乳女戦士が背後から聞こえた大声に驚いて振り返ると二人の冒険者がダッシュで向かってくるのが見えた。
言うまでもなくクズ(元リーダー)達であった。
彼らは即戦力を求めているはずであるが、先程の彼女の叫びを耳にし、本能に突き動かされたのだ。
それだけの破壊力が新米巨乳女戦士の胸にはあったようだ。
クズ(元リーダー)達は冒険者達を強引に押し退けると新米巨乳女戦士の前に立った。
そして、仁王立ちで腕を組む。
「「俺らのパーティに入れてやるぜ!」」
そう言ったクズ(元リーダー)達のその顔はなんか偉そうだった。
もとい、エロかった。
彼らはキメ顔をしているつもりのようだが、本能が理性を完全に上回り、その顔には性欲補正が思いっきり入っていた。
彼らと比べれば、さっきまで誘いをかけていた冒険者達など赤子のように可愛いものだ。
まさに、
「クズ冒険者、ここあり!」
と言ったところだろう。
彼らのその素晴らしい顔を具体的に説明すると、
いやらしい目で新米巨乳女戦士の巨乳をロックオンしているのは言うまでもなく、頬が緩み切り、鼻の下は思いっきり伸びきっていた。
更に付け加えると下半身の一部がもっこりしていた。
既にパーティに入った後の“教育“を想像しているようであった。
新米巨乳女戦士は顔を引き攣らせながら叫んだ。
「え、遠慮します!」
彼女は他の冒険者達からの誘いには明確な返事をしていなかったが、クズ(元リーダー)達の誘いは速攻でお断りしたのだった。
もちろん、クズ(元リーダー)達が断られた理由を正しく理解できるはずがない。
「「はははっ、安心しろ!俺らはCランク!冒険者だ!俺達の腕は俺達が保証する!」」
見当違いの言葉を発して安心させようとしたのだった。
「い、いえ、そうではなくて……」
何故かハモって話しかけてくるおかしな冒険者達に新米巨乳女戦士は恐怖する。
そんな事とは知らずクズ(元リーダー)達は勧誘を続ける。
「「他のメンバーも俺達程じゃないが優秀だぞ!」」
「でも無理ですっ」
新米巨乳女戦士は最初ビクビクしてクズ(元リーダー)達の対応をしていたが、対応力が高く、クズ達と平然と会話をかわすようになっていた。
その様子を見てヴィヴィが呟く。
「……ぐふ。あの新米、意外とやるな」
「何感心してるんですか」
ヴィヴィの呟きに呆れるサラであった。
言葉の通じないクズ(元リーダー)達に新米巨乳女戦士がヒステリックに叫ぶ。
「私はあなた達のパーティに入る気はありません!」
「「おうっ、そうか」」
「やっとわかって……」
「「パーティメンバーの話をしていなかったな!」」
「……は?」
「「神官と魔術士もいるから安心していいぞ!腕は俺らが保証する!」」
そう言ったクズ(元リーダー)達は同時に、タイミングバッチリでキメ顔をした。
新米巨乳女戦士が引き攣った顔で固まっているとクズ(元リーダー)達の言葉に抗議する者達がいた。
彼らの元パーティメンバーの男神官と魔術士である。
彼らはクズ達の後を追いかけて来たのだ。
「おい!それは俺らの事じゃないだろうな!?」
「俺らはお前らのクズパーティには入らんぞ!!」
二人の言葉を聞いてクズ(元リーダー)達は激怒する。
「「ざけんな!さっき入るって決まっただろうが!!」」
「こっちが『ざけんな』だ!そんな約束してねえ!」
「話の途中で突然離れていったから諦めたと思ってたぜ!」
「「ざけんな!もう俺らの中では確定なんだよ!」」
「「だな!!」」
二人で自問自答する、というおかしな事が起きたが、彼ら自身は気にしなかった。
クズ(元リーダー)達と関わるのはゴメンだ、と彼らとの距離をとってその様子を見ていた冒険者達が囁く。
(なあ、なんであいつらずっとハモってるんだ?)
(知らんが、すげえ気持ち悪いぜ)
(これ、実は劇の宣伝ってことはないか?)
(あるわけないだろ。見ろ、巨乳ちゃんだけでなく、巻き込まれたリオさん……とヴィヴィさんはわからんが、サラさんとアリスさんは思いっきり迷惑顔してるぞ)
(でもよ、本当に台本も打ち合わせもなしにあんなにハモれるものなのか?)
そんな疑問の声があちこちから聞こえる。
しかし、それに答えられる者はいない。
本人達を含めてである。
たまたま考えが、話す言葉が、タイミングが一致しているのだ。
もはや神技と言っても過言ではないかもしれない。




