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52話 冒険者の街

 冒険者の街ヴェインに到着したウィンドは真っ直ぐ自分達の家へ向かう。

 途中で魔装士の姿を何人も見かけた。


「流石冒険者の街ですね。これほど魔装士の姿を見かけるとは」

「ヴィヴィのとは違うね」

「ぐふ。アレはフェラン製だな」

「そうなんだ」

「今じゃフェラン製の魔装着を使用してる奴の方が多いんだぜ」


 ナックがサラとリオの会話に加わる。


「そうなんだ」

「おお。最初はカルハン製が多かったんだ、てか、カルハン製しかなかったんだけどな。フェラン製が発売されたすぐ後だったか、カルハンと教団がやり合っただろ。で、異端審問官にいちゃんもんつけられるのを避けるためにカルハン製からフェラン製に買い替える奴が後を立たなくってこうなったって訳だ」

「ぐふ。カルハンが外国への販売を停止したこともあるがな。それにしても詳しいな。女以外には興味がないと思っていたぞ」

「はははっ。俺は女と同じくらい魔術全般に興味があるんだ」

「ぐふ」

「そういや、ヴィヴィはフェラン製に買い替えないのか?フェラン製の方が性能がいいって聞くぞ?」

「ぐふ。私はこの魔装具に不満はない」

「そうか。ま、買い替えるとしても魔装具は結構高いからなぁ」

「そうなんだ」



 しばらく進むと明らかに他と異なる雰囲気の地区へ入った。

 サラの表情が変わったのに気づいたナックが説明を始める。


「ここいらは冒険者達の家が固まってんだぜ」

「そうなんですか?こんなのは初めて見ました」

「だろうな。ここに住んでる奴らは強制的に冒険者保険に入らされるんだぜ」


 カリスが話に割り込んできた。


「冒険者保険ですか?」

「知らないか。ナックが言ったがこの区域は冒険者の家が集まってる。溜め込んだお宝も多いって事で強盗やコソ泥がやって来るってわけだ。保険に入る代わりに警備員が常に巡回してるんだ」

「なるほど」

「そうなんだ」

「いや、リオ、お前には前に説明したよな。ま、覚えてるとは思ってなかったけどよ」


 ナックがリオにすかさず突っ込む。



 ベルフィ達の家は三階建てのなかなか大きな家だった。

 

「立派ですね」

「まあな」


 カリスが自慢げな顔をする。


「よし、荷物を置いたら飯を食いに行くぞ」

「おお、久しぶりにさざなみ亭のスープ飲みてえな」

「いいねぇ!」



 リオ達が荷物を下ろすのを見てローズが怒鳴る。

 

「何荷物下ろしてんだい!アンタらを泊める気はないよっ!」

「はあ」

「そうなんだ」

「ぐふ」


 その言葉を聞いてカリスがローズに反論する。

 

「おい、仲間なんだぞ!」

「じゃあ、金払いな。あたいらは均等に金出してんだ」

「まあまあ、そう言うなって」


 ナックも宥めにかかる。

 サラはお金に困っているわけでもないので正直どちらでもよかった。

 いや、早くカリスと離れたいので泊まりたくなかったのでちょうど良いとばかりにローズの話に乗る事にする。


「ローズの言う通りですね。まだ仲間と認められるような活躍もしていませんし」

「ほら、本人もそう言ってるよっ」

「いや、今日はもう遅い。これから宿屋を探すのはキツイだろう」

「ベルフィ!」

「しばらくこの街で生活する事になるんだ。宿屋は慎重に選んだ方がいいだろう。明日、宿探しをしろ」

「わかった」

「ありがとうございます」


 ローズだけは納得いかないようだったが、ベルフィの決めた事なので嫌々ながらも従う。

 

「今日だけだからねっ!」

「はい」

「うん」

「……」


 先程言ったようにサラはカリスと離れられるので今日から宿に泊まりたかったが、リーダーであるベルフィのいう事でもあるので従う事にした。



「さざなみ亭のこのスープ美味いなぁ!」

「そうですね」

「無理しなくていいんだよっ。味覚音痴のアンタらじゃ美味いかなんてわかんないだろっ!」


 ローズは前にリオが再現したサラの料理からサラも味覚音痴と決めつけていた。

 サラはむっとしならが反論する。


「私は味覚音痴ではありません」

「ぐふ。そうだ。サラは見栄っ張りで露出狂なだけだ」

「誰が見栄っ張りですか!それに露出狂は関係ありません、というか私は露出狂でもありません!大体ご飯を食べないあなたがなんでいるんです?!家で待っていたらどうですか?」


 この言葉に反応したのはヴィヴィではなくローズだった。


「何言ってんだい!あんたらのような怪しい奴らだけをあたいらの家に残しておけるわけないだろっ!」

「……」

「そうなんだ」

「ひどい言われようですが、その考えはもっともです。私が同じ立場でしたら同じ対応をしたと思いますので」

「あんだって!?あんたあたいらに喧嘩売ってんかいっ!?」

「やめろ!」


 ローズが立ち上がると同時にカリスが割って入る。


「今のはお前が悪いぞローズ。言い過ぎだ」

「何言ってんだい!カリス、あんたボケてんのかい?大体こんな素顔を見せない奴のどこを信用するっていうのさ!?」

「ヴィヴィは否定せんがサラは問題ないだろう」

「……あー、はいはい」


 ローズのテンションは一気に下がった。

 ローズは呆れた顔でカリスを見る。


「なんだ?」

「べっつにー。少なくともこの魔装士一人残すのは反対っだってのは同意見なんだろ?」

「ああ」


 ここでベルフィが口を開いた。


「ならこれで終わりだ。飯がまずくなる」

「わかったよ」

「ああ」

「ヴィヴィ、俺達の信用を得たいなら少なくとも素顔を見せろ」

「ぐふ」


 ヴィヴィは返事の代わりに席を立った。


「ヴィヴィ?」

「ぐふ。外で適当に時間を潰す」


 そういうとヴィヴィは返事を待たず店を出て行った。


「ベルフィ!ほんとにあんな怪しい奴パーティに入れる気かい!?」

「金色のガルザヘッサを倒すのに戦力は多いに越したことはない」

「棺桶持ちが役に立つものかい!」

「いやいや、ヴィヴィは他の魔装士とは違うぜ。それに荷物持ちとしても重宝するぜ」

「……ふん」


 空気が重くなり雰囲気を変えるためナックがリオに話をふる。


「リオ、このスープ作れそうか?」

「ん?無理だね。なんかよくわからないものが入ってる」

「隠し味か?」

「お前が知らない食材ってことか?」

「うん」

「そうかぁ。料理の世界も奥が深いなぁ。ダメ元で聞いて見るか」


 ナックは諦めきれないようで店主に作り方を尋ねるが当然断られた。



 サラ達は店を出たところでどこで時間を潰していたのかふらりと現れたヴィヴィと合流し、ウィンドの家に戻った。


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