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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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515話 リオの要求

 リサヴィはモモと応接室にいた。

 新米冒険者達にどのような研修をするか相談するためだ、

 と考えていたのはモモだけである。

 リサヴィのメンバーは皆研修をやる気はなかった。

 その事をサラが告げる。


「モモ、私達は研修をする気は全くありません」

「そんな事言わないでくださいよサラさん」

「他の冒険者に頼めばいいでしょう」

「サラさん、人任せはよくないですよ」

「あなただけには言われたくないですね」

「ぐふ、はっきり言うぞモモ」

「どうしたんですかヴィヴィさん、改まって……」

「ぐふ、私はな、サラと違ってお前の大親友ではない」

「おいこらっ!誰が大親友……」

「ぐふ、それどころか友ですらない。冒険者とギルド職員の関係だ。だからお前の願いを叶えてやる義理もない」

「そんな悲しい事言わないでくださいよヴィヴィさん!私はヴィヴィさんのために魔装具を探して来たじゃないですか!」


 サラがすかさず突っ込む。


「その魔装具を用意したウーミは私達をマルコに引き止めるため、と言ってましたが?」


 モモがちっ、と小さく舌打ちをする。


「今、舌打ちしましたね?」

「もう、サラさん、そんな事していませんよ」


 モモはにっこり笑顔で否定する。


「確かにその理由も少しはありましたが、大部分は困っているヴィヴィさんのためでした!本当ですよ!」


 真剣な表情で見つめるモモをヴィヴィは冷めた目で見つめ返す。

 と言っても仮面が邪魔でモモには見えていないが。


「ぐふ、モモ」

「はい?」

「ぐふ、私はこう見えて根に持つタイプでな」

「ヴィヴィさんっ、見た目通りですよっ」


 ヴィヴィはアリスの声を無視して続ける。


「……ぐふ、意外だと思うだろうがな」

「ですからっ、ヴィヴィさんは見た目通りですっ……って、痛いですっ」


 アリスはヴィヴィにどつかれ、頭を押さえる。

 ヴィヴィは何事もなかったかのように続ける。


「ぐふ、その魔装具をぼったくり価格で売ったことを忘れていないぞ」


 ぐはっ、とモモは心の中で血を吐く。

 その表情から余裕が消えた。


「あ、あの時はギルドが苦しくてですね、そ、それに値切り交渉をすると思ったんですよ。商人なら普通しますから……」

「私は商人ではない」


 ぐはっ、とモモが再び心の中で血を吐く。

 しかし、それも一瞬のことだった。

 「まだ終わらんよ」とでも言うようにモモは不死鳥のごとく蘇った。

 一転して余裕顔で反論する。


「ヴィヴィさんはぼったくり価格、と言いましたけど物の価値は人によって違うものです。骨董品なんかがいい例です」

「ぐふ?」


 ヴィヴィはモモの立ち直りの早さに驚く。

 いや、ヴィヴィだけではない。

 サラとアリスも驚いていた。

 ただ、リオだけは無反応だったが。

 モモが話を続ける。


「もし、ぼったくり価格だと思ったのでしたら今ここで、ではなく、あの場で言うべきでした。言わなかったということは、少なくともあの時のヴィヴィさんにとってあの価格はぼったくり価格ではなく、適正価格だったということです」

「ぐふ……」

「ヴィ、ヴィヴィさんが押されてますよっ!人の弱みをつく事に生きがいを感じているヴィヴィさんがっ……って、痛いですっ!」


 またも余計な事を言ったアリスはヴィヴィにどつかれ頭を押さえる。

 ヴィヴィがため息をついてからサラを見た。


「ぐふ、サラ、お前は本当のとんでもない化け物を育て上げたな」

「おいこらっ!人のせいにするな!」

「ぐふ?褒めているのだが?」

「嘘つけ!」



「僕もいいかな?」


 今まで我関せずを貫いていたリオから声がかかり、皆が驚いた表情でリオに注目する。


「モモ」

「え?」


 モモはリオに名を呼ばれて、一瞬呆けた。

 リオが人の名を覚えないのは有名であった。

 頭が弱いからだ、と馬鹿にする者もいるが、モモはそうは思っていない。

 大体、そういう悪口を言っているのはリサヴィに相手にされないクズ達であり、モモも仕事でなければ彼らの名を覚える気もない。

 話が逸れたが、つまり、リオに名を覚えられたという事はリオに必要だとされている、認められたという事だ、とモモは考えていた。


(この事をウーミに話せばさぞ悔しがるわね!)


 先日、ウーミがリオに名前を覚えられていないと愚痴っていたのを思い出したモモは今度また奢らせた上に自慢する気であった。

 嬉々として傷口に塩を塗り込もうというのである!

 それはともかく、モモはリオに名を呼ばれて満面の笑みを浮かべる。

 リオが話を続ける。


「研修をやってもいいけど条件がある」

「それはなんでしょうか、リオさん!」

「僕、ラグナが使いんだ」

「ラグナですか?」

「そう。だから使える人を教えてほしいんだ」

「確かに冒険者の中にはラグナを使える者が何人かいます。ですが、それは個人情報ですので、お教えすると規則に違反してしまいます……」


 モモが済まなそうに頭を下げる。


「そうなんだ」

「名前は教えられませんが、多くの方がフルモロ攻略に参加していますよ」


 モモはそう言った直後、しまった、と思った。

 リサヴィがフルモロに向かってしまうかもしれないと思ったからだ。

 しかし、リオの態度を見る限りその様子はなかった。


「グエンも?」

「グエン……パーティ“ひらめき”のグエンさんですか?」


 モモの問いに答えたのはヴィヴィだった。


「ぐふ。そうだ」

「もしかしてお知り合いなのですか?」

「ぐふ、一度会って話をした程度だ。その時にグエンがラグナを使うところを見たのだ」

「そうだったのですね」


 モモは少し考えてから言った。


「……本当は他の冒険者の行動を許可なく勝手に教えてはダメなんですけど、こちらの依頼を受けて頂ける事ですし、お知り合いという事ですので口外しないと約束して頂けたら今回だけは特別にお教えします」


 リサヴィ全員が頷くのを見てモモが続ける。


「皆さんの予想通り、彼らは今、フルモロ攻略に参加しています」

「そうなんだ」

「フルモロの方はどうなっていますか?答えられる範囲でいいので教えて欲しいのですが」

「そうですね……あまり良くないようです。これは噂なのですが……魔族が出現したらしいのです」

「!!」

「ぐふ、その話の信憑性は?」

「近々、異端審問機関が攻略に参加するとギルマスが話していましたからほぼ間違い無いかと」

「……そうですか」

「サラさんっ、わたし達はこのままでいいんですかねっ?」


 アリスが心配そうな表情をサラに向ける。


「……とりあえずはこのままでいいと思います。何かあれば上から連絡が来ると思いますから」

「で、ですよねっ」



 研修の件だが、出来るだけ多くの新米冒険者に研修を受けさせたいとのモモの要望により、ギルドの訓練場で稽古をつける事になった。

 サラはモモが「まだこんなものじゃ足りないわ」などとブツブツ呟いているのがとても気になった。



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