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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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512話 クズゴーレム、再び

 魔術士ギルドの追跡隊とGガイムの距離がどんどん狭まる。

 焦ったクズリーダーがGガイムによじ登り、操縦席のドアを開けた。

 

「おい、お前!一体何を……」


 クズリーダーは中の様子を見て思わずあほ面を晒す。

 操縦席のイスが滑り台のようになっており、クズ盗賊の下半身がゴーレムの背中に飲み込まれたような状態になっていた。

 そして上半身はバンザイしたポーズであほ面晒して固まっていた。

 その顔色は真っ青で体の一部が真っ白に変色もしていた。


「……てめえ、何やってんだ?」

「……」


 クズリーダーの問いにクズ盗賊からの返事はない。

 屍のようだった。


「おい!冗談やってる場合じゃねえぞ!!追っ手がすぐそこまで来てんだぞ!」


 やはり返事はない。

 やっぱり屍のようだ。


「ええい!そこをどけ!俺がやるぜ!!」


 クズリーダーがクズ盗賊の腕を掴んで引っ張った。

 ぽきっ、と嫌な音と共にクズ盗賊の腕が取れた。

 

「ひっ!?」


 クズリーダーは手にした腕を放り投げる。

 それが合図だったかのようにクズ盗賊の体が一気に白色化して砕け散った。


「なんじゃこりゃー!?」


 クズリーダーの絶叫が辺りに響き渡った。



 Gガイムに変化が起き始めた。

 飾りだと思っていた口がカクン、と開き、そして吠えた。


「ザケンナー!!」


 Gガイムの腕が人間ではありえない方向へ回転して背後にある操縦席を掴むと強引に引き抜いた。

 その衝撃でクズリーダーが操縦席から投げ出される。

 そしてまた吠える。

 

「ザケンナー!!」


 腰を強か打ったクズリーダーが呻いているところに他のメンバーが駆け寄ってきた。

 

「リーダー!一体どうしたんだ!?」

「奴はどうしたんだ!?」


 クズリーダーは腰を押さえながら立ち上がった。

 

「奴は死んだ!あのゴーレムに食われやがった!!」

「え!?」

「な、何言ってんだよリーダー」

「馬鹿野郎!マジだ!って逃げんぞ!」


 そこへ「ザケンナー!」と叫んでいたGガイムが手を伸ばしてクズの一人を掴んだ。


「なっ!?は、話せ!い、てててて!はなせっー!……がああああ!


 クズの絶叫が響き渡った。



 その少し前。

 Gガイムの後を追う魔術士ギルドの追跡隊はGガイムが停止したのを確認して少し距離を置いた場所で停止した。

 馬車の中から護衛達が降りてくる。

 その中にリサヴィとクレッジ博士もいた。

 更にクレッジ博士が改良したフェラン製の魔装士達の姿もあった。

 馬車から降りたクレッジ博士が動きを止めたGガイムを興味深そうな表情で眺めていた。


「どうして止まったと思いますか?」

 

 サラの問いにクレッジ博士は笑顔で言った。

 

「オレがクズの考える事などわかるわけないだろう。オレよりお前達の方が詳しいのではないか。クズ専門家のお前達の方が」

「私達はクズ専門家ではありません」

「ぐふ。その通りだ。全員がクズ専門家というわけではない」

「おいこら!それはどう言う意味よ!」

「ぐふ、そんなことよりだ、クレッジ博士」


 サラの文句を遮ってヴィヴィはクレッジ博士を見た。

 

「なんだ?」

「ぐふ、何故、ゴ……Gガイムとやらを盗んだのがクズだとわかった?」

「人の物を盗むのはクズだろう。善人がいるとでも?」


 そう言ったクレッジ博士は奇妙な笑みを浮かべていた。



 クレッジ博士が手に持つ魔道具、拡声器を使って護衛達に叫ぶ。


『奪われたGガイムは敵の手に渡った!これよりGガイム改め、クズゴーレムと呼称する!全員、指示があるまでその場で待機!』


 ちょっと前までGガイム、と呼んで頬擦りしていたとは思えないほどの切り替えの早さであった。 

 というか、「おのれ、クズゴーレムめ!」と敵意も剥き出しであった。

 

 

 ヴィヴィはクレッジ博士が改良したという魔装士に目を向けた。

 ぱっと見で改良されたとわかるのは右腕に装備した盾とバックパックに装着された二本の槍だ。

 盾は右腕のみに装備されており、その厚さから従来の魔装士の盾とは異なり、中に武器を収納する事はできないようだ。

 その盾の中央には半円上の凹みがあるが、ただのデザインとは思えないが用途は不明だ。

 ヴィヴィがクレッジ博士に魔装士の装備について尋ねる。


「ぐふ、魔装士のメイン武器は背負っている二本の槍のようだが、接近戦用なのか?」


 それを聞いたクレッジ博士は呆れた顔をしてため息までつく。


「おいおい、オレ達はデリケートな魔術士だぞ。脳筋の戦士みたいな戦いをするわけないだろう」


 尋ねたヴィヴィをはじめ、皆、


「いやいや!あんたはデリケートじゃないだろ!」


 と突っ込みたかったが、状況を考えてぐっと我慢した。

 クレッジ博士はその事に全く気づかず続ける。


「当然、オレ達の得意分野で戦うぜ。つまり……」


 一旦、言葉を止めてから偉そうに言った。


「遠距離から一方的にボコる!」

「「「「……」」」」


 しばし沈黙後、ヴィヴィが口を開いた。


「ぐふ。否定はしないが、威張る事でもないな」


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