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悪夢を振り払え〜あなたを魔王にはさせません!〜  作者: ねこおう
第4部 クズ達のレクイエム編(タイトル変更)
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509話 サイファ・ヘイダインの再来

 リサヴィはメアリーに連れられてゴーレムの荷台の側で指揮をとっている責任者の元へ案内された。


「オレがサイファ・ヘイダインの再来と呼ばれている“あの”天才魔道具開発者のクレッジだ」


 クレッジ博士は横柄な態度でそう名乗った。

 “あの”と言われてもサラがその名を知ったのは先程メアリーから聞いた時だから驚きも何もない。

 それはサラだけではなかった。

 名前をからかったヴィヴィも知らないようであり、リオとアリスは言うまでもない。

 そんなリサヴィの反応にクレッジ博士は不満そうな顔をするが、知らないものは知らない。

 次にクレッジ博士の少し後ろに立っていた男が挨拶をする。

 

「博士の助手のアパラパです」


 アパラパはクレッジ博士とは対照的に物静かな印象を与えたが、顔色が悪く、その目もなんかヤバそうだった。

 二、三日徹夜したのでなければ禁止薬物中毒者のようであった。

 サラ達は前者である事を信じて確認しない。

 いつものようにリオが全く反応しないのでサラから挨拶をする。


「リサヴィのサラです。彼がリーダーのリオ、魔装士のヴィヴィ、神官のアリスです」


 サラの紹介で皆がぺこりと頭を下げる。

 それを見てクレッジ博士がこれまた横柄な態度でうむ、と頷いた。



 挨拶が済んだところで、ヴィヴィがクレッジ博士に尋ねた。


「ぐふ、博士よ、お前は先程『サイファ・ヘイダインの再来』と言ったが、具体的に何をしたのだ?」


 ヴィヴィの問いにクレッジ博士は偉そうに顎に手を当てる。


「ふむ、そうだな、どれを話せばいいか……そうだ、お前達はライバーを知っているか?」

「はい、少し前に乗った事もあります」

「えっ!?もしかしてっ、あのライバーを開発したのがあなたなんですかっ?」

「いや違う」

「あっ、そうですかっ……」


 クレッジ博士はアリスのガッカリ顔を見てムッとした顔をしながら言った。


「もちろん、オレがその時代に生まれていればオレが発明者になっていた事は疑いようもない!」

「ぐふ、それではお前はライバーとどう関係があるのだ?」

「うむ、オレが改良を加えたことにより、走行スピードがな、何と十パーセントもアップしたんだぞ!しかも魔力効率が三パーセントもアップしたのだ!」

「はあ」


 クレッジ博士は更にいくつか例を挙げた。

 どれも既存のものに改良を加えたものだった。

 クレッジ博士の話にメアリーが頷いていたので事実だろう。

 彼は一から何かを作り出すのではなく、既存のものに改良を加えるのが得意なようであった。

 確かにそれも優れた才能ではあるが、とても地味であった。

 サイファ・ヘイダインの再来、と言うのはさすがに言い過ぎだろうとリサヴィの誰もが思ったが口にはしなかった。



 サラが今回の実験場所について疑問を口にする。


「ところで、何故こんなところで実験を行うことにしたのですか?」

「ギルド内で行うな、と言われてな」


 クレッジ博士はつまらなそうに答えた。


「それは当然でしょう。って、そうではなくて、何故こんな目立つところで実験をするのか、と言う事です。よからぬ事を考える者達がいるかもしれませんよ」


 サラの言う通りであった。

 この場所はカシウスのダンジョンへ向かう、あるいは街へ帰る者達の目を引く。

 実際、既に実験とは無関係の者達が集まって来ていた。

 中には目つきの悪い、素行の悪そうな者達も混じっていた。

 クレッジ博士は不満を隠さずに言った。


「そのためにお前達がいるのだろうが!それにこれだけ街から離れていれば仮に、“Gガイム”が暴走したとしても問題ないだろう」

「ぐふ?Gガイム?」


 ヴィヴィの問いにクレッジ博士が嬉しそうな顔をする。


「おう!あのゴーレムの名前だ。ゴーレムタイプ二十では味気ないだろう?オレが改修を加えてもはや別物と言っても過言ではないからな。オレが直々にそう名付けたのだ。わはははっ!」


 サラ達はゴーレム、いや、Gガイムを改めて見る。

 サラ達は元のゴーレムの姿を詳細に覚えているわけでない。

 ぱっと見の違いは、背中の小型ゴーレムが合体していた穴に縦長の箱のようなものが取り付けられている事くらいだ。

 それが操縦席であろうことは想像がつく。

 他は外装が派手な色に塗り替えられていることくらいだった。

 今度はヴィヴィが素朴な疑問を口にする。

 

「ぐふ、Gはゴーレムの頭文字からとったのだろうがガイムとは?」

「インスピレーションだ!」


 そう言ったクレッジ博士の顔はなんか偉そうだった。


「ぐふ……」


 ヴィヴィはそれ以上、Gガイムについて質問することはなかった。




 Gガイムを操縦するのは助手のアパラパだった。

 試験を開始する前からふらふらしてとても危なっかしい。

 その様子を見てクレッジ博士がアパラパを怒鳴りつけた。


「アパラパよ!たかが二日くらいの徹夜でその体たらくとは何事だ!?」

「博士、四日です。そして俺がGガイムを一番上手く扱えます」

「二日も四日も大して変わらん!誤差だ誤差!」

「それを誤差って言うのは無茶ですよっ」

「問題ないだろ。なあ、アパラパよ!」

「俺がGガイムを一番うまく扱えるんだ!」


 もはやアパラパとは会話が成立していなかった。

 サラが心配した表情をアパラパに向ける。


「顔色も悪いし、休んだ方がいいですよ。誰か他の人に代わってもらってはどうですか?って聞いてますか?」


 アパラパがサラを睨みつけた。


「俺がGガイムを一番うまく扱えるんだ!」

「誰もそんなこと……って、ちょっと!?」


 アパラパはサラが話している途中でGガイムに向かって走り出す。

 真っ直ぐに走れず、いつ転んでもおかしくない。

 とても危なっかしい走りだった。

 しかし、クレッジ博士はその姿を見て満足そうに頷く。


「うむ。サラ、たきつけてくれて礼を言うぞ」

「失礼ですね!今の言葉をどう聞いたらそう聞こえるんですか!?」

「サラ、お前は鬼だな」

「流石サラさんですっ」

「そうなんだ」

「おいコラ!」



 アパラパがGガイムのもとへたどり着いた。

 背中の操縦席から下ろされた縄梯子を危なっかしくフラつきながら登る。

 

「あのっ、やっぱり他の方に代えた方がよくないですかっ?」

 

 アリスが心配してクレッジ博士に話しかけるが、クレッジ博士は首を横に振った。

 

「奴がGガイムを一番上手く扱えるのだ」


 皆がヒヤヒヤしながら見守る中、アパラパはどうにか縄梯子を登り切り、操縦席に乗り込んだ。

 そしてGガイムがゆっくりと動き出す。

 クレッジ博士の指示に従ってアパラパはGガイムを操作した。

 操縦に関しては言う事はないが、何を言ってもアパラパは「オレがGガイムを一番うまく扱えるんだ!」としか答えないので皆に不安を与えた。

 いや、クレッジ博士とリオは除く。


 ほとんどの者がヒヤヒヤして見守る中でGガイムの起動実験は終わった。

 サラ達が拍子抜けするほど何事もなく無事終了した。



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